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【番外編完結】「醜い」と嫌われた豚令嬢、三年後に元婚約者に嫁ぐことになりました ~ただし離婚前提です~  作者: ボボブラ汁
第一章 本物の婚約者になってみせますわ!

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邪魔者はわたくしですの?

 ヒューバート様は、いつものヒューバート様でいらっしゃいました。


 だって、ご自分を狙う女性が苦手なだけで、人嫌いなわけではございませんもの。

 むしろ、人当たりの良い親切な方なので、この対応は極めて自然なものです。


 それなのに、モヤモヤしてしまうわたくしは、なんと狭量なのでしょう。


「お父様ったら、ずっと酔っぱらっていて……何をしにここへ来たのやら。わたくし、恥ずかしいわ」

「ナディーン嬢、君がしっかりしているから大丈夫だよ。僕は尊敬している」


 ヒューバート様は、慰めるために──あくまでも慰めるために!──ナディーン様をそっと抱きしめたのです。


 その瞬間にナディーン様の頬が薔薇色に染まったのを見て、わたくしの胸はさらにモヤッといたしました。


 もうっ……ヒューバート様は、ご自分の無自覚な行動が周囲に与える影響を、まるで分かっておられません。


 ナディーン様は、わたくしの存在を忘れているかのようでした。

 もしかすると、屋敷に仕える使用人の一人だとでも思っていたのかもしれません。


 わたくしは、二人の世界にならないよう、強引に話に割り込みました。


「ハ、ハートフィールド伯爵領の一部が、北国エロストに割譲されたという記事を、新聞で拝見しましたわ」


 ええ、もちろん同情もしております。ある日を境に、自分の領地が減るのですから。


 ところが、ナディーン様は目を丸くなさいました。

 なんと申しましょうか……わたくしが人間の言葉を話すとは思っていなかった、くらいの驚きようです。


「いま、人語を発しましたわ!?」


 本気でそう思っていたようですわね!


 ヒューバート様は首を傾げました。


「何がですか?」

「コンニャクシャとやらが」

「婚約者です、ナディーン嬢」


 ヒューバート様が訂正なさいました。


「れっきとした人ですよ」


 婚約者の紹介に「人ですよ」と、説明が必要だとは思いませんでした。ヒューバート様も、言ってから気づかれたのか、妙な顔をしておられました。


 わたくし、どうにもこのナディーン様が気に入りません。


 どうやら、あちらも同じだったようです。


 わたくしたちの間に、火花が散りました。


 でも、それも一瞬。ヒューバート様の遠縁ということですので、仕方なく愛想を振りまくしかございません。


「どれくらい、このお屋敷にご滞在の予定ですか?」


 少々刺々しい口調になってしまったかもしれません。ナディーン様が唇を噛み、俯いてしまわれたからです。


「わたくしは……」


 ヒューバート様がわたくしに目配せし「静かに」と合図なさいました。


「いつまでもいてくれて構わないよ。お父上は、アルコール依存症専門医に診せよう」

「お母様が亡くなってから、とくに酒量が増えて……。お兄様は跡継ぎのくせにギャンブルに走ってしまい、わたくし、どうしたらよいか分かりません」


 しゃくりあげて泣き出してしまったナディーン様。わたくしも、どうしてよいか分からず、オロオロしてしまいました。


 代々貴族として生まれた者は、働くことを軽蔑する傾向がございます。


 ですから地代収入が減っても現実を見ず、ナディーン様のお父様やお兄様のように、お酒や薬物、ギャンブルに逃げる方が増えてきているようです。


 まったく、国営カジノは失策でしたわね!


 新興貴族は違います。わたくしの家も一時期は困窮し、死ぬような思いをいたしましたが、どんな困難にも打開策を見つけ出す強さがございました。


 お父様は「転がっている儲け話に目がない性分」とおっしゃり、お母様はその補佐を見事にこなされました。クライヴ兄様も学生の頃から起業し、経営の幅を広げております。


 しかしながら、ナディーン様のお父上は根っからの貴族。領地のことは家令に任せきりで、自ら動くつもりはないのでしょう。


「あの……申し訳ございませんでした。わたくしも、ナディーン様が滞在されることに異論はございません。だって、ヒューバート様のご親戚ですもの」


 おずおずと申し上げましたが、ナディーン様は、わたくしの意見など初めから気にしていないようでした。


「ナディーン嬢、どうかあまり気に病まないで」

「ですが、わたくし……父を見ているのが辛くて──」


 それ以上、二人の会話には入れませんでした。


 わたくし、まるで邪魔者のような気分になったのでございます。



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