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【番外編完結】「醜い」と嫌われた豚令嬢、三年後に元婚約者に嫁ぐことになりました ~ただし離婚前提です~  作者: ボボブラ汁
第二章 解けた魔法と新たな呪い

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豚肉がはみ出ますわ!

「ただし、これだけはやめてくれるかい?」


 ヒューバート様が指し示したデザイン画には、ビスチェタイプの斬新なミニ丈ドレスが描かれておりました。


 上流階級の女性は脚を見せてはならない──それが常識でしたので、思わずわたくしも呆れてデザイナーを見てしまいます。


 ヒューバート様の腕や肩にベタベタ触れていた彼は、馬の尻尾を貼り付けたようなまつ毛をシパシパ瞬かせながら、わたくしにウィンクしました。


「あら、流行は自らが発信するものよ、レディ。あなたの短い髪型、とても素敵。女に生まれたからには、世の男性すべてを悩殺するつもりで生きなければ」


 ──ですが、このドレスは腿まで剥き出しですわよ!?


「布地が少ない分、仕立て代も割安よ?」


 熱心に売り込まれましたが、有り得ませんわ。わたくしが着れば、醜い肉の塊が、上からも下からもはみ出すでしょう。想像しただけで笑いが込み上げます。


 悩殺? その通りですわ。皆さん、こんな見苦しいものを見せられたら、脳が破壊されて死んでしまうかもしれません。


「絶対にダメだ」


 ヒューバート様の強い言葉に、わたくしも頷きました。


「これはわたくしには確かに無理ですわね。間違って屠畜場に送られそうですわ」


 ヒューバート様とデザイナーが目を剥きます。


「シンシア、君は何を言って──」

「わたくし、こちらのシンプルなAラインのドレスにいたします。宝石やレース飾りも控えめで、目立たないのではないかしら」


 特に深い意図はなかったのですが、ヒューバート様はわたくしが仕立て代を気にしたと思ったのでしょう。


「待ってくれ、値段のことは考えないでくれないか。今は君の持参金から借りるが、すぐ返す予定だから好きに選んで──いや、好きにとは言っても露出が激しいのはちょっと……僕は君の体の線がだね──」


 お肉がはみ出すところを彼も想像したのね。狼狽える姿が面白くて、わたくしは思わずクスクス笑ってしまいました。


 ヒューバート様はそんなわたくしの顔を見て、呆けたように黙り込んでしまいました。


 わたくしは慌てて笑顔を引っ込めます。醜い豚がブヒブヒ笑うなんて……見苦しかったかしら。


「あの……大丈夫ですわ。ベールで全部覆い隠してしまえばいいのです」

「そうか……そうだね」


 ホッとする彼が、なんだか可哀そうになってしまいました。期間限定とはいえ、もっと美しい花嫁なら恥をかかせずに済んだのに。


 準備費用のこともそう。本当は誰からも借りたくはないでしょうに。


 ベール売り場に行くと、身体全体を覆えそうな一番大きなベールは、手縫いのレースの一点物。ダイヤモンドがちりばめられ、かなり値が張ります。


 わたくしはヒューバート様が他のベールを見ている隙に、こっそりデザイナーへ伝えました。


「あの……これですが、彼には半額くらいの値を告げていただけますか? もちろん正規の金額はわたくしが支払いますので」


 デザイナーはまつ毛をシパシパさせながら困惑しています。


「かまいませんけどぉ、せっかくのドレス姿が……」

「醜い花嫁も、こんな素敵なレースで包んでしまえばごまかせますわ」

「……レディ、あなたどうしてそんなに自虐的なのかしら?」


 デザイナーに言われ、きょとんとしました。自虐?


 そうではなく、自分を客観的に見るスキルが身についただけですわ。勘違いしていた昔のわたくしとは違い、成長したのです。


 その頃、クライヴ兄様とミラベルは店内奥のアクセサリー売り場を物色していました。装飾品も全て一点物だそうです。


 ミラベルがわたくしを手招きし、満足そうに言いました。


「珍しく、クライヴと意見が一致したわ。あなたには真珠が一番似合うと思うの」

「そうだな。しかも大粒の本真珠だ。シンシアは鎖骨が目立つようになってしまったから、重厚感を持たせよう」


 わたくしは見るからに高価な真珠を、ヒューバート様が気づくより先にデザイナーへサッと渡しました。


「これをお願いします。わたくしのような醜女が身につけるのは、嫌かもしれませんが」


 耳元で囁くと、デザイナーはますます困惑した表情を浮かべました。


「ねぇ……あなた、鏡を見たことがあるの?」


 ああ、三年前にナディーン様からも言われた言葉ですわ。


「もちろん。洒落が利いていると思いません? 豚に真珠……ピッタリ」


 結局デザイナーは首を振り、小指を立てた手でそのケースをラッピングし始めました。


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