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【番外編完結】「醜い」と嫌われた豚令嬢、三年後に元婚約者に嫁ぐことになりました ~ただし離婚前提です~  作者: ボボブラ汁
番外編 ケンカップルの姫始め

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私ね、あなたのこと──

 私は今頃ヘビントン侯爵邸で初夜に臨んでいるはずの、ヒューバート兄様とシンシアに思いを馳せた。


 お兄様、きっとオロオロしているでしょうね。


 思わず顔がニヤついてしまう。お兄様は、自分にしか興味ないナルシストだもん。きっと童貞だわ。


 クライヴは娼館に通っていたくらいだし、たとえ仕事が一番でも、ある程度なら女性を知っているはず。


 ──私以外の女性なら、抱けるのよね……。


 じわりと、また涙があふれそうになる。


 なによ、クライヴってサイテー。


 他の人を好きになればよかった。


 クライヴ以外なら、もう誰だっていいから──いえ……アーサー殿下から何度か言い寄られたけど、あの人はイヤだな……。


 殿下ったら、最初の結婚式ではしつこかった。


『ミラベル、離婚いつするんだ? 離婚するよな? 離婚しないの? 俺がまだ結婚していなかったら、バツイチでも結婚してやるからさ』


 縁起の悪いことを、人の結婚式で連呼しないでよ!


 まあ、クライヴが腫れた顔に手をやって『夫婦喧嘩になったら顎の骨折られますけど、覚悟はありますか?』って聞いたら離れていったけど──そこまでやっていないわよ!?


 とにかく、アーサー殿下はダメ。傲慢だもん。


 王族だから傲慢なのは当たり前かもしれない。だけど、上に立つ人は弱い者イジメをしてはいけないの。


 シンシアに意地悪したアーサー殿下のことは、絶対に選ばない。


 いつかヒューバート兄様にやったみたいに、回し蹴りしてやるんだから。


 うん。ウォンさんにまた、必殺技を教えてもらいに公園に行こう。


 アーサー王子をボッコボコにする妄想を楽しんでいたら、いつの間にか眠ってしまったみたい。


 ゆらゆら揺れるなと思って、なんとなく目を開けたの。


 そうしたら、クライヴの顔がすぐ目の前にあった。


「……??」

「君はなんで、ソファーで寝てるんだ? 風邪をひくじゃないか」


 浮いてる? 目をこすって、下を見下ろした私。


 クライヴに、お姫様抱っこされてる!?


 顔が一気に熱くなり、血が上って赤くなったのが、はっきり分かってしまった。


 それに気づかれたくなくて、顔を背けて思わず叫んでいた。


「やだ、離して!」


 クライヴが片方の眉毛を上げた。


「いいよ」


 パッと手を離された。


「ひぃいいい」


 本当にやるか!


 私はクライヴの首にしがみついた。

 

「痛てててて!」


 クライヴは苦痛の声を漏らして、私をベッドに下ろした。


 そこまで重くないでしょ!


 昔のシンシアのこと、軽々抱っこしていたの知っているのよ! こういう意地悪ばっかりするから──。


「ちょっとさ、ヒリヒリするんだよ」


 首筋の後ろに手を当てながら、顔をしかめてクライヴは言った。


「なんでよ?」


 私はベッドの上で膝立ちになってクライヴににじり寄り、彼の首筋を見つめた。


 オイルランプの明かりでもわかる。なんか真っ赤になってる!? 私とは違う意味で。


「日焼け?」

「……風呂で、擦り過ぎたんだ」


 従僕が力加減を知らなかったのかしら。


 そこで、私は気づいた。クライヴは従僕に体を洗わせない。


 新興貴族の多くは、昔からの貴族のように振舞おうとする。だから、入浴のお世話も着替えも、使用人にやらせるようになると聞くけど、クライヴは違う。


 裕福になった今でも、自分で何でもやってしまう。


「なんでそんなに擦ったの?」


 ちょっと考えてから、私はからかうように付け足した。


「もしかして、私との初夜のため? 綺麗に磨きすぎた?」


 でも、言ってから恥ずかしくなった。


 ……そんなわけないか。


 ところが、クライヴは何も言わない。口元に苦笑いを浮かべている。


 え、本当にそうなの? それで遅くなったの!?


 沈黙はそう続かなかった。


 彼が眼鏡を外し、整った真顔をこちらに向けたから。


 ドキッとしてしまう。クライヴ、私……私ね、あなたのこと──。


「さて、ちゃっちゃと始めるか。明日も仕事が山積みなんだ。早起きして契約書の準備をしないと」


 私のビンタが思い切り炸裂した。

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