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【番外編完結】「醜い」と嫌われた豚令嬢、三年後に元婚約者に嫁ぐことになりました ~ただし離婚前提です~  作者: ボボブラ汁
第三章 ナディーン再び

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醜く下賎な豚と2度目の婚約破棄

 来訪者をひと目見た瞬間、わたくしははしたなくも「げぇえぇえっ」と叫びそうになりました。


 玄関ホールにいたのは、ストーンヒルズ夫人だったのです。


 な、何の御用かしら。お供も連れず、お一人のようです。


 ヒューバート様の遠縁なので、明日の式にはストーンヒルズ夫妻をご招待しておりました。


 でも、本日は身内だけで過ごす日だとお判りでしょうに。


「夫人、いったいどうされました? 式は明日ですが」


 ヒューバート様の声にも、不信感が滲んでおります。


 わたくしは彼の隣にぴったりついておりました。


 だ、だって、もしかしたら──


「ヒューバート様、わたくしのモノにならないなら、貴方を殺してわたくしも死にます!」


 タタタタ、サクッと刺そうという魂胆かもしれません。


 そんなことさせませんから! 火掻き棒でも持ってくればよかったわ!


「立ち話もなんでしょう。エントランスでは冷えますから、どうか応接室にいらしてください」


 ところがストーンヒルズ夫人は、不可思議な笑みを浮かべ、余裕たっぷりにわたくしたちを見比べました。


 長年好きだった人の結婚式直前とは思えません。


「ちょうど良かったわ。シンシア嬢もお揃いでしたの」


 ナディーン様は、その場でわたくしにおっしゃいましたが……ここステイプルトン邸ですけど!?


「ヒューバート様、明日の結婚式はおやめください」

「……は?」


 わたくしたちは顔を見合わせました。


「ストーンヒルズ夫人──」

「ナディーンと」

「え?」

「どうかナディーンとお呼びください、ヒューバート様。夫は先ほど息を引き取りました」


 わたくしたちは呆然と立ち尽くします。


「なんてことだ」

「お、お気の毒です」


 ナディーン様はクスッと笑いました。


「あら、どうして?」


 聞き返され、ヒューバート様は戸惑っております。


「わたくしがあの老人と結婚したのは、お金のためです。でなければ誰が下賤の血の者と夫婦になどなりましょうか」


 ザクッと心理的な刃がわたくしの胸を突き刺しました。自分が言われているような気がしたのです。


 でも違うもの。ヒューバート様はわたくしの持参金が目当てではないもの。


 ヒューバート様が険しい顔でおっしゃいます。


「先ほど亡くなったということは、通夜は明日ですか?」

「ええ。ジョシュアは今、王立病院に安置されております」


 ヒューバート様が首を横に振りました。


「申し訳ない。夫人は近しい血縁者ではないため、式の延期まではできません。急すぎて、明日までの連絡手段が無い参列者が多い。何よりも、王太子殿下とアーサー殿下のご予定は簡単には変えられません」


 しかしナディーン様は、なぜかヒューバート様ではなく、わたくしに向かっておっしゃいました。


「あら。結婚そのものが無くなるんですもの。式は延期ではなく、中止です。そうでしょ? シンシア様」

「何をおっしゃっているのです?」


 わたくしは震え上がりました。ナディーン様は、醜いわたくしの心を見透かすように続けました。


「ねえシンシア様。あなたまさか、侯爵家に平民の血を入れるおつもり?」


 青ざめるわたくしの隣で、ヒューバート様が怒りの声を上げます。


「時代錯誤な考えは捨てたまえ。我々貴族は特別な存在ではない」

「ヒューバート様、わたくしにはジョシュアの莫大な遺産が入ります」


 わたくしの鳩尾に、蹴られたような衝撃が走りました。それは……つまり……。


 ナディーン様はわたくしを見据えながら、ヒューバート様におっしゃいます。


「わたくしがあなたのくだらない羊を全部買い取りますし、侯爵領の土地税も肩代わりいたしますわ。だって掃いて捨てるほど、お金があるのですもの」


 ヒューバート様は自分の力で何もかも解決したい方ですから、きっぱり断りました。


「その必要はないよ、夫人。僕は施しは受けな──」

「その平民上がりに資金援助してもらうよりは、あなたのプライドは傷つかないでしょう? 結局あなたも、根っこは時代錯誤な貴族ですもの。ね、ヒューバート?」


 呼び捨てぇえええ。


「わたくしは今、おそらく王族に匹敵するほどのお金持ちですわ。ですからハートフィールド伯爵領も蛮族から買い戻せるし、あなたの心も手に入れることができるの」


 視線で人を切り裂けるなら、わたくしは細切れになっていたでしょう。


 ナディーン様は狂気のように鋭い目で、このわたくしを睨めつけました。


「三年前、わたくしから奪ったヒューバート様を返していただきます。この醜い下賎の女!」


 瞬間、わたくしは耳を塞いで叫んでおりました。


「ヒューバート様、あなたとの婚約を破棄しますっ!」


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