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【番外編完結】「醜い」と嫌われた豚令嬢、三年後に元婚約者に嫁ぐことになりました ~ただし離婚前提です~  作者: ボボブラ汁
第三章 ナディーン再び

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豚に慣れる努力を?

 その夜、寝支度を整えたわたくしのもとへ、ヒューバート様がいらっしゃいました。


 ガウンを羽織った寝間着姿を目にした瞬間、わたくしったら、また棒立ちで見とれてしまったのです。


 寝間着姿の、なんとお可愛らしいこと……。


「夜分遅くごめんね」


 ヒューバート様は、ナイトドレス一枚のわたくしをあまり見ないようにしながら、切り出されました。


「よく考えたら、君が客室なのはおかしいんじゃないかと思って」


 あまりに美しいその姿に見とれてしまい、言葉の意味が頭に入りません。


「ほえ」


 アホ丸出しの声を出してしまいました。返事なのか、うめき声なのか、自分でも判然といたしません。


「寝ぼけているのかい?」


 ヒューバート様がクスッと笑います。


 ああ、だめです。素敵すぎて、もう死んでもいい。


「僕たち婚約しているわけだし、同じ部屋で寝るべきかなと」

「ほぇええええええええ!?」


 慌てるわたくしの口を、彼の大きな手のひらが押さえました。


「しーっ。ストーンヒルズご夫妻が起きてしまうよ。年配の方は寝るのが早いんだ」


 温かい手が唇に触れて……わたくし、野豚のようにフゴフゴ嗅ぎたくなりました。


「もちろん、何もしないよ。ただ、その……少し触れ合えば慣れるかなと思って……」


 気まずそうに言う彼の言葉に、わたくしはハッといたしました。


 ──そうでしたわね。


 彼にとってわたくしは、真っ裸で迫っても心動かされない醜女。結婚前に「テスト」をしているのでしょう。


 わたくしと同衾して、今度こそムラムラするかどうかの……。


 するわけがないのですが、この三年で何か変わっていれば……と、思いたいに違いありません。


 彼は侯爵家の当主です。遺言に従うと決めた時、後継者を儲けることも、当然頭に浮かんだはずですから。


「あ、ご安心ください」


 わたくしだって、早く気づいてもらうために来たのですよ? もちろん持参金を渡すため、一度は結婚していただかねばなりませんが……。


「わたくしはそのうちヒューバート様と……」


 ──離婚するので、夜の営みの心配はなさらなくていいのです──


 危うくそこまで口にしそうになり、慌てて飲み込みました。


 そんな露骨な言い方をすれば、義務感で娶ろうとしている彼の体面を、深く傷つけてしまいます。


「大丈夫ですわ、そんなこと気になさらないで。きっと上手くいきます」

「……う、上手くいくとは?」


 ヒューバート様が顔を赤らめました。


「夫婦生活は、僕を信用してくれているってことかな?」


 どう返すべきか分からず、わたくしは唇に人差し指を当ててしばし考えました。


 困りましたわ……。


 ですが、そのうち彼も思い知るでしょう。わたくしと男女の関係になることが、難しいということを。そう遠くはない未来──おそらくは、初夜で。


「なるようになるのかな、と思ったのですわ。だってヒューバート様ですから」


 煙に巻くような言い方をいたしました。


 すると彼は、なぜかわたくしの人差し指に目を留めたまま、名前を呼ぶまでぼんやりしておられました。


「ヒューバート様、どうかなさいました?」

「あ、いや。ごめん、唇が艶々……いや、ぼうっとして……眠いのかな。とにかく、君はもうすぐここの女主人になることだし、主寝室においで」

「はい」


 …………じゃなくてぇえええ!


 思わず返事をしてしまいましたが、一大事です。


「いや、ですから一緒の部屋までは、必要無いと申しますか──」


 わたくしがムラムラしてしまう!


「ほら……冷えてしまうから、早くおいで」


 ヒューバート様はわたくしに自分のガウンを被せ、手を引いて客室から連れ出し、主寝室へと導かれました。


 温かく大きな手が、わたくしの手を握っています。


 じわっと涙が出そうになりました。


 昔はこの手で、よく頭をグリグリしてくださったものです。


 お尻をポンポンしながら「いいサシ入ってるね」なんてジョークを飛ばしていた頃、わたくしがどんな気持ちでこの手に身をゆだねていたか……。


 きっと分からないまま、やがて疎遠になるのでしょう。


 まだ結婚もしていないのに、もう離婚後のことを考えてしまい、物悲しくなりました。


 主寝室に入ると、わたくしはソファーに寝ころびました。


 ヒューバート様は眉を顰め、わたくしを見下ろします。


「何やってるんだい?」

「え、寝室を共に」


 ため息を吐いた彼はベッドに腰かけ、膝を叩きました。


「ここにおいで」


 わたくしはソファーの上で目を丸くしました。何をおっしゃっているのかしら、この方。


 ヒューバート様は悪戯っぽく笑います。


「僕たちはまだ気まずいから、距離を詰めようと思ってね」


 彼がポンポン叩いている膝を見て、わたくしは警告いたしました。


「石を乗せる拷問のように、お御足が潰れますわよ」

「え? 言っている意味が──」

「昔そうおっしゃいましたわ。たまにはわたくしのことも膝枕してください、と申し上げたら」


 ヒューバート様が激しく動揺なさいました。


「僕が? そ、そんなこと僕が言ったのかい?」

「ヒューバート様は、わたくしの膝枕が大好きでしたから」


 そうだわ! わたくしはぴょこんとソファーから立ち上がり、ててててとベッドへ駆け寄って、彼の隣に座りました。


 そして太ももをポンポン叩きます。


「膝枕、どうぞ」

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