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女神がきたりて  作者: 阿能比等
最終章
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44/53

days still continue 女神がきたりて 2

女神の語る、俺についての情けない真実を聞いて何も言えなくなった俺に女神は微笑みながら続けた。


「……ねぇ、天国ってどんな場所か知ってる?」


「天使山盛り」


「天使……は間違ってないけど。天国ってね、『与えられた寿命を最後まで生きる事』を達成した魂に与えられる、時間の存在しない、その魂の理想が反映される世界なの」


 神の使いがやってくると再び現世へ行って『完全なる愛と平和の世界』を創る為に肉体へ入って寿命を生きるのよ」


「なんか天国の話より……今さらっととんでもない真実を言わなかったか? 現世の目的って……」


「私ね、時々天国を渡り歩くの。素敵なのよ? みんな現世で覚えた事とか見つけた物で思い思いの天国を作ってるの。家族がいる普通の家や町だったり、大きな猫にお世話されながらお城に住んでたり、物語に登場する町に住んでたり」


「天国って一人一天国なの?」


「勿論! 完全なる愛と平和の世界を創る為に頑張ってくれた天使に与えられるご褒美だもの。現世で巡りあった愛する魂に会う為に早く出て行っちゃう人もいるけど……」


「……天使?」


「ええ。現世の肉体に入ってる魂は天使が肉体に入る時の形態よ?」


「……え俺も? 天使?」


「多分、あなた達が想像してる宗教の天使とは違うと思う」


 嫌な天使だな……。何かが変わる事も自分が変わる事も怖くて怖くて仕方がない。

 必死にいつもの自分の振りをして時の経過から逃げているつもりでいた。


 内心、泣きながら何も変わってないと言い張り続けて地獄行き。


 こんな天使がいていいのか? いや、ダメだから地獄行きか。



「地獄って……何があるの?」


「罰が山盛り」


「…………」


「刑死者とかは被害者と同じ苦しみを百年受けた後、仮釈放として現世へ戻れるわ。仮釈放中は、被害者本人や親族とか血族から許しを得て魂を浄化する事が目的になるの。許しが得られなかった場合はまた地獄行き」


「許されるまでずっと続くの?」


「ええ、勿論。寿命を捨てた者は地獄で裁判を受けて色々。場合によっては天国行きになったりするのよ? そして、生きていなかった者は……」


「…………」


「他の魂に吸収させたり、新しい魂を創るエネルギーにされたり」


「消えるのか……」


「ねぇ、なりた、私の世界に来て? あなたが望む物なんて何一つ無いかもしれないけど、あなたが恐れた未来を皆で見に行きましょう?」


「……いや、いいや。このままあの世……いや、ここにいるよ」


「何故? ここにいてどうするの?」


「…………」


「私を見て。私を求めて。あなたが過去に留まっても私はずっと今にいるの。時の事なんか忘れて。ここにいるのは私だけなの?」


「……なぁ、俺……生きてなかったのか?」


「ええ」


「……地獄は……怖い……。多分、お前がいなかったら泣いてる」


「どうしたいの?」


「どうすればいい……?」


「どうしたいの?」


「地獄には……行きたくない……」


「あなたは、どうしたいの?」


「……逃げたい」


「どこへ?」


「……なぁ……」


「…………」


「……助けて……くれないか……?」


「どうやって?」


「……いや、マジでわからない……」


 俺は、また嘘をついた。本当は何も考えていない。ただ、女神に側にいて欲しかった。

 自分が思ってるほど冷静じゃない。

 ただ女神に促されるように答えただけ。だからわからない。


「ここにいても、あなたが生きてた時と何もかわらない。地獄に行く事もないし、天国に行ける事もないの」


「…………」


「ねぇ、もっと私を見て。時間はあなたを待ってくれるけど、勝手には動いてくれないの」


 時間が、俺を?

 俺を待っていてくれた時間? 俺が動かさなかった時間……

 

「……お前と神社で初めて会った時、俺は……何かが始まると思ったんだ……何かはわからねえけどさ……」


「…………覚えてたの……?」


「お前の世界じゃ、ありふれた事かもわかんねえけど、こっちであんな事があったら忘れられねえよ。……忘れられたら、こんな人間にはなってなかったかもしれないけどな。……自分が……ダメな奴だって早々に気付いちまったんだ。だから……何もしないで生きていけば、そんな失望とか恐怖もやり過ごせると思ってたんだ。そしたら……こんなザマになっちまった」


「そうね。でも、まだ何も終わってない」


「そもそも何も始めなかったからな。それは……わかってる。でも言い訳しか出てこねえ……何度か頑張ってはみたんだけどな」


「上手くいかなかったの?」


「ああ、結局何も始まらなくてよ……。それでも諦められねぇし、だからって自分から動き出せるような人間でもなかった。お前が俺の家に現れた時、今まで肯定してきた自分が死んだ気がしたんだ」


「だから忘れたフリを?」


「いや……逃げた。怖くて仕方がなかったし、何よりもどうしていいか分からなかった。自分が無駄にして捨ててきた物が迫ってきた気がして……」


「…………」


「……嘘は……ついてないつもりだったけど。……そりゃあ、覚えてるとは言わなかったけど、忘れたとも言」


「あなたは嘘つきよ」

days still continue 女神がきたりて 3 へ続く

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