表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紗奈日記  作者: トモ
6/11

12がつ11にち 曇り (憑き物落としとかそんな日) その1

12がつ11にち 曇り (憑き物落としとかそんな日) その1



『人はパンのみにて生きるにあらず』という言葉を、文字通り実感している今日この頃。

ケチャップ・マヨネーズ・塩・砂糖をローテーションさせても、パンの耳で空腹を凌ぐのは流石に飽きた。

お肉食べたいよぅ。

働きたくないでござるが、そろそろ何か仕事を探さねばなるまい。

そんな考えを見透かしたかのようなタイミングでの来訪だった。


「佐奈姉ちゃん、おひさ~」

「久しぶり、チセ。とりあえず、上がって」

「お邪魔します」

うわぁ、寒いと呟きながらチセが炬燵に入り込む。

確かに外は風も強く、冷気が肌に刺さるようだ。

まぁこの部屋の中も暖房設備が炬燵だけだから、暖かいとは言い難いが。

「珈琲で良い?インスタントだけど」

「うん、ミルクと砂糖大盛りで」

「まだ、ブラックが飲めないか。子供だねぇ」

「お姉ちゃん、知ってる?舌の味覚センサーは年を取るとドンドン減少して、大人は子供の3分の1程度になるんだよ。苦味が分かる大人って結局、舌が劣化して味に鈍感になっているだけ」

相変わらず、口が減らない。

いったい、誰に似たのだか。


 夕食は、チセが持ってきたお肉で、焼肉カーニバルでフェスティバルでイヤッホーとなった。

「それで、電話で言っていた相談事って何」

パクつきながら聞いてみる。

何これ、めちゃめちゃ美味しい。

やばい。

久々の焼肉ということもあり、泣きそうになる。

「まぁまぁ、それはもうちょい後で。そんな事よりお姉ちゃんさぁ」

「ん?」

「いくら一人暮らしで部屋着とはいえ……高校時代のジャージと半纏ってどうなのよ」

「うぐっ。いいじゃない、楽なんだし」

「もう少しオシャレしなよ。素材は良いんだからさ」

「そりゃ、ファッションモデルの目から見たらダサいかもしれないけど」

「いやいや。職業関係なく、誰が見ても同じ評価だから」

くそぅ、言い返せないぞ。

服よりも、食費優先だからねぇ。

逆にチセは昔から服好きで、そのままそこそこ売れてるモデルにまでなっちゃったから。

「で、何かな。今日はわざわざ、アタシをいじめにきたのかな。泣くぞ」

「そんなに暇でもないし、性格も悪くないから。お姉ちゃんの中の私のキャラはどうなってるの」

「可愛い妹」

「ふぇっ………あ、ありがと」

この子、ちょろいな。


 こんなに充実した満腹感は何時以来だろう。

このまま幸福感にだけ浸っていたいとも思うが、そうもいくまい。

「そろそろ相談事ってのを聞きたいんだけど」

厄介な事じゃなきゃいいなぁ。

「先に言っておくけど、お金は無いよ」

「そんな相談はお姉ちゃんにしないよ。私の方が数倍は稼いでいるし」

…うん。

殆ど働いてないから、本当はチセは数十倍は稼いでるけど。

それ言うとまた説教が始まりそうだから黙っていよう。

「海外のイベントが一段落したから、暫く休みをもらって日本に帰ってきたんだけどね。暇だから近所の子の家庭教師みたいなことやっているのだけど」

仕事を休んで暇だから、仕事をしている?

何を言っているのか分からない。

これがワーカーホリックというやつなのだろうか。

「大学には、行ってないの?」

「自主休学中だね。仕事の方が重要だから。もうすぐ大学も休みに入ってしまうから、今行ってもあまり意味ないし」

「ふーん」

「まぁ、そんなこんなで近所の子達に勉強とか教えているのだけど。そのうちの一人、小学4年生の女の子が問題を起こしてしまって」

「何かやらかしたの?」

「真嶋宏美ちゃんっていうんだけど。学校で先生を殴って、今は休学中」

「なかなかバイオレンスな子だね」

チセは小さく首を振った。

「少しおとなしめな、優しい子だよ」

「ふーん。でもまぁ、どうしても許せないような事を言われたとかではないの」

それなら教育委員会やスクールカウンセラーの仕事だ。

助けてあげたいけど、アタシは門外漢だよなぁ。

「違うの。彼女はそういう不満があったとかではなく、急にオカシくなってしまったらしいのよ」

「突然?」

「うん。コックリさんをやっていて、狐に取り付かれたのだとか」

あー。

やっと、アタシに話が回ってきたのかが分かってきたかも。

「ちょ、ちょっと待って。アタシ、憑き物落としなんてやったことないよ」

「えー、でもお姉ちゃんこういう変な事は得意分野でしょ」

なんか誤解をしてらっしゃる。

「それに巫女さんをやってたし」

正月にバイトでね。

「いやいや。アタシはフツーのフリーターだから。それこそ、チセの中のアタシのキャラはどうなってるのよ」

「頼れるお姉ちゃん」

「ふぇっ………あ、ありがと」

いや、でも流石に無茶な要求でしょ。


「・・・話は変わるけど、夕食のお肉美味しかった?」

「え、あ、うん。ほんとに唐突に変わったね。美味しかったよ。結構良いお肉だったんじゃない」

「100g、4000円」

「えっ」

「100g、4000円」

「えーっ」

アタシは普段、100g100円のお肉を買うのすら躊躇っているのに。

「食べたよね」

「う、うん」

「イッパイ食べたよね」

「うぐっ」

「さて、話は戻るけど。お姉ちゃんに頼みごとがあるのだけど」

「わ、分かったわよ。やってみるよ」

「さすがお姉ちゃん、頼りになる」

はぁ。


「とりあえず、色々準備が必要なんだけど」

「何が要るの」

スマホを取り出し、チセが聞いてきた。

メモを取るのかなと思ったら、アタシが品物を言うたびに様々なところに電話をかけてる。

「オッケー。明後日には、必要な物全部揃うよ」

「は、早いね」

こんなに素早く手配するとは。

チセの顔の広さは昔から異常だったけど、さらに拡張しているのか。

知人友人が数千人は居ると言っていたけど、あながち冗談ではなさそうだ。

このリア充め。

コチラとしては、もっと準備期間をとってくれた方が良いんだけど。

「では、明後日の夜に宏美ちゃんちに行くとして」

少し下準備もするか。

「チセは、真嶋さんの両親とは仲良いの」

「んー。一緒に食事とかはしてるよ」

「じゃあ、チセは明日真嶋さん家に行って、両親にアタシの事を信頼できる人物だと伝えておいて。大げさなくらい期待値アゲアゲで」

「おー、自信有り」

「いや、ないよ」

「え。それじゃ失敗した時に、紹介した私に評価まで下がっちゃうんじゃ」

「一蓮托生だね。それは、仕方がない。ただ信用されていたほうが成功率が上がるからね」

「分かったよ」

「明日は両親だけで、宏美ちゃんには会う必要はないからお願いね」


 チセが帰った後、食事の片付けをした。

肉は小さい欠片まで、残らず取っておかないと勿体無いな。

しっかし、憑き物落としか。

はてさて、どうなることやら。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ