同級生
何週間経っただろうか。ずっと好きなだけ寝かして貰っていたため時間感覚がない。
新庄様の運んできてくれたお粥を数口、自分の手で食べた。
それだけでひどく体力を消耗して、私はまた布団に背を預ける。
まだ食べるだけで体力が減っていく……。
ふと、新庄様が私の髪を梳きながら、ぽつりと漏らした。
「雫殿。元春は、私が醜いからこそ、内助の功を求めて娶ったと言われておりますが……私はね、あの大男が何を考えているか、最初から分かっておりましたよ。あやつは、自分と対等に言い合える『お喋り相手』が欲しかっただけなのです」
くすりと笑う彼女の横顔に、私はずっと抱いていた疑問を口にした。
「新庄様……。失礼ながら、お幾つでいらっしゃいますか?」
「私ですか? 天文二年の生まれですから、今年で二十歳になりますが」
心臓が、ドクンと跳ねた。
苦しさからではない。驚きと、親近感。そして、少しの気恥ずかしさ。
「……奇遇、ですね。私も、今の私は……二十歳なんです。あ、いえ、未来では……」
言いかけて、口を噤む。けれど新庄様は、驚くこともなく、梳いていた手を止めて私の目を真っ直ぐに見つめた。
「まあ。……同い年、でしたか」
彼女の瞳が、ふっと和らぐ。
今まで私を守る「母」のようだった眼差しが、どこか悪戯っぽく、春の陽だまりのような「友」のそれに変わった。
「そう。二十歳。……それなら、なおさら負けていられませんね。同じだけ月日を重ねてきた女子が、こんなに青白い顔で寝込んでいるなんて、私が許しません」
新庄様は、私の手をぎゅっと握りしめた。
その掌は、私と同じ二十年を別の世界で懸命に生きてきた、力強くて温かい掌だった。
「……はい。……新庄様」
初めて、様をつけて呼ぶのがくすぐったいような、不思議な気持ちになった。
この戦国時代で、初めてできた、対等な「女の子」の友達。
将来、吉川と毛利、それぞれの場所で、男たちの愚痴をこぼし合うような文通仲間になるなんて、この時の私はまだ知る由もなかったけれど。




