厳島の戦い―隆景のかっこつけ
薄明かりが天幕に差し込み、ふと意識を浮上させた。
雫の温もりが心地よく、寝てしまったか…。
そして肩に感じる、昨夜はなかったはずの重み。見れば、自分には兄隆元の羽織が、それは丁寧に掛け直されていた。
……兄上。……余計な真似を。もう貴方が思うほど私は子供ではないというのに。
そう思いながら自分の脚の上で眠る愛しい人を見る。
沢山泣いたから目が少し赤くなっている。
そのうっすら赤くなった部分に触れようとした瞬間小さく身じろぎした雫殿が、ゆっくりと目を開ける。
自分の気持ちが漏れ出て気が付かれないように、さもずっと起きて思索に耽っていたかのような、涼しい顔を作った。
「っ……景、様……? 私、いつの間に……。」
眠そうに目を擦る雫殿に
「まだ夜が明けきっておりませぬ。まだ寝ていても良いのですよ。」と優しく声をかけると雫はまだ眠気と戦いながらも体を起こした。
雫殿がさっきまでいた場所は風が通り少し寒く感じた。
「……本当にまだ寝ていて構いませんよ。私も、今後の領国経営について少々考え事をしておりましたゆえ。」
その「かっこつけた嘘」に、雫はふわっと柔らかく微笑んだ。
「……ありがとうございます。景様の膝が、あまりに暖かくて……。まるで、どこか安全な場所に守られているような、そんな心地でぐっすり寝てしまいました。」
一瞬だけ呼吸が止まった。
貴方という人は…
「守られていた」のは自分の方だったというのに。その無邪気な一言が、どんな甘い言葉よりも甘く身体にまわった。




