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女神がきたりて  作者: 阿能比等
第一章
8/40

day8 密輸

「…………」


「…………」


 ゴールド。純金でできたタイル程の四角い板。


「……やるじゃん。考えたな」


「本当にこれが売れるの? こんなの外壁の飾りとかに使う安物の鉱物よ?」


 お金がダメなら何か価値のある物を持ってきてはどうか? との女神の提案に乗った。

 結果、女神が持ってきたのがこれである。


「こっちだととんでもない価値がある。なんか……悪いな。何か食べたい物とか欲しい物ある?」


「え? 買ってくれるの?」


「そりゃあなぁ、お礼くらいしなきゃな」


「なんの?」


「え? これの」


「……まだあげるとは言ってないわ!」


「は?」


「魔王を倒したらいくらでも持ってきてあげる! テレシアちゃん‼」


「汚ねぇなお前……」


「テレシアちゃん! …………テレシアちゃん‼」


「扉出してやらないと」


「あっ、そっか。テレシアちゃん!」


 女神は慌てたように手をかざすと、異界への扉を出現させた。

 相変わらず扉の向こうは宇宙のような光景が広がっており、女神の言う異世界そのものは見えない。


「テレシアちゃーん!」


 女神が扉に向かって呼びかけると、しばらくして向こう側から足音が聞こえてきた。そして両手で木箱を大事そうに抱えたテレシアちゃんが現れる。


「はい、女神様! お持ちしました!」


 光の扉から現れたテレシアちゃんが重そうに持ってきたのは五枚の金の板が入った箱だった。


「ほら、私の力さえあればこんな物、いくらでも用意できるわ!」


「テレシアちゃん、これいくらだった?」


「城下街の商店だと50枚入りで1280メニアです」


「あ……ちょっとテレシアちゃん!」


「メニア……そのメニアって……うーん……パンって高級品だったりする?」


「いえ、皆ほぼ毎日食べてますよ?」


「パンって一斤何メニア?」


「120メニアくらいです」


「普通の人の月収ってどんくらい?」


「うーん……20万メニアくらいですかね?」


 とするとアレか。円と価値はそんなに変わらないのか。


「テレシアちゃんさ、何か欲しい物ある?」


「テレシアちゃん! すぐに帰りなさい‼」


「私……あの……姉のお薬が欲しいです……」


「…………」


「…………あ、大丈夫だから。お姉さんってどんな病気?」


「えと……風邪なんですけど、お薬が買えなくて……生まれつき体も弱いので……」


「…………」


「…………」


「私が頑張らないといけないんですけど……まだ子供だからそんなにちゃんとしたお仕事が見つからなくて……」


「…………」


「…………」


「だから……いなくなったお父さんとお母さんの代わりに私が姉を助けたいんです」


「…………」


「…………」


「あの……す、すみません、変な話を……」



「あ……いや……変な話ってか……なぁ?」


 女神を見やると、同じような顏でこちらを見ている。

 つまり、意見は一致しているらしい。


「まぁ……ねぇ?」


「テレシアちゃん、風邪っていうのは医者が診断してくれたの?」


「はい、お父さんが昔炭鉱でお世話になってたお医者様が診てくれて、風邪と栄養不足だそうです」


「ちょっと待ってね。えーっと……あったあった。これ、お姉さんに飲ませてあげて」


 薬局で薬剤師がいなくても買える安い風邪薬。本当に風邪だとしたら無いよりはマシだよな。

 こればっかりは向こうの医者を信じるしかないな。

 あと、俺がいつも飲んでる栄養剤のアグラオフォティスβも二本。


「これは……薬ですか?」


「うん、風邪の薬。食事の後に二つ、一日三回ね」


「なりた、この金売ってきて。売れるんでしょ?」


「え、いいの?」


「……だって……テレシアちゃん、お姉さんが好きな食べ物とか、わかる?」


「りんご……あとクッキーが……」


「まぁ、とりあえず売ってくる。りんごとクッキーと……何か色々買ってくるわ」


 やはり大人の心は、汚れている。

 俺は金の板を抱えて、夕方の町へ走った。たしか、商店街に金の買取してる店があった筈。


 そして、初めて女神と意見が一致したのがなんかモヤモヤする。


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