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第68話 最悪のタイミングで


 魔王城への道中で何度も魔物の襲撃を受けたが、落ち着きを取り戻したユフィーアとヘステリアの破邪の力の前に、特に苦戦をする事もなく進む事ができた。


 魔界にやってきてから三日後、俺達の目の前に猛毒の沼地に囲まれた漆黒の城が姿を現した。


 魔王城エクセレントキャスルだ。


「ついにここまでやってきましたね」


「ああ、魔王さえ倒せばすべてが終わるはずだ」


「シンディア、どうか無事でいてくれよ」


「神よ、どうか姫様にご加護を……」


「私の魔力、魔王にどれだけ通用するか試させてもらおう」


「この城のお宝は全部絶対あたしがいただくよ」


 最終決戦前に仲間達が順番に思い思いの決意を口にするのはゲームではよくあるシーンであるが、宝探し目的でここまでやってきたヴェパルさんだけは言ってる事が皆と違う。


 原作ファンタシー・オブ・ザ・ウィンドでは魔王城に入るとアクションパズルゲームが始まる。

 内部は10×10の合計100の部屋に別れており、黄、赤、青、緑、紫等に色分けをされた鍵を集めて対応する色の扉を開けながら先へ進んでいく。


 そしてその奥深くの玉座の間で待ち構えているのが本作のラスボスである魔王イブリースだ。


 本来ならば全員一丸となってそこを目指すのだが、ひとりヴェパルさんだけはここにやってきた目的が魔王の討伐ではなくお宝探しなのでここで別行動をとる事になった。


 俺は原作ファンタシー・オブ・ザ・ウィンドで魔王城の地図は完璧に把握しているので、餞別に手書きの地図を渡す。


 どうしてそんなものを持っているのかという質問に対しては、以前討伐した魔族から入手したという事にしておいた。


「マール、いつもすまないね。お宝を手に入れたら直ぐに追いかけるよ」


「そんな事よりこの城の中には強力な魔物がたくさん潜んでいますので危なくなったら逃げて下さいよ」


「分かったよ。じゃああんた達の健闘を祈ってるよ」


 ヴェパルさんはこちらを振り向きながら手を振り、宝物庫の方へ走っていった。


「さて、じゃあ俺達は玉座の間を目指しましょうか」


 と言ってもこの巨大迷路となっている魔王城をいちいち馬鹿正直に正面から攻略していくつもりはない。

 俺は壁すり抜けのバグ技をアレス殿下達にも伝授し、途中にある鍵が掛かった扉や仕掛けを全て無視して一直線に玉座の間へ向かう事にした。


 普段盾を装備する事がないヘステリアとヘルメスはなかなかコツが掴めずに苦労していたが、先に習得できていたアレス殿下やテーセウスの指導もあり、小一時間程で全員無事に使いこなせるようになった。


 壁をすり抜けた先に魔物が待ち構えているかもしれないので、まずはユフィーアが壁すり抜けのバグ技を使用して隣の部屋へ行き、安全が確認でき次第後の者が続く。


 これを繰り返してあっという間に玉座の間の手前までやってきた。


「皆、魔王イブリースはこの壁の向こうにいる。準備はいいか?」


「はい、マール様。いつでも行けます!」


「私達も大丈夫だ。一刻も早くシンディアを救い出そう」


「承知しました殿下。それじゃあ今まで通りユフィーアが最初に壁を抜けて、次に俺が行きます。アレス殿下達はその後に続いて下さい」


「了解した」


「それではマール様、行きます!」


 この先に魔王がいるというのにユフィーアは一切の躊躇なく壁をすり抜ける。


 ファンタシー・オブ・ザ・ウィンドの平均クリアレベルは150とはいえ、それは四人以上のパーティを組んで戦った時の話だ。

 今のユフィーアのレベルは165だが、一人で魔王と戦うのは厳しいだろう。


 急いで俺も後に続かなくては。

 そして魔王にとっておきのバグ技をお見舞いしてやる。


 俺は盾を構えてジャンプし、壁にぶつかる直前に盾を外す。


 ガンッ。


「痛っ」


 俺の身体は壁をすり抜けず、跳ね返された。


 なんてことだ、こんな時に失敗してしまうとは。

 緊張してるからかな?


 俺は再び壁のすり抜けバグを発動させる為に盾を構えてジャンプし、壁にぶつかる直前に盾を外す。


 ガンッ。


 またも俺の身体は壁に跳ね返された。


「マール、調子が悪いのか? ならば私が先に行くぞ」


 アレス殿下が俺に代わって壁のすり抜けバグを行う。


 ガンッ。


「くっ、私とした事が情けない。どうやら私も緊張しているようだ」


 アレス殿下も人の子だ。

 この壁の向こうに魔王がいるとなれば平静を失うのも当然だろう。

 なんの躊躇もなく飛び込めるユフィーアがおかしいのだ。


 ピロリン、ピロリン、ピロリン。


 その時、俺の魔法の袋の中から聞き慣れない電子音が聞こえてきた。


「マールさん、これは何の音でしょう?」


 ヘステリアが問いかけるが、俺にも分からない。

 俺は魔法の袋の中に手を入れ、音がしているそれ──モバイルクォーツ──を取り出した。


「なんだこの音は? 今まで聞いた事がないぞ。何かを受信しているようだけど」


 俺はモバイルクォーツに表示されている文字を読み上げる。


「不具合修正のお知らせ。いつも『ファンタシー・オブ・ザ・ウィンド』をお楽しみいただき誠にありがとうございます。本日のアップデートにて、先般よりお客様よりご報告いただいておりますいくつかの不具合を修正しました」


 バグを修正?

 このタイミングで?

 待てよ、という事はさっき壁のすり抜けに失敗したのはバグが修正されたせい?


「マールさん、これはどういう意味なんでしょう」


「ヘステリア、今はそれよりも早くユフィーアの救援に向かわなければ」


 アレス殿下は再び壁をすり抜けようとして盾を構えるが、俺はそれを止める。


「ダメですアレス殿下、もう壁のすり抜けはできません!」


「何だと、それはどういう事だ?」


 俺は少し考え、つじつまを合わせる為にこう説明する。


「魔王の魔力により壁の上からさらに結界を張られました。もう壁をすり抜ける事はできません」


「それではユフィーアはどうなる。彼女は今この壁の向こうで一人で魔王と戦っているんだぞ!?」




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