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【番外編完結】「醜い」と嫌われた豚令嬢、三年後に元婚約者に嫁ぐことになりました ~ただし離婚前提です~  作者: ボボブラ汁
第三章 ナディーン再び

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はしゃぐ豚

 わたくしはウキウキしながら、一足先に列車へ乗りました。


 専門店から「ウェディングドレスが完成したので一度試着に来てほしい」と速達便が届いたのです。


 今流行りのデザイナーだと伺っていたのに、思ったより早いではありませんか!


 きっとクライヴ兄様が、仕立て代を上乗せして急がせたのでしょう。


 一生着ることはないと思っていたウェディングドレス。膨張色だろうが構うものですか!


 この時のわたくしは、ヒューバート様と過ごす日々があまりにも幸福すぎて、はしゃいでいたのです。


 ……もしかして本当に、ヒューバート様と一緒になってもいいのかもしれない。後継者のことは、時間が経てばどうにかなるのかもしれない……。


 そんな希望に満ちた未来を、つい想像してしまうほどに……。



 ※ ※ ※



 王都のステイプルトン邸に到着すると、母が誇らしげにドレスを見せてくれました。


「後でショップのお針子さんたちが来てくれるわ。最後に試着して微調整をしたら完成ですって」


 ハンガーに掛けられたそれを目にした途端、思わずほーっと息が漏れます。


 胸元はロールカラーのオフショルダー。


 肉々しい胸や二の腕までカバーしてくれるデザインで、肩から滑り落ちそうな危うさが素敵。


 さらに上品なAラインのおかげで、お尻も大きく見えないはず……いえ、希望的観測ですが。


 そこへミラベルが「間に合った!」と叫びながら、庭に面した窓から乗り込んできました。……また垣根を越えてきたのね。


「できたわ! お店から共布をもらって作ったの」


 彼女が差し出したのは、レースのフリルにスカイブルーパールを散りばめたヘッドドレス。


「わたくしの手作りよ。サムシングブルーね」

「す……すご」


 豚に真珠とはいえ、なんて綺麗なのでしょう。


「普通の白い真珠だと、髪がクリームブロンドだから目立たないかなと思って……」


 わたくしは言葉を失いました。東の海でしか採れないスカイブルーパールは天然物だと非常に高価だと聞いております。


 それに細かい刺繍まで施されているなんて。ミラベルにこんな特技があったとは。


「私、悪役令嬢だから、なんでもひと通りこなせないとダメなのよ。その中でも刺繍は大の得意」

「素敵よ、ミラベル」


 感極まって泣いてしまいました。わたくしのように間違いを犯した雌豚でも、結婚を楽しんだっていいじゃない。


 その時お母様が、そっと耳打ちしました。


「ミラベルったら、自分の宝石を全部売ってスカイブルーパールを買ってきたのよ。わたくしが出すと言ったのに、どうしても自分で全部やりたいって」


 それから母は、わたくしが先に買っておいた大きめのベールを取り出しました。


「本当にこれにするの? ベールはサムシングオールドだと思って、私の時のを用意していたのに。それにこれだとドレス姿が隠れてしまうわよ」


 お母様ったら分かっていませんわ。確かにドレスは見せたいですが……着るのがわたくしなら台無しになってしまいます。


 そこへクライヴ兄様がメモ帳を片手に現れました。


「披露パーティー用の料理の確認、招待状発送……あと何かあるかい?」


 そしてわたくしが到着していたことに気づくと、無言で近づいて抱きしめ、頬をすりすりしてきます。


「なんだか寂しいな。すぐ戻ってくるとはいえ」

「え?」


 母とミラベルが同時に聞き返しました。兄様は咳払いして「なんでもない」と言い、さらに口の端を歪めて、意味深に零しました。


「まあ、そうならないかもしれないし?」


 クライヴ兄様ったら……わたくしは頬を赤らめます。


 屋敷内がどことなく浮き足立ち、ソワソワする中、母がわたくしにこっそり囁きました。


「後で初夜について教えるわ」


 わたくしは余裕たっぷりに申し上げました。


「必要ありません」

「でも、習う前に学院を辞めてしまったでしょ? その後引きこもっていたから、あなた何も知らないんじゃ……」

「お母様、今の女子学生は進んでいるので、わたくしも耳年増なの」


 それに、母親からというのは、なんだか照れるのです。居た堪れないと申しますか……雄しべと雌しべの話でもされそうで。


 お母様も気恥ずかしかったようで、少しホッとされた様子。


「本当に? 正しい知識なの?」

「まず裸になって男性をクラクラさせ、その隙にベッドに押し倒しチュウして繋がれば子作り完──」

「身も蓋もないっ!」


 お母様は狼狽して周囲に目を走らせ、咳払いして小声で付け足しました。


「まあ露骨な言い方をすればそうですけどね。もう少し恥じらいを持たないと」


 確かに、模範的な上流階級の淑女にあるまじき大胆な行為です。


 男性にヘッドロックをかけて、寝技に持ち込むなんて……。


「まあそれだけ分かっていれば大丈夫ね。……あとは旦那様にお任せすればよいわ」



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