厳島の戦い―死の予感(雫目線)
厳島へ渡る直前、騒がしい陣中で、私は意を決して赤川元保殿の元へ歩み寄った。
私の記憶が曖昧だけど、確か未来で厳島の戦いについて結構本で読んだ記憶がある。
毛利家が大きくなるきっかけになった戦いだからだ。
そしてこの時小早川隆景は深入りをして討ち取られかける…と。
それを助けたのは赤左と書いてあって、多分赤川殿のことだと…思う。
もし私がタイムスリップしたことで歴史にズレが起きていたら…。
実際私が産まなければ穂井田元清(少輔四郎)、津和野局(紡)、毛利輝元(幸鶴丸)、毛利徳鶴丸は産まれてなかった。
今の流れは史実通り…そうなると残り有り得そうなのは小早川隆景の死だ。
想像するだけで鳥肌が立つ。
そんなこと起きて欲しくないし、想像すらしたくない。
だけど念には念を入れなければ。
赤川殿は、明日からの激戦に備え、鋭い目付きで刀を検分していた。
「……赤川殿。折り入って、お願いがございます」
私のその声に、赤川殿は手を止めたわ。私を少し怪しむように見つめ、「何だ。遺言なら聞かぬぞ」と、わざとぶっきらぼうに返してきた。
そのまま武具の確認を続けている。
「景様が……小早川隆景殿が、この戦で、命に関わるほど危険な目に遭われます。……どうか、あのお方を助けて差し上げてください。お願いします……っ!」
私の必死な訴えに、赤川殿の動きが再度止まった。
本来なら、「戦場で将が危険な目に遭うなど当然のこと。」と一蹴するところだろう。
けれど赤川殿は私を見つめて何か考え込んでいる。
「……なぜ、それを儂に言う。殿(隆元)ではなく、儂に。」
「赤川殿なら、……誰よりも早く、戦場を駆け抜けてくださると思ったからです。」
嘘では無い。
その言葉に、赤川殿はふっと口角を上げた。
ワシワシと私の頭を撫でながら
「そのようなことは起きぬ。…と言いたいところだが、何があるか分からんのもこの戦場じゃ。気にかけておく。」
と安心させるように撫でくりまわして言った。




