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第38話 頂上決戦

 ユフィーアの剣がリリエーンの額を目掛けて振り下ろされる。

 このタイミングならば回避は間に合わない。

 それに剣が電気を纏っている以上、リリエーンが剣を受け止めれば感電する。


 リリエーンがどう対応するかに観客達の注目が集まる。


 リリエーンが選んだのは、咄嗟に手に持っていた斧を捨て、両手でユフィーアの剣を真剣白刃取りで受け止める事だった。


 それは誰の目にも苦し紛れの行動に見えた。


 これでリリエーンは感電し、身体が痺れて動けない間にユフィーアの追撃が決まればユフィーアの判定勝ちだ。


 ──と誰もが思っていた。


 リリエーンは自分の身体に電気が流れる直前に呪文を高速詠唱する。


「雷魔術、カタストロフワット!」


 両者の間からスパーク音が響き、閃光が走る。


「うわっ、眩しい!」

「何の光だ!?」


 観客達の目が眩み、一瞬何も見えなくなる。


「二人はどうなった!?」


 視界が戻ると、ユフィーアとリリエーンが闘技場の中央で立っているのが見えた。

 どちらも無事なようだ。

 しかし電気を帯びて輝いていたユフィーアの剣は光を失い、元の状態に戻っている。


「これは……解説のマールさん、一体何が起きたんでしょうか?」


「そうですね、原理を説明すると長くなりますが、とにかくお互いから発せられた電力が同等だった為、打ち消し合ってプラマイゼロになったという訳です」


「なるほど、そうするとリリエーン選手には電気タイプの魔法剣は効果がないという事ですね」


「はい。でもユフィーア選手はありとあらゆる系統の魔法を使いこなします。リリエーン選手がどこまで対応できるかに注目ですね」


 俺はリリエーンのステータスは大体把握しているが、元々持っている個人スキルや魔術の情報はない。

 先程放った雷魔術カタストロフワットについても俺は存在自体知らなかった。

 まだまだ俺の知らない古代の魔術があるんだろうな。



 次に動いたのはリリエーンだ。

 先程地面に投げ捨てた斧を拾い上げると、頭上に放り投げて呪文を詠唱する。


「炎魔術、メギドプロミネンス!」


 その瞬間、斧が炎に包まれる。

 ユフィーアが魔法剣を使うのならば、リリエーンは魔術斧を使うようだ。


「驚くのはここからじゃ。操魔術、マニピュレート!」


 リリエーンが続けて謎の呪文を詠唱すると、燃え盛る斧は空中で一時停止した後、高速で回転しながらユフィーアを目掛けて飛んでいく。


「さあこれを避けてみせよ!」


「くっ」


 ユフィーアは直前で身をかわすが、燃える斧はものすごい熱を放射している。

 触れてもいないのにユフィーアの服の袖がちりちりと黒く焦げる。


 燃える斧は空中で方向を変え、更にユフィーアに襲い掛かる。


「そういう技なら対処は簡単です!」


 ユフィーアは飛翔する斧を背に、リリエーン向けて突進する。

 斧はユフィーアを追いかけるように飛んでいく。


「ふん、大方わし自身に斧をぶつけようという魂胆じゃろうが、そんな古典的な手に引っ掛かるわしではないぞ」


「古代魔族に古典的といわれる程古くからある作戦でしたか。でも、今のあなたは無防備ですよ!」


 今のリリエーンは武器を持っていない。

 ユフィーアは丸腰のリリエーンに向かって剣を螺旋状に回転させながら突き刺す。


「これなら白刃取りで受け止められませんよね! 秘技、スパイラルブラッド!」


「甘い!」


 刹那、ユフィーアは背中に熱を帯びた衝撃を受けて転倒する。


「なっ……一体何が!?」


 ユフィーアは一旦リリエーンから距離を取って後ろを振り向くと、時間差で燃える斧が飛翔してきたのでそれを避ける。



「解説のマールさん、今のは何でしょうか?」


「はい、あの燃える斧からまるで太陽風のような熱線が放たれ、ユフィーア選手の背中を焼きました」


「そうすると、ユフィーア選手は距離を取っていてもうかつにあの斧に背を向けられないという事ですか」


「そうですね。これでリリエーン選手が有利な展開になりましたね」


 燃える斧はユフィーアの周囲を飛び回り、ユフィーア目掛けて熱線を連射する。

 その動きはまるでロボットアニメに出てくる遠隔型の兵器のようだ。


 防戦一方のユフィーアだが、冷静に反撃のチャンスを狙っている。


「まずあの斧を何とかしないといけませんね……水魔法、ウォーターピラー!」


 ユフィーアの周囲に巨大な水柱が立ち、斧を包み込む。

 しかし、燃える斧の凄まじい熱気により水柱は一瞬で蒸発し、コロッセオの天井付近に雲が出来上がった。

 その雲は空気に冷やされて液体に戻り、まるでコロッセオ内に雨が降っているかのように降り注ぐ。


 それを見てリリエーンは余裕の笑みを浮かべる。


「その程度の水ではわしの炎を消す事は出来んぞ」


「……ッ! 一度でダメなら何度でも! ウォーターピラー!」


 ユフィーアは何度も繰り返し水柱を立ち上らせるが、その度に燃える斧の熱量によって蒸発し、天井付近の雲が大きくなるばかりだ。


「解説のマールさん、これはユフィーア選手はもう打つ手なしといったところでしょうか」


「いえ、彼女達の足下をよく見て下さい」


「足下ですか? ……あっ」


 闘技場内に降り注ぐ雨によってできた水たまりは少しずつ大きくなり、やがて闘技場内が大きな沼のようになった。


「ぐぬぬ、お主これを狙っていたのか!?」


「そうです、私の本当の狙いは、この闘技場内を水で沈める事です。ウォーターピラー!」


 ユフィーアはそれでも水柱を出し続ける。


「ええい、これだけ足元がぬかるんでいればお主も足を取られて動けまい!」


 リリエーンは燃える斧の軌道を操り、ユフィーアにぶつけようとする。


 しかし次の瞬間ユフィーアの姿が闘技場から消えた。


「なんじゃと? あやつはいったいどこへ……」




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