不吉な赤
産屋の中は、冬の冷気すら消し飛ばすような、異様な熱気に包まれていた。
雫を包む布団の隙間から、陽炎が立つのではないかと思えるほどの熱が漏れ出している。
「……あ、……ぁ、……っ……」
雫の唇は乾燥し、ひび割れ、そこから微かに血が滲んでいる。
頬は燃えるように赤いのに、布団の中から突き出た手足は、驚くほど冷たく、青ざめているのだ。あの「体の中で命が激しく燃え尽きようとしている」不吉な赤。
……なりませぬ。また、あの時のように……!
私の脳裏に、数年前の光景が忌まわしく蘇る。
双子を産み落とした後、同じように熱に浮かされた雫は、そのまま命の火を消しかけた。あの時の、手の施しようもなかった絶望。
産婆たちが「これは産褥の熱。神仏にお任せするしか……」と匙を投げかける中、私は冷たい水に浸した手拭いを、何度も、何度も、雫の額に当て直した。
「雫、聞こえますか。……この熱に飲まれてはなりませぬ。戻ってきなさい!」
心停止から、私のこの手で引き摺り戻したばかりの命。
もし今、この熱に負けてしまったら、あの蘇生の苦しみは何だったのか。私の執念は、ただ彼女の苦しみを長引かせただけになってしまうのか。
そんな恐ろしい考えが頭をよぎり、私は自分の弱さを振り払うように、雫の折れた肋をかばいながら、その細い肩を抱き寄せた。
「……おざき、さま……。……あつい…」
うわ言のように、雫が漏らす。
戦国を生き抜く「厄代わりの小姓」の面影はどこにもない。ただの、熱に怯える幼い少女の姿。
「怖くありませんよ。私が、ここにいます。貴女の熱を、すべて私が吸い取ってあげられたら良いのに……!」
私は、雫の冷たい手首を握り、指先に触れる、あまりにも速く、けれど砂の城のように脆い脈拍を数え続けた。
外では赤川殿たちが嫡男の誕生に沸き立つ声が聞こえる。一方で私の心は千々に乱れた。
この子がこれほどまでに命を削って毛利の光を繋いだというのに、もしこのまま闇に消えてしまったら……死なせない。私がこの子に私がするべき仕事(出産)を任せてしまったのだから。
私は、冷たくなった手拭いを再び水に浸し、固く絞る。
私の指はすでに感覚を失うほど冷えていたが、雫の熱を奪うためなら、この身が凍りついても構わなかった。
私の名前を何度も魘されながら呼ぶ彼女はひどく幼く、消え入りそうで、とても怖かった




