one day 女神
流れる金の光、それが彩るのは中心がグリーンの碧い二つの宝石。
常に両端がなだらかに上がった薄めの二枚の花弁は気紛れに揺れ、そこから鳴る静かな音は俺の名前になる。
薄紅のさす新雪のような優しさを包む赤と白の柔らかな瀑布は常に俺に向かって流れている。
女神。
それは例えではない。
だが、例えとしてもこれ以上の言葉はないだろう。
綺麗な人はいくらでも見た事はある。
使い慣れたスーパーで
家路で
テレビの中で
雑誌で
ネットで
何が綺麗なのだろうか。
所作は目を引く程でもない。化粧の事などわからない。この服を誰かが着たら同じかと問われれば違う。
目を閉じても感じるものはこの美しさとは関係ないのだろ。
ゆったりと体をテーブルに預け、頬杖をついて海でも眺めるように俺を見つめている。
もう何度も見たこの彫刻のような姿勢も不思議な事に特別ではなくなっている。
この狭い我が家のどこを見ても女神の記憶がある。
日常の記憶にそっと寄り添う女神は俺の時の流れになっている。
ありふれた安物のカップから蜜を吸う蝶は切っ掛けもなく、俺の方へはためいてくる。
そして、時計の針を動かしてみようと誘うのだ。
優しい嘘に抱かれたまま、この指に蝶を休ませてやる事もできずに石になっていく俺に夢を見ているのか?
それとも、気紛れに俺の周りを飛んでいるだけなのだろうか。
何も知らない振りをする彼女から目を逸らして……
俺の口からは出す資格のない宣言を、時間の共有という流れに託して……
「ねぇ、なりた!」
one day 女神 end




