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【番外編完結】「醜い」と嫌われた豚令嬢、三年後に元婚約者に嫁ぐことになりました ~ただし離婚前提です~  作者: ボボブラ汁
第三章 ナディーン再び

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豚から離婚を切り出されたら、傷つきますわよね

「いいことじゃないか」


 クライヴ兄様がおっしゃいましたが、わたくしは首をブンブン横に振りました。短い髪が頬に当たります。


「だって、けっきょく彼が困ることになるのですよ?」

「シンシア……君は彼が好きだろう? まあ俺の次にだろうが。向こうだってお前のことは大好きだ。デレデレだったじゃないか」

「妹としてですわね……」


 あるいはペット。


「前にお兄様がおっしゃったとおり、それではダメなのです。ヘビントン侯爵家に後継者が望めなくなります。わたくしにムラムラしなければダメなのでしょう?」

「そう……だね」


 クライヴ兄様は眼鏡を光らせ、しばらくわたくしの全身を眺めていました。そして、なぜか複雑な表情でおっしゃいました。


「それならそれで、あちらに気づかせないとな。君にムラムラしないということを分からせるんだ。そのためには、少しは触れ合う時間を設けなければなるまい」

「べ、別に急がなくても……ヒューバート様はまだ若いのです。貴族でも結婚は早い方ですわ。後見人が外れたばかりですもの」


 ……と言いつつ「気づかせる」という兄様の言葉に怖気づいておりました。わたくしは少しでも長く、彼の妻の座に収まっていたかったのです。


「確かにあいつは急がなくていい。でも、女子である君はそうはいかない。早く離婚してもらわなければ、君の再婚が遅れるじゃないか」


 クライヴ兄様はそう言って、ニヤッと笑いました。


 お兄様ったら、何を考えているのかしら! あれほどわたくしを結婚させたくなかったくせに! そんなにシンシアミニが見たいの?


 わたくしは結婚する気などございませんからね! 再婚なんてする気はございませんっ! ヒューバート様以外となんて──。


 思わずそう言いかけて、口を片手で塞ぎました。わたくし、何を言っているのかしら。女々しいにもほどがあります。


 これは、だめですわ。結婚後も離婚成立までは彼からなるべく離れていないと。


 一緒に過ごせば好きが加速し、また醜い女の部分が剥き出しになって、離婚するのが辛くなってしまう。


 今からそれを想像し、ゾクッとしました。やはりお兄様の言う通り、早く離婚した方がいいのですわね。


「クライヴ兄様、債務を完済し領地が回りだしたら、わたくしの方から離婚を申し出ますわ」


 クライヴ兄様は面白そうに頷きました。


「前回も──偽婚約だったとはいえ──君からだったね。二回もシンシアから振られたのでは、それはそれで傷つくかもな」


 大丈夫、本当はあちらからなので……まあ、兄様には言わないけれど。でも──


「確かに……わたくしのような、醜い豚から振られるのは屈辱でしょう。ものすごいナルシストですし、落ち込むかもしれません」

「は? 何言ってるんだ、シンシアは可愛いじゃないか」


 そうおっしゃるお兄様をハイハイと流して、考え込みます。


「やはり兄としてしか見ることができなかったから、と申し上げれば──」


 そうだわ! あの時の復讐だったと言えばいいのです。わたくしは別れたくなかったのに、と──。


 そこまで考えて、頭を抱えてしまいました。バカッバカッ! わたくしが悪いことをして勝手に傷ついただけなのに、何を言っているのかしら。


 クライヴ兄様はそんなわたくしを見て、眼鏡を指で押し上げつつ、深い息をつきました。


「俺はヘビントン侯爵家とは対等でいたい。だからこそ、前侯爵への恩を返したいんだ。君はヒューバートとの間に何があったか、彼から絶対に聞くなと言うが……」


 わたくしはお兄様から目を逸らしました。やはりギクシャクしているのは分かるのでしょうね。


「和解して──前の仲のいい兄妹関係に戻るなり……そういう……関係になるなり、してほしいものだがね」


 クライヴ兄様の呟きは低すぎてよく聞き取れませんでしたが、わたくしは渋々頷きました。


「分かりましたわ。長引くのは誰の得にもなりません。彼の領地に向かい、わたくしではダメだと再認識していただきます」


 わたくしの邪な気持ち──未だに残っている身の程知らずの恋愛感情──さえ消すことができれば、実はいつだって元に戻れるのですけどね。


 それは分かっているのですが、気持ちは上手くコントロールできないものなのです。


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