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【番外編完結】「醜い」と嫌われた豚令嬢、三年後に元婚約者に嫁ぐことになりました ~ただし離婚前提です~  作者: ボボブラ汁
第一章 本物の婚約者になってみせますわ!

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無駄無駄無駄無駄無駄なのですわ!

 実は、わたくしのお父様は、何度かヒューバート様の領地経営をお手伝いしようと申し出ていました。


 赤字分の補填を提案したり、羊の処分を進言したり、処分後の耕作地に適した作物の種類を助言したり……。


 ヒューバート様はお父様の意見に耳を傾けてくださいますが、それを実行するかどうかは、あくまでご自身の判断次第。


 現段階では、ヘビントン侯爵家は年収十万パリッピの大金持ち。だからこそ、危機感が薄いのかもしれません。


 頑なに、羊を売りたがらないとのことでした。


 今は良くても、事業というものは常に先を見据えて動かねばなりません。


 ヒューバート様も、それは理解しておられるはず。でも、気さくで優しい彼にも貴族としての矜持があり、新興貴族の助言通りには動けなかったのかもしれません。


 お父様の言葉でも動かないのですから、わたくしが何を申し上げても無理でしょう。


 つまり、遠縁であるハートフィールド伯爵領への援助を止める手立ては、今のわたくしには無いということなのです。


 わたくしは、ナディーン様を警戒いたしました。


 施しとは、相手がそれを糧に立ち直る意志があってこそ意味があるもの。


 その気のない相手に情けをかけても、その場しのぎにしかなりません。


 継続して伯爵家を支え続けたとして、侯爵家が共倒れにならないと言い切れますの?


 ハートフィールド伯爵家は、ヒューバート様に何を返せるというのでしょう。


「ヒューバート様、それではわたくしの気が済みません。どうか、わたくしの身体をお好きになさってください」


 身体をお好きになさって、とはどういう意味でしょう? ワニ園のエサにでもしろと?


 ヒューバート様が断ったというのに、この鮫──ナディーン様はしつこいのです。


「今の世の中、純潔でなければ結婚できないということはございません。ですから、わたくしを──」


 そう言って、再びガウンをハラリと落としました。ヒューバート様は慌てて目を逸らしました。


 男性は女性の裸を見ると狂喜乱舞するのだと、学院の令嬢たちから聞いたことがございます。


 それで誘惑し、メロメロになった相手とドッキングすれば、子供ができるのだとか。


 まさに、夜這いというやつですわね! ナディーン様は、それが目的で訪れたに違いございませんっ。


 わたくしは確かに()の婚約者です。ですが彼女はそのことを知らないのですから、婚約者からヒューバート様を略奪しようとしている泥棒猫なるものに他なりません!


 わたくしは怒り狂って、彼の寝室に飛び込もうとしました。わたくしの未来の夫を誘惑するなんて!


 ところが──わたくしがそうするより先に、またしてもヒューバート様がキッパリ断ってくださいました。


「女性の初めては、大事にしなければならない」


 ほーら、ごらんなさい、ナディーン様。彼は女嫌いなのです。色仕掛けで誘惑するなんて逆効果なのに、愚かな人!


「で、ですがわたくし、覚悟を持って来たのです。それに……」


 ナディーン様はほんのり頬を染めました。まつ毛に涙の粒が光っています。


「引っ込みがつきません。女性に恥をかかせるのはおやめください。確かにわたくしの身は、満足な手入れも出来ず、ドレスもアクセサリーも持っておりません。ですが、それほど醜いでしょうか?」

「い、いやいや、とんでもないっ、そんなことはない。君はとても美しい」


 ヒューバート様が、目に見えて狼狽えているのが分かりました。


「でしたら、わたくしをご覧になって! 醜いと思わないのでしたら」


 わたくしはナディーン様の狡猾さに、腹が立ちました。脅しではありませんの!? 自分から脱いでおいて、彼に罪悪感を抱かせるなんて!


 でも大丈夫。ヒューバート様は女嫌いですからね! 女性の裸になんて、これっぽっちも興味ございませんっ!


 ──そう思っていたのに。


 ナディーン様に気を遣ったのか、しばらくしてヒューバート様は、おそるおそる彼女の裸に目をやりました。


 わたくしは、ハッとしました。


 ヒューバート様のその瞳が、熱く潤んでいるのを見てしまったからです。


「あの……美しいです」


 彼は小さくそう伝えました。わたくしは息を呑みました。たじたじしつつも、その声には素直な賛美が込められていたからです。


「ほんとうに……とても美しい」


 そう言った後、ヒューバート様はしばらく沈黙しておりましたが、やがて低い声でおっしゃいました。


「もしどうしてもと言うなら、僕は責任を取らなければならないんだ。ナディーン嬢」


 それを聞いたわたくしは、嫌な予感がいたしました。


「恥をかかせるわけではない。必要なら、僕にも準備がある。考えさせてください。今日は客室に帰っていただけませんか?」



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