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追放された鑑定士、世界の“バグ”が見えるようになった 〜無能扱いされた俺だけが、この世界のエラーメッセージを読める〜  作者: まままま


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ERROR 12 侵食

歪みが広がる。


足元の感覚が消える。


立っているはずなのに、どこに重心があるのか分からない。


「おい……これ、やばくないか」


カインの声に余裕がない。


その直後だった。


視界が反転する。


上下が入れ替わる。


――いや、違う。


概念そのものが崩れている。


「ヴェルカ!」


「分かってる」


既に動いていた。


迫ってくる“それ”に対して、真正面から踏み込む。


拳が振り抜かれる。


直撃。


だが――


当たった感触がない。


「は?」


ヴェルカの腕が、“それ”をすり抜ける。


さっきまで殴れていたはずの相手が、触れられない。


「状態が変わった……!」


ルクスが歯を食いしばる。


固定したはずの定義が、再び崩されている。


それだけじゃない。


空間全体の“前提”が書き換わっている。


「物理干渉が不成立になってる」


「つまりどういうことだよ!」


「殴れないってことだ」


短い答え。


次の瞬間、“それ”が動く。


速い。


さっきまでとは比べものにならない。


カインの横をすり抜ける。


遅れて、血が飛んだ。


「がっ……!」


肩が裂ける。


「カイン!」


ルクスが叫ぶ。


だが距離がおかしい。


近いはずなのに遠い。


一歩踏み出す。


届かない。


二歩目。


それでも遠い。


「くそっ……!」


距離の定義まで歪められている。


ヴェルカが舌打ちする。


「触れない、当たらない、距離も狂う」


「クソだな」


だが笑っている。


明らかに楽しんでいる。


「でも――壊せるだろ?」


「そのままじゃ無理だ」


ルクスは即答する。


周囲を見る。


赤い歪み。


さっきより増えている。


侵食されている。


空間そのものが、“未定義”に飲まれている。


「時間もないな……」


そう呟いた瞬間だった。


カインの姿が、揺れる。


「……え?」


輪郭がぼやける。


腕の位置がズレる。


足が消えかける。


「おい、カイン!」


「な、なんだこれ……!」


声は聞こえる。


だが姿が安定しない。


ルクスの目が見開かれる。


「侵食されてる……!」


対象は魔物だけじゃない。


この空間にいる“存在そのもの”が、未定義に書き換えられている。


「やばいな」


ヴェルカが静かに言う。


「これ、喰えなくなるぞ」


「そういう問題じゃない」


ルクスは吐き捨てる。


カインの輪郭がさらに崩れる。


存在が薄くなる。


「ルクス……俺……消えるのか……?」


「消えない」


即答。


だが根拠はまだない。


それでも言い切る。


思考を回す。


個体じゃない。


空間のさらにその奥。


“ルール”そのもの。


「……書き換えられてるなら」


小さく呟く。


「書き換え返せばいい」


ヴェルカが笑う。


「できるのか?」


「やるしかない」


ルクスは歪んだ核を取り出す。


脈打つように光る。


未定義領域に入ってから、明らかに反応が強い。


「こいつが鍵だ」


地面に叩きつける。


瞬間。


空間全体に“干渉”が広がる。


見える。


無数の歪み。


線ではない。


塊でもない。


概念の断片。


「……これか」


ルクスは手を伸ばす。


その一つに触れる。


激痛。


「ぐっ……!」


情報が流れ込む。


定義の断片、存在のルール、処理しきれない。


それでも――


「止めるな……!」


自分に言い聞かせる。


カインの姿が、もう半分消えている。


間に合わない。


なら――


「強引にやる」


“未定義”の核を掴んでまとめて引きずり出す。


空間が悲鳴を上げる。


歪みが暴れる。


“それ”らが一斉に襲いかかる。


ヴェルカが前に出る。


「好きにやれ」


拳を構える。


「全部、止めてやる」


その背中を見て、ルクスは歯を食いしばる。


「……三秒だ」


世界が崩れる中、修正が始まる。

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