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第7話

明日までに完結させる予定です。

 過激派団体『新しいエキスパ』はエリシアの身柄を自らのアジトに連れ戻った。

 ここまでは予想以上の出来だった。絶対だった内務卿の排除はクリアし、現れるかどうか不明だったエリシアの身柄を捕らえることができた。

 しかし、予想以上は予想外だ。エリシアをどう扱うかの計画が無かった。彼らはひとまず彼女をアジトに監禁したうえで、帝国に対してメッセージを出すことにした。

 アジトの外で任務を大成功に収めた構成員と幹部の政治家が並び、エキスパの旗の下カメラを回し始めた。


「しかし、今のさっきでこんな撮影なんてしてていいのでしょうか?」

「今だからこそだ。つい、数分前に報道されたばかりだ。今から帝国軍が動き出しても、2,3時間はかかる。このアジトも知られてない。その内に姫の身柄は我らにありと宣言することで、奴らの動きを止める」

「成程。くく、エリシア姫を泣かせるのはそのあとからでも良いと」


 勝利を確信し、彼らはビデオを回し始めた。


「帝国の諸君! 我々は新しいエキスパである! 哀れな姫君エリシア嬢の身柄は我らにある。 要求は3つ! 一つ、我が領土を返還すること。二つ、その間に得た利益全額を賠償金として……」


 その時、風に吹かれた勇ましいオーケストラが何処からか流れてきた。次第にそれは重低音となり、空気を震わせるほどの雄大さとなる。彼らは怪訝にあたりを見渡し、やがて、顔を歪ませた。


「なんでこの曲が!? 帝国の国歌じゃないか!」

「おい、東の空だ!」


 一人が太陽の影から飛び出したヘリに気が付いた。あれから大音量で帝国国歌が流れているのだ。


「ということは、帝国軍のヘリ!?」

「いや、まだアジトに到着してから10分と経ってないぞ! ありえない!」

「いいから、撃つんだ!」


 男たちは慌てて銃を拾い上げ、安全装置を外し、それを構えて――あんぐりと口を開けた。その頃には既にヘリから発射されたロケット弾が視界一杯に広がっていたからだ。


 ◇


 突然現れたヘリに、アジトの外に屯していた敵は大混乱に陥っていた。低空飛行と大音量の音楽のお陰で直前までヘリに気が付くことが出来なかった。

 大隊熟練のヘリパイロットにとって、迂闊な敵は鴨でしかなかった。

 カナードは重量のあるヘリを手足のように扱い、照準器に逃げ惑う敵兵を捕え、容赦なくロケット弾のトリガーを引いた。


「命中だ! 連中は吹き飛んだ! 逃げた奴も追うよ!」

「了解、姐さん。 2番機、ガトリングガンで掃討を行う!」

「5番機、敵の連絡路を破壊する」

「喰らえ、喰らえ、喰らえ! 戦争は地獄だぜ!」

 

 70㎜ロケット弾が火を噴き、地面を抉る。秒間100発のガトリングガンの斉射が聴力を奪う。地獄の戦場とかした大地で、経験の薄い敵の多くは本能的にしゃがみこみ、ドアガンの餌食になる。


「着陸地点の掃討完了。さぁ、行ってきな!」


 ヘリは一瞬脚を地につけ、転がり出るようにジョーとミリア達が外に展開する。彼女らは事前に何度も図上演習した通りに、全方位を警戒するフォーメーションを取りながら、素早く出入口に張り付いた。


「1分隊、配置についた」

「2分隊」「3分隊」「4分隊、まもなく」


 全ての分隊が突入態勢に入るまで、もうすぐ。ミリアはドアノブに手をかけ、息を止める。その時、別の隊員が彼女の方に手を置いた。


「おい、配置を変われ。先陣は新入りには荷が重すぎる」

「くっ、でも」

「いや、彼女が適任だ」


 ミリアが反論する前に、ジョーが制した。


「しかし、新入りには経験が」

「彼女には経験がある。覚悟もある」


 経験、その言葉にミリアは疑問を抱いた後、はっとした。ミリアがエリート街道を外れ、この奇妙なC大隊に配属される原因となった欧州議員への発砲事件。彼は最初からあれを戦果として認めていたのだ。

 ジョーの言葉に隊員はそれ以上、異を唱えなかった。


「4分隊、配置についた」

「全班、突入!」

「行け」


 扉から閃光弾が投げ込まれ、ジョーがミリアの肩を押した。


「――っ」


 身体を滑り込ませるように、建物に侵入したミリアの視界の中に閃光弾で怯んだ敵兵が映った。彼女は躊躇なく頭部と胸に弾丸を叩きこんだ。彼が言った通り、経験がある躊躇を感じなかった。


 ミリアは倒れた敵を乗り越えると、素早く進み、次の曲がり角へと差し掛かった。その時、窓ガラスの反射に何かを見た。


 人影——敵。


 彼女は細い体をスライドするように滑らせ、通路に躍り出ると、喉元へ二発撃ち込んだ。

 直後、通路の奥から叫び声が聞こえた。


「死ねええええ! 帝国人!」


 四方八方から襲撃され、逃げ場のなくなった敵が狂ったように機関銃を連射している。流れ弾が遮蔽物を掠め、ミリアは血の気が引く。それでも、強引に駆け出そうとした。が、後ろから襟首を捕まれる。


「指揮官!? 止めないで!」

「落ち着け。仲間がいる。 スナイパー分隊、東側通路のマシンガンナーをやれ」

「了解」


 静かな返答の後、機関銃兵の頭から血が飛び散る。外の高台からのスナイパー・ドクの狙撃だ。


「進め」

「西の通路、機銃掃射を仕掛ける。頭下げてな!」


 轟音と共に、西の通路の窓ガラスが一薙ぎに割られ、敵兵はバタバタと倒れる。


 ものの数分で、8割以上の部屋が制圧された。残る2割はミリアの眼前にあった。


「指揮官、私を援護してください! 恐らく、殿下はそこの階段から地下倉庫です! 私が突入します!」

「分かった。彼女を全員援護しろ」


 ミリアは仲間たちの弾幕を背に、地下室への階段へと滑り込み、ドアノブに手を掛けた。

 息を吸い込み——。

「殿下! エリシア様!」


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