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【番外編完結】「醜い」と嫌われた豚令嬢、三年後に元婚約者に嫁ぐことになりました ~ただし離婚前提です~  作者: ボボブラ汁
第四章 ゴミと豚野郎

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豚に戻りそうな初夜

 王都の侯爵邸、ヒューバート様のお部屋です。


 わたくしはカタカタ震えながら、ナイトドレスを握りしめておりました。


 この豚めにはもったいないほどエレガントで、ちょっぴり大人びた一着です。


 ……いけない、また自分を卑下してしまいましたわ。


 ヒューバート様が知ったら叱られるに決まっていますが、白は膨張するし、ピンクは豚になるから嫌、とマーガレットに泣きついた結果──今夜のために黒を用意してくれたのです。


 これなら引き締まって見えるはず!


 ただ、このドレス……薄すぎません? スースーして落ち着きませんし、透けて見えそうです。


それに、初夜は下に何もつけないのがマナーだとマーガレットから聞かされ、余計に怖気付いています。


 そもそもこれ、本当にナイトドレス? どう見てもシュミーズにしか……。


『ベビーなんとかって書いてあったですだよ! 大丈夫、初夜もOKってオネェな店員さんが言ってたべ!』


 自信満々のマーガレットの言葉を思い返しながら裾を見ると、膝より上で妙に短いし、前も大胆に割れた謎仕様。

 本当に初夜用なのでしょうか……。


 初夜とは、夫と初めて夜の共同作業をするもの──要するに、ケーキ入刀の夜バージョンだと聞きました。


 優しいヒューバート様だから安心……のはずなのに、大好きな方だからこそ余計に緊張してしまうのです。


 このわたくしとあの高嶺の令息が共同作業なんてしたら、とんでもないキメラが誕生してしまいますわ!


 いえ、駄目です。こんな弱気になっては。


 彼がおっしゃっていたでしょう? 


 わたくしは可愛くて綺麗で、ヒューバート様にはもったいないくらいの女性だと!


 大丈夫、お母様も「夫に任せておけば間違いない」と言っていましたし……。夫……なんて素敵な響き!


 ええ、大丈夫に違いありません。


 そうだわ。真っ暗にすればいいのよ! 醜い部分さえ見せなければ、儀式はどうにか遂行できます。


 そもそも裸になる必要なんてあるのでしょうか? 脱いだところで誰も悩殺されませんのに。


 主寝室のクローゼット横には大きな姿見が立てかけられておりました。他の家具といえば広いベッドとデスクくらい。


 毎日この鏡の前で美を磨いていたのでしょうね。ナルシストなヒューバート様らしいと思いました。


 わたくしは鏡に映る自分を見つめ、ナイトドレス越しに胸をぐっと持ち上げてみました。


 ……うんざりします。


 どうしてわたくし、こんな不格好なのかしら。


 おチチとお尻は一体どうすれば痩せたのでしょう。


 もしまた「豚肉」なんて言われたら……!


 そんなことを考えていると、入浴を済ませたのでしょう、濡れた髪のヒューバート様が寝室へ入ってきました。


 ベッドに腰掛けるわたくしを見た瞬間、彼は片手で目を覆い、くるりと背を向けました。


「なんだあれ……あのパジャマ普通なのか……?」などとぶつぶつ言いながら、地母神ギャイアへ早口で祈り始めました。


 ですが、彼の奇行を気にしている余裕はわたくしにはありません。


 緊張のあまり、わたくしはずっと深呼吸していたのです。


 吸って~吐いて~吸って~吸って~吸って~カハッ──


 その様子に気づいたヒューバート様が、慌てて駆け寄りました。


「ちょっと! どうしたの、顔色が紫だよ!」


 水差しから水を汲み、わたくしへ差し出してくださいます。


「や、やっぱり……む、無理ですわ!」

「え?」


 グラスをこぼしそうになりながら、私はガウン姿の彼に必死で訴えました。


「ドッキングなんてできません!」


 しばらく涙目のわたくしを見ていたヒューバート様は、やがて苦笑しました。


「不安になるのは当然さ。僕だって緊張している。初夜ってそういうものだよ」


 そう言って、彼は手を広げました。いつも通りの「おいで」の合図です。


 つまり抱っこしてくれるということ。わたくしはホッとして彼の膝の上にちょこんと座りました。


 重くないといいのですが……。


 密着していると、不思議とすべて大丈夫な気がしてきます。


 ヒューバート様はわたくしをぎゅっと抱きしめました。


「僕と君の間には、男女の雰囲気がぜんぜんなかったからね」


 固い胸板に押し付けられ、わたくしはドギマギしてしまいます。


 ヒューバート様ったら、全然分かっておりません。


 男女の雰囲気にならなかったのは、あなただけですわ!


 わたくしなんて、ヒューバート様の胸筋や腹筋を見るたびに、はしたなくもムラムラしていたというのに。


 そういえば、前より筋肉が増している気がします。短期間で鍛えたの? 特に下半身が……。


 とにかく──。


 彼は純粋に妹感覚でわたくしを可愛がり、わたくしはその横で不埒な妄想を積み重ねていた──それが現実だったのです。


 彼の胸筋に顔を埋め、匂いを嗅ぎたくて……キレてる筋肉の溝を指でなぞりたくて……。


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