ERROR 22 ズレの中
「ここから先が、あの領域だ。準備はできてるか?」
ルクスは二人に聞く。
「まだちょっと怖いけどな、、できてるぜ」
「やっと喰えるのか」
「ふっ、心配は無さそうだな。」
ルクスが微笑む。
踏み込んだ瞬間、床の感触が遅れて足に届く。
一歩進むと、位置が半歩分ずれる。
音が遅れて背中に落ちる。
「……濃いな。」
カインが低く言う。
「止まるな。」
ルクスが前を見る。
「奥まで抜ける。」
ヴェルカが笑う。
「壊しながら行く。」
通路が伸びる。
距離が合わない。
壁の位置が揺れて、直線が曲がる。
ヴェルカがそのまま踏み込んで肩で壁を押すと、石が削れてズレが一瞬だけ崩れる。
カインが歩幅を乱して進むと、位置の固定が外れる。
ルクスがそのまま前へ出る。
「見るな、合わせるな、そのまま行け。」
分岐が現れる。
左右に道が分かれるが、どちらも同じ形に見える。
ルクスが迷わず右へ入る。
「こっちだ。」
「判断早いな。」
カインが続く。
「繋がり方が違う。」
ヴェルカはそのまま先に出る。
奥に進むほど、音が消える。
足音が吸われる。
呼吸が遅れる。
距離が伸びる。
同じ一歩で届かない。
カインが逆方向に踏み込むと、ズレが重なって前方が急に近づく。
「……来るな。」
「ああ、来る。」
ルクスが答える。
通路が途切れる。
広い空間に出る。
天井が見えない。
床だけが広がる。
だが奥行きが定まらない。
遠くと近くが重なる。
ルクスが足を止める。
「……ここだ。」
何もない空間に、“線”が一瞬走る。
すぐに消える。
カインが目を細める。
「見えたか?」
「一瞬だけな。」
ルクスが答える。
ヴェルカが前に出る。
「関係ない。」
空間が静かに歪む。
音もなく、中央に影が立つ。
人の形。
だが輪郭が揺れる。
一歩動くと、次の位置が先に見える。
カインが構える。
「あれが……管理者側。」
ルクスが短く言う。
「間違いないな。」
影が一歩踏み出すと、床との距離が噛み合わない。
足が着く前に、位置が確定する。
ヴェルカが踏み込む。
拳を振る。
当たる前に位置がずれる。
空を切る。
次の瞬間、背中に衝撃が入る。
体が前に押し出される。
「ずらされてるな。」
カインが踏み込む。
一歩目で体を崩し、二歩目で逆へ動く。
だが軌道が先に残る。
動きが成立する前に、結果が来る。
肩に衝撃が入る。
弾かれる。
「こいつも順番が違う。」
ルクスが前に出る。
手を伸ばす。
距離が合わない。
触れる前に位置が変わる。
「……届かない。」
影が腕を振る。
軌道が見えない。
“結果だけ”が来る。
ヴェルカが腕で受けるが、衝撃が遅れて貫通して体を押し返す。
床がずれる。
足が滑る。
ルクスが核に触れる。
一瞬だけ“線”が浮かぶ。
だがすぐに消される。
「……妨害されてる。」
カインが距離を取る。
「どうする。」
ルクスが短く言う。
「ズラすしかない。」
ヴェルカが踏み込む。
カインが横から押して位置を半歩ずらす。
当たらないはずの位置に拳が入る。
わずかに手応えが返る。
影が揺れる。
「……触れたな。」
だが次の瞬間、空間が一段深く歪む。
距離が引き伸ばされ、位置が固定される。
カインの足が止まる。
「……固定された。」
影がゆっくりと腕を上げる。
今度は何も見えない。
ただ“当たる”結果だけが確定する。
ヴェルカの腹に衝撃が入り、体が浮く。
そのまま壁まで叩きつけられる。
音が遅れて響く。
カインが踏み込む、だが届かない。
一歩の距離が伸びる。
「届かねぇ……!」
ルクスが手を伸ばし、空間を掴む。
ズレを引き剥がそうとする。
だが抵抗が強い。
「……重い。」
影がルクスの前に立つ。
いつの間にか距離を詰められている。
腕が振られ、横にずれる。
だが結果が先に来る。
肩に衝撃が入り、体が回る。
床に叩きつけられる。
視界が揺れる。
音が遅れて戻る。
カインが叫ぶ。
「ルクス!」
ヴェルカが立ち上がる。
血を吐きながら笑う。
「いいな……!」
もう一度踏み込む。
ルクスが体を起こす。
核を強く握る。
「……まだだ。」
だが状況は崩れている。
位置が合わない、距離が取れない。
ズレが支配されている。
影が、もう一度動く。
三人の位置が固定され、逃げ場がない。
次の一撃が確定する。




