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女神がきたりて  作者: 阿能比等
第一章
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day4 女騎士

挿絵(By みてみん)



「ただいまー」


「あ、おかえり!」


 最近は何をしても勝手に入ってくるし、外から帰ると大概はいるからもう諦めた。

 あの異界への扉さえ無ければ話は別なんだけどな……

 どうせ扉から現れるなら、未来の便利な道具を持ったロボットが来てくれりゃあいいのに。

 神の力なのか何なのかはわからないが、やってる事は悪霊である。


 だが、今日はいつもと違った。


「え、どなた?」


 女神の隣に、妙に軽装……というより無駄に露出の多い鎧を着た赤髪の女性が背筋を伸ばして正座している。

 髪を1つに縛り、緊張した赤い瞳がこちらを見ていた。

 

 鎧は胸当てと肩当て程度で、あとは布製の服。これで戦えるのかね。


「この子は私の世界の一番大きい国で騎士をやってるフィーメ・カーレッジさん! あなた達みたいなのはこういう女騎士好きでしょ?」


「死ね」


「あ、只今紹介に預かりました、フィーメ・カーレッジと申します。王都にて国営騎士団分隊広報隊隊長補佐を務めさせてもらってます。」


 ……騎士団の……分隊の、広報隊の隊長の……補佐……?

 ……広報の仕事してる一般人……

 

 それはいいとして女神とは大違いの礼儀正しさだ。


「ああ、阿仁谷 和陀です。この部屋に住んでます」


「あのー、ちなみに我々が今日ここにくるという話は……」


「いやぁ……何も」


「あ、そうでしたか! 大変失礼致しました!」


「いえいえ、そんな」


 フィーメさんは困ったように笑って、傍らに置いてあった小さな箱を差し出した。


「あの、お詫びといってはなんですが、こちら王都名産のハーブと小麦を使った焼き菓子でございます」


「いえ、大丈夫ですよそんな。こいつに責任取らせますんで」

 

「え、女神様にですか⁉ そんな事言わずに……」

 

「あー、じゃあお茶淹れますんで、よかったら一緒に」


「ああ、お構いなく!」


 急須を使うような、ちゃんとしたお茶なんか淹れるのは久々だな。普段は麦茶だし。

 ……あ……誰かにお茶を淹れるのは初めてか?

 女神は勝手に淹れて勝手に飲んでるし。

 俺の人生初のお茶出しの相手は異世界の公務員か。

 

 お茶を用意した、その時だった。


 女神が唐突に机を両手で叩いて立ち上がった。

 思った程の音が出なかったのか、机の上の雑誌やリモコンを床に下ろして、もう一度両手で叩いた。

 今度はそこそこ良い音が鳴った。


「ちょっと待ってよ!!!! 待ちなさいよ!!!!」


「なんだようるせえなぁ」


「何これ‼」


「え?」


「なんかやだ! その……その感じ! なんなの二人して!」


 女神が俺とフィーメを交互に指差す。

 何を言っているのかさっぱりわからない。こちらからしてみれば、それこそ「なんなんだ、その感じ」といったところである。


 変に興奮した女神はフィーメさんがしっかり座らせてくれた。

 

「す……みません、あの……ちょっと興奮してるみたいでして、お気になさらず」


「ええ、まぁ……いつもの事なので。どうぞ」


「すみません、ありがとうございます」


 フィーメさんは至極常識的でまともだ。会話も普通に成立する。

 女神に慣れすぎて忘れていたが、これが普通の人間とのコミュニケーションだよな。

 ちなみにフィーメさんがくれたお菓子はマドレーヌのような焼き菓子で、ハーブは特に感じないが甘さは控えめで美味しかった。

 こういうお土産物のお菓子って妙に美味いよな。


「で……今日はどういったご要件で?」


 フィーメさんに投げかけた質問は女神が横取りし、得意げに言った。

 

「この女騎士と一緒に魔王を倒す旅に出なさい!」

 

「本日は貴方がこちらに移住するという事で諸々のお話を伺いにお邪魔させて頂いたのですが……申し訳ありません、こちらの方に重大な手違いがあったようで……」


「うーん……まぁ……いつもの事なんでそれはいいんですけど、移住はしないですね」


「え⁉ 女神様?」


 フィーメさんの反応を見る限り、何も聞かされてないか騙されてるかのどっちかだな。


「…………フィーメ、帰ろ」


「いえ、そんな……女神様が移住者がいるから手続きをって……」


「いいから帰るわよ! 何よ、式典用の鎧なんか着ちゃって! このなんちゃって騎士!」


「おい女神‼ お前フィーメさんには失礼な事すんな! ただでさえ貰い事故食らってんだから‼」


「…………ふーん。やっぱりこういうのが好きなんだ?」


「マジでお前よりかマシだわ」


「ふん! いいわよ! じゃあ姉上みたいに私一人で魔王の所に行くから‼ バーカ!」


「いいよ別に。行けよ」


「え? 魔王様……ですか?」


 女神の話を聞いて、何故かフィーメさんが不思議そうな顔で聞いてくる。


「うん、なんか魔王倒してくれって言って聞かないんですよ」


 無言で立ち上がる女神はフィーメの腕を掴んで引っ張り上げ、そのまま空中に手をかざして異界への扉を出現させた。


「はあ……えっと……え⁉ 女神様⁉ な、何をし……きゃあ‼」

 

 女神はフィーメを異界への扉に投げ込んだ。

 俺は女神を膝で押して異界への扉に蹴り込んだ。

 で、扉を閉じれば……よし、消えた。


 …………


 ………………


 ……いやー……よかったなぁ……本物の女騎士……


 実質公務員みたいだけど凄くいい。

 礼儀正しいし、会話も普通にできる。

 それに、何より……


 女神と同じくらいか、いや、それ以上あったかな。


 何がとは言わないけど。


 視覚的に確認できる部分において、フィーメは非常に優秀だった。

 鎧の胸当てが妙に立体的だったのはそういう理由である。


 定期的に連れてきてくれないかな。



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