ERROR 20 装備と手応え
通りを抜けて、鍛冶屋の前で止まる。
金属を打つ音が、一定の間隔で響いている。
ヴェルカが扉を押す。
「ここか。」
中は熱気がこもっている。
炉の赤が壁に揺れる。
奥で男が槌を振り下ろすと、火花が弾ける。
カインが声をかける。
「依頼いいか。」
男が手を止める。
「ンッン~、内容次第だねぇ~^^」
ルクスが前に出る。
「防具だ。」
ヴェルカを見る。
「こいつ用。」
男の視線がヴェルカをなぞる。
「軽さ重視?硬さ重視?」
ヴェルカが即答する。
「動けるやつ。」
「殴る前提か。」
「壊す前提だ。」
男が鼻で笑う。
「いいですなァ~」
簡単な測定が始まる。
肩幅、腕、脚。
ヴェルカはじっとしている。
「無駄に力入れるな。」
男が言う。
「入れてない。」
「嘘つけ。」
腕を押すと、ほとんど動かない。
男が少しだけ目を細める。
「んーなぁるほどっ!!」
ルクスが横で見る。
「問題あるか。」
「普通じゃないねえ~~」
男が短く返す。
素材が並べられる。
革と金属の板。
男が一枚持ち上げる。
「これは軽いんだけどぉ、衝撃によわくってぇ~」
別の板を叩く。
「こっちは耐えられるんだけど重いんだァ~」
ヴェルカが両方持つ。
軽い方を投げる。
重い方を握る。
「これ。」
「重いぞ。」
カインが言う。
ヴェルカが軽く腕を振ると、空気が鳴る。
「問題ない。」
男が笑う。
「決まりだな。」
ルクスが口を挟む。
「関節は、ご自由に~。」
「分かってる。」
「動き止めたら意味ねぇ。」
「あと、衝撃分散。」
「入れちゃうよぉ~。」
短いやり取りで仕様が決まる。
カインが横で苦笑する。
「慣れてるな。」
「必要なことだけだ。」
ルクスが答える。
「時間は。」
「今日中は、無理かなぁ~。」
男が言う。
「仮組みならすぐ出せるるよぉ!!」
「それでいい。」
ルクスが即答する。
「調整前提で使う。」
「壊すなよぉ!!。」
男が笑う。
ヴェルカが答える。
「壊れたら直せ。」
「注文が多いなァ。」
仮の装備を受け取る。
胸と腕、脚に金属を仕込んだ軽装。
ヴェルカがその場で装着する。
固定すると同時に体を捻る。
関節は止まらない。
「……動く。」
一歩踏み出すと、床がわずかに軋む。
カインが口笛を吹く。
「似合ってるな。」
「どうでもいい。」
ヴェルカが腕を振る。
空気が押される。
外に出る。
少し広い空き地へ向かう。
人の少ない場所で止まる。
「試すぞ。」
ルクスが言う。
ヴェルカが頷く。
まずは素手。
ヴェルカが踏み込んで拳を振ると、空気を押し切って前方の木箱が割れる。
装備が衝撃を受けて、音だけを返す。
「止まらない。」
短く言う。
「分散できてるな。」
ルクスが見る。
カインが距離を取る。
「次、相手するぞ。」
ヴェルカが笑う。
カインが一歩踏み込んでフェイントを入れると、ヴェルカの視線が一瞬ズレて拳が空を切る。
そのまま横から手刀を入れると、腕で受けて押し返す。
距離が一気に開く。
「今のズレ、維持しろ。」
ルクスが言う。
「やってる。」
カインが返す。
もう一度踏み込む。
今度はわざと足を滑らせる。
体勢が崩れる動きに、ヴェルカが一瞬遅れて踏み込む。
その隙に肩を押して軸を外す。
ヴェルカの一撃が地面を叩く。
土が弾ける。
「……なるほど。」
ヴェルカが笑う。
「武器も試す。」
ルクスが言う。
短めの鉄棒を投げる。
ヴェルカが受け取る。
軽く振ると、風が鳴る。
「いらん。」
即答。
「素手でいい。」
「一応持っとけ。」
カインが言う。
「状況次第だ。」
ヴェルカがもう一度振る。
次は踏み込みと同時に振り下ろすと、地面が深く抉れる。
「……悪くない。」
少しだけ評価を変える。
ルクスが全体を見る。
「装備は問題なし。」
「武器は補助。」
「基本は今まで通り。」
カインが頷く。
「俺がズラす。」
ヴェルカが構える。
「止めて壊す。」
ルクスが短く言う。
「当てる。」
風が抜ける。
三人の位置が自然に決まる。
次のダンジョンに向けた形が、静かに整う。




