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【番外編完結】「醜い」と嫌われた豚令嬢、三年後に元婚約者に嫁ぐことになりました ~ただし離婚前提です~  作者: ボボブラ汁
第二章 解けた魔法と新たな呪い

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この豚めと話したい?


 夕食後、お父様は撞球(ビリヤード)室へ、クライヴ兄様とヒューバート様を誘いました。


 ヒューバート様は一瞬こちらを見ましたが、お兄様に引きずられるように連れていかれ、その後は長い間ビリヤードに興じておりました。


 忙しい日々が続いていたので、男三人でゆっくり過ごすのは久しぶりだったのでしょう。


 その頃、お母様とミラベルとわたくしも、パーラールームでお茶をしながらおしゃべりに花を咲かせておりました。


「まだまともに、ヒューバート兄様と話してなくない?」


 ミラベルがそう言いましたが、正直、何から切り出せばいいのやら……。


 出会い頭にはミラベルが居たので、ナディーン様の件を謝ることもできませんでした。本来なら真っ先にそうすべきだったのに……。


 わたくしが黙っていると、お母様が助け舟を出してくださいます。


「久しぶりだから恥ずかしいんじゃないかしら。シンシア……ほら、変わったでしょう? 若い子の三年は大きいものよ」


 確かに以前より変わりました。けれど──。


 わたくしは未だに見苦しいままの、自分の胸を見下ろしました。


 そこにあるのは、ヒューバート様がわたくしの顔から視線を下げた直後、片手の甲で口を押さえ露骨に目を背けた脂肪の塊です。


「まあ、たしかに。お兄様、話しにくくなったわね。前よりずっと気難しくなった」


 ミラベルの何気ない言葉に、胸がズキリと痛みました。


 その理由を、わたくしは知っているからです。

 

 彼の初恋を壊したのはわたくし。


 そして今度は、お金で釣って妻の座に収まろうとしている……なんと、俯瞰して見れば、とんでもない悪女ではございませんか!


 悪女というのは、ミラベルのような気の強い美女がなってこそ絵になるもの。


 わたくしのような醜女では救いようがないですわ……。ただの悪役です。


 己の立ち位置に震え上がりました。


 ヒューバート様の嫁が、醜い悪女だなんて……。


「ミラベル、あなたの結婚はどうするの?」


 お母様が、親友だった前侯爵夫人の娘に、もっともな問いを投げかけました。


 彼女は一気に暗い顔になります。

 

「うーん。お兄様ったら、羊も先祖代々の土地も頑なに売ろうとしないから、持参金は用意できないかも。でも持参金に釣られてくる人とは結婚したくないし、むしろ良かったわ」

「侯爵家の令嬢に失礼かもしれないけど、あなたは娘も同然なの。持参金はステイプルトン家が持ちます」


 お母様がそう言うと、ミラベルは宙を仰ぎ、溜息をつきました。


「お兄様が許さないわ」


 優しげな見た目によらず、頑固ですものね……。


「それに私も、夫人やシンシアのように仕事をしたいと思っているの」

「ええええ?」


 ミラベルの言葉に、わたくしは仰天しました。侯爵家の令嬢なのに働く!?


「時代はどんどん変わっているわ。貴族の女性の選択が結婚か家庭教師くらいだなんて、もう古いのよ。シンシアを見てカッコイイと思ったの」


 長引いた戦争の後、当主を失った貴族の家門も増えました。女子が相続できるよう議会で議論されているとも聞きますし、確かに世の中は変わりつつあります。


「いいわ、ミラベル。わたくしと共同経営者になりましょう! 農園経営をみっちり教えてあげる」

「わーい、嬉しいわ」


 二人で手を取り合ってはしゃいでいた折、パーラールームの外からヒューバート様のお声がいたしました。


「シンシア、少しいいかい」


 わたくしは思わず目を丸くいたしました。わたくしに話しかける声のトーンも、昔とはまるで違っております。


 昔は「おいちぃでちゅかー?」とか「キャワユイでちゅね~」と、一オクターブ高くなっていたのですが……。


 それが今では、背筋を這い上るような、低く落ち着いた声になっておりました。


 やはりあんな仕打ちをしたわたくしを、昔のように可愛いとは思えないのでしょう。


 わたくしが緊張しながら立ち上がると、彼は室内のお母様に恭しく頭を下げました。


「団らんのところ申し訳ございません、夫人。シンシアを少しお借りいたします」



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