ERROR 09 男登場
「おい、あんた」
後ろから声がかかる
ルクスとヴェルカは同時に振り返った
そこに立っていたのは、一人の冒険者
装備はしっかりしている
使い込まれているが手入れは行き届いている
「さっきの依頼、あんたがやったのか」
「そうだけど」
男はルクスをじっと見る
「……二人で?」
「まあな」
一瞬、間
そして男は小さく息を吐いた
「単刀直入に言う」
「何だ」
「俺と組まないか」
「断る」
即答
「はやっ!?」
男が素で驚く
「いやちょっと待て、話くらい聞けよ」
「面倒そうだったから」
「ひでえな」
ヴェルカが横で言う
「不要」
「お前も乗るな」
⸻
男は頭をかいた
「俺の名前はカイン。Cランクだ」
「へえ」
「で、最近おかしいだろ、この辺」
ルクスの目がわずかに細くなる
「何の話だ」
「とぼけんな。依頼内容と実際の難易度がズレてる」
「……」
「弱いはずの魔物が強かったり、その逆もある」
カインは続ける
「それに、ダンジョンの構造もおかしい」
「構造?」
「ああ。本来ないはずの通路があったり、逆に行き止まりが変わってたりな」
ルクスは少しだけ考える
(……環境ごとバグってるのか)
⸻
「で、本題だ」
カインは声を落とす
「この街の外れにあるダンジョン、知ってるか」
「まあ一応」
「そこ、最近“変な階層”が出た」
「変な?」
「誰も見たことない構造。しかも、入ったやつが何人か帰ってきてない」
「……」
ヴェルカが口を開く
「強いか」
「たぶんな」
「行く」
「お前は即決だな」
⸻
カインはルクスを見る
「正直、一人じゃきつい。だがあんたらならいけると思った」
「なんでそう思う」
「下水路の件だよ」
少しだけ笑う
「普通じゃない動きしてたろ」
「……見てたのか」
「たまたまな」
⸻
少しの沈黙
ルクスはヴェルカを見る
ヴェルカは即答する
「行くべき」
「理由は」
「壊れている可能性が高い」
「だろうな」
⸻
ルクスはカインに向き直る
「条件がある」
「なんだ」
「深追いはしない。やばかったらすぐ引く」
「……分かった」
「あと」
ルクスは少しだけ目を細める
「余計なことは詮索するな」
カインは一瞬だけ黙ったあと、頷いた
「了解」
⸻
「決まりだな」
カインは少しだけ笑う
「明日の朝、門前集合でいいか」
「いい」
「問題ない」
⸻
別れたあと
ヴェルカが言う
「信用するのか」
「してない」
「ならなぜ組む」
「情報と案内役だな」
「合理的」
「だろ」
⸻
ルクスは空を見上げる
「“変な階層”か……」
手の中の結晶が、わずかに熱を持つ
「……やっぱり関係ありそうだな」
⸻
街の外れ
まだ誰も知らない“歪み”が、静かに広がっている




