厳島の戦い―酒宴の中
陶晴賢や弘中隆兼の死によって厳島の戦いは史実通り毛利家の勝利で終わった。
完全勝利に終わった夜、毛利家陣中では祝宴が繰り広げられていた。
小姓としてドタバタとしていた私を景様が呼び止める。
「雫殿。少し良いですか?」
「え?はい。」
天幕の中に入ると、祝宴の声が少しだけ遠くなる。
「景様…?」
私が名前を呼ぶと景様は目を細め、優しく溶けそうな声で
「雫殿、……戻りました。」
と短く言った。
その瞬間私の中の何かが溢れた。
「……っ、景様……! ああ、良かった……生きてて、生きてて良かった……っ!!」
涙が止まらない。なんでだろう。
抑えようにも溢れ出るものが頬を伝って地面にこぼれ落ちる。
景様は目を開き、
「し、雫殿……!? なぜ、泣くのです……勝利したのですよ。貴方の助けがあったから、私はこうして……」
私のそばに膝をつき、その震える肩を抱き寄せたけれど、私の涙はより溢れてきて止まらない。
「私がっ…未来から来たせいで…誰かが死んでしまうのではと心配でっ…!」
「……貴方に、これほどの不安を……。もう大丈夫です、私はここにいます。貴方の目の前に、生きておりますから。」
景様は、私の頭を壊れ物を扱うように優しく一撫でするように、自分の大きな手のひらでそっと包み込んだ。
良かったと泣きじゃくる私に
「貴方が泣き止むまで、どこへも行きません。……だから、もう自分を責めないでください。貴方が、私を生かしたのですから。」




