わたくしも夜這いいたしますわ!
その日を境に、ヒューバート様とナディーン様は急速に距離を縮めていきました。
わたくしは、焦りを覚えました。
ナディーン様のことを「考える」とは、どういうことでしょうか?
もしかして──。
胃の腑がきゅうっと締めつけられました。不安と恐怖で。
居ても立ってもいられなくなったわたくしは、ふと閃いたのです。
そうだわ。ナディーン様と同じ策を取ればよいのよ!
すなわち──お色気作戦です。ヒューバート様に「女」を意識させ、籠絡すること……多少強引でも、もうそれしかございません!
だって、わたくしには時間が無いのですもの。
長期休暇の間しか二人を見張ることはできませんし、わたくしが侯爵領を離れれば、鮫令嬢のやりたい放題。
わたくしに不利になるのは目に見えております。
思い立ったら即実行。商機は直感に従えと、いつもお父様やお兄様が仰っています。
ここで動かずして、いつ動くというのです?
「ヒューバート様」
決意の夜、主寝室を訪れたわたくしを見て、ヒューバート様は不思議そうに首を傾げました。金の髪がさらりと揺れて、胸が苦しくなりました。愛しすぎて……。
ナディーン様より、わたくしの方がずっとずっとヒューバート様を好きなのに!
「こんな夜更けにどうしたの?」
彼は寝室のデスクに向かっておられました。執務室から持ち込んだ書類の処理でしょうか。
ちらりと覗くと、領地の収支報告書でした。赤いインクが目立ってきているように見えます。
やはり、お父様が危惧していた通り。
ヘビントン侯爵領でも、羊毛の売れ行きは思わしくないようです。
国から奨励され、半ば押し付けられていた牧畜かもしれませんが、そろそろ収入の柱を切り替えるべきではないでしょうか。
いっそ、羊ごと土地を売ってしまった方が──。
「眠れないのかい?」
ふんわりとした笑顔を向けられて、訳もなく涙腺が緩みました。
ああ……わたくし、やっぱり彼が好きですわ。
「分かった、お腹が空いたんだね?」
ヒューバート様ったら、わたくしがいつもお腹を空かせていると思っているのね。
わたくしは彼の前に仁王立ちしました。
「ヒューバート様」
そして、ガウンを脱ぎました。
二の腕が引っかかって、なかなか脱げませんでしたが──ナディーン様のように、床にはらりと落とします。
もちろん、下は……その、何も着けておりません。
「シンシア!」
ヒューバート様は、わたくしの裸体を凝視しました。ナディーン様のときは目を逸らしていたのに、今はギラギラと狼のような鋭い目で──。
ヒューバート様、わたくしもう十六ですのよ。
彼が立ち上がり、わたくしに近づいてきました。
ヒューバート様、わたくしをしっかり抱きしめて! そしてディープなチッスを!
「何をやっているんだ、お腹が冷えてしまうじゃないか!」
──ガウンを拾われ、お腹にぐるぐる巻きにされて、怒られてしまいました。
「さ、これでいい」
……オッパイは丸出しなのですが。
「寝つけなくても、一緒に眠るのは、さすがにもうやめたほうがいいよ、シンシア。ミラベルなんて、十歳くらいには『兄様キモい』って言って、寝てくれなくなったからね」
くすくす笑いながら、わたくしの頭を撫でてくれました。
「まったく。いつまでも甘ったれて……可愛いな、シンシアは。ぷくぷくした幼児体型は本当にキュートだけど、そろそろ僕にも見せちゃダメだぞ、こいつめ」




