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【完結】妹として迎えた婚外子が、私から夫まで奪いました  作者: モーヒアス


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番外編 リリアのその後 第4話「待ちに待ったお茶会」

本日は2話更新です!

 リリアが主催する茶会の日がやってきた。

 朝から屋敷は慌ただしかった。

 料理人たちは朝から菓子を焼き、使用人たちは庭園の飾り付けに追われている。

 庭には色とりどりの花が飾られ、テーブルには高価な銀器が並べられていた。

 そして。

 その中心に立つリリアは――。


「どう? 似合っているでしょう?」


 淡い桃色のドレス。

 襟元には大粒の宝石。

 袖口には幾重にも重ねられたレース。

 髪には先日購入した大きな髪飾り。

 首元には宝石の首飾り。

 耳にも指にも腕にも、これでもかというほど装飾品が輝いている。


 まるで宝石店をそのまま身にまとったような姿だった。


 侍女は、なんとも言えない表情で答える。


「……と、とても、華やかでございます」

「でしょう?」


 リリアは満足そうに笑った。


「今日は私が主役なんですもの。これくらい華やかでなくちゃ」

「ですが奥様……」

「何?」

「本日の茶会は、あくまでご婦人方との親睦を目的としたものですので……」

「分かっているわ」


 リリアは手をひらひらと振った。


「だからこそよ」

「……?」

「私が侯爵夫人に相応しいというところを見せるの」


 リリアはそう言いながら鏡の前まで移動し、自分を見つめる。


「お姉様とは違うって、皆に分からせるのよ」


 侍女は何も言わなかった。

 ただ。

 以前のエレノアが茶会へ出席する時を思い出していた。

 エレノアはその日の顔ぶれや季節、会場に合わせて服を選んでいた。

 派手すぎず。

 地味すぎず。

 相手を立てることを忘れない。

 そして何より。


 自分が一番目立とうとはしなかった。

 けれど。

 リリアには、それが理解できなかったのだろう。


「エレノアお姉様は、いつも地味だったもの」


 リリアは楽しそうに笑う。


「今日は私が皆の視線を独り占めするわ」


 そう言って、庭園へ向かった。


 ――そして。


 その瞬間。


 集まった夫人たちの視線が、一斉にリリアへ集まった。


「……」


「……」


「……まあ」


「……すごいですわね」


 リリアは笑顔になった。


「ふふっ」


 やっぱり。

 みんな私を見ている。

 そう思った。

 だが。

 集まった夫人たちの表情は、憧れではなかった。


 困惑。


 呆れ。


 そして、わずかな引きつり。


 それを。

 リリアだけが理解していなかった。


「本日はお越しいただいてありがとうございます」


 リリアは満面の笑みで頭を下げる。


「どうぞ楽しんでいってくださいませ」

「ええ……ありがとうございます」

「……まあ、素敵なお召し物ですこと」


 一人の夫人が、どうにか言葉を選んだ。


「でしょう?」


 リリアは嬉しそうに胸を張る。


「このドレス、特注なんですの」

「……まあ」

「レースも特別に作らせたんです」

「まあ……」

「宝石も全部、新しく揃えましたのよ」


 夫人の笑顔が固まる。


「……全部?」

「ええ」


 リリアは誇らしげに頷いた。


「侯爵夫人ですもの。これくらい当然でしょう?」

「……そう、ですわね」


 誰も否定できなかった。

 だが。

 その後ろでは。


「……全部新調したって」

「今回だけで、いったいいくら使ったのかしら」

「アレクシス様も大変でしょうね」


 小声が飛び交っていた。

 リリアは、それにも気付かなかった。


「では、こちらへどうぞ」


 テーブルへ案内する。

 そこには大量の菓子が並んでいた。

 見た目だけでも一目で分かる。

 明らかに多すぎる。


「まあ……随分たくさん」

「ええ!」


 リリアは嬉しそうに答えた。


「皆様に喜んでいただきたくて!」

「……」

「一番高級な材料を使わせましたの」

「そうですか……」


 夫人たちは席につく。

 そして。

 茶会が始まった。


「ところで、最近の領地では――」


 一人の夫人が話題を出した。


「あら」


 リリアが口を挟む。


「そんな難しい話はやめません?」

「……」

「せっかくのお茶会なんですもの。もっと楽しい話をしましょうよ」

「……では、最近流行している店のお話などは?」

「そういう話なら大歓迎ですわ!」


 リリアは笑顔になる。


「私、先日とても素敵なお店を見つけましたの」

「まあ、どちらのお店ですの?」

「王都の南通りにあるドレス店ですわ」

「ああ……」


 一人の夫人が微妙な顔をした。


「あの最近勢いのある『ターイ・コーモチ』ですか」

「まあ!ご存じなの?」

「ええ……まあ」


 リリアは得意げに続ける。


「そこの店主が私を見て、『これほど侯爵夫人らしい方は見たことがない』と言ってくださって」

「……」

「『これからは社交界の中心になりますね』とも」


 夫人たちの視線が交わる。


「そう……ですか」

「ええ!」


 リリアは嬉しそうに頷いた。


「ですから、これからはあのお店を贔屓にしようと思っていますの」

「……なるほど」


 誰も何も言わない。

 だが。

 別の夫人が、ぽつりと呟いた。


「随分とおだてられたのですね」

「え?」

「いえ。なんでもありません」


 リリアは首を傾げた。


「変な方ね」


 そして。

 次の瞬間だった。


「ところで皆様、エレノアお姉様とは仲が良かったのでしょう?」


 空気が止まった。


「……」

「……」

「どうして、そんなことを?」


 夫人の一人が尋ねる。


「だって、皆様お姉様のことを知っているのでしょう?」


 リリアは笑う。


「長く付き合っていた方も多いでしょうし」

「……ええ」

「お姉様って、そんなに社交がお上手でした?」


 誰も答えない。

 リリアは不思議そうに首を傾げる。


「私はあまりそう思わなかったんです」

「……」

「いつも地味な服を着て、領地だの使用人だのそんな話ばかりしていて」


 一人の夫人がカップを置いた。

 小さな音が響く。


「エレノア様は、そういう方でしたから」

「でしょう?」


 リリアは嬉しそうに笑う。


「だから私は、もっと華やかな侯爵夫人になろうと思っていますの」

「……」

「社交界では、やっぱり目立つことが大切でしょう?」

「いいえ」


 突然。

 一人の夫人が答えた。


「……え?」

「失礼いたしました」


 夫人は静かに続ける。


「ですが、社交とは自分が目立つためだけのものではございませんから」

「もちろん分かっていますわ」


 リリアは笑った。


「でも、誰にも覚えてもらえなければ意味がありませんもの」

「……」

「今日だって、皆様が私を見てくださっているでしょう?」


 リリアは満足そうに周囲を見る。


「これで私は、侯爵夫人として認めてもらえたと思いますわ」

「「「…………」」」


 誰も答えなかった。

 その沈黙を。

 リリアは照れているのだと勘違いした。


「うふふ」


 さらに機嫌が良くなる。

 その後も。


「このお菓子、とても高級なんですよ」

「この髪飾りは最近買ったばかりですの」

「このドレスも特注です」

「侯爵家ですもの、このくらいは――」


 リリアは次々と自慢を続けた。

 話題のほとんどが、自分の持ち物だった。

 そして。

 ある夫人が、とうとう席を立った。


「申し訳ありません。少し気分が優れないので、今日はこれで失礼いたします」

「まあ……もうお帰りになるの?」

「ええ」

「これからが良いところですのに」

「申し訳ありません」


 夫人が去る。

 それを皮切りに。


「私もそろそろ……」

「私も失礼いたしますわ」

「そろそろ主人が帰ってきますので」


 次々と夫人たちが立ち上がっていく。


「え?」


 リリアは目を丸くした。


「ま、まだお茶も残っていますわよ?」

「十分いただきましたので」

「そうですか……」


 笑顔を作る。

 けれど。

 誰も残らなかった。

 最後の一人が頭を下げる。


「本日はお招きいただき、ありがとうございました」

「ええ……」


 門が閉まる。

 庭園に静寂が戻った。

 リリアは一人、テーブルの前に立っていた。


「……」


 大量に用意した菓子。


 華やかに飾られた庭。


 高価な茶器。


 そして。


 誰もいなくなった席。


「…………なんでよ?」


 リリアは呟いた。


「どうして…………?」


 侍女は何も答えない。


「私、何かした?」

「……」

「こんなにお金をかけて」


 リリアの声が震える。


「こんなに綺麗にして」


 自分のドレスを見る。


「こんなに皆を呼んで……」


 それなのに。

 誰も自分を褒めてくれなかった。

 それどころか。

 逃げるように帰っていった。


「…………おかしい。おかしいわ」


 拳を握る。


「絶対におかしい…………」




 その日の夜。

 自室へ戻ったリリアは、鏡の前に立った。


「……私が悪いわけじゃない」


 鏡の中の自分を睨む。


「そうよ」


 言い聞かせるように呟く。


「私が侯爵夫人だから、みんな嫉妬したのよ」


 そうに違いない。

 自分が美しくなったから。

 豪華なドレスを着たから。

 侯爵夫人として成功しているから。

 だから皆、面白くなかったのだ。


「……そうよ。きっとそう」


 だが。

 その時。

 ふと。

 クラリス伯爵夫人の言葉が蘇った。


『エレノア様は、商人を身分で見下したりはしませんでした』


「……」


 リリアは首を振る。


「違う」


『どうして、あなたが今ここで侯爵夫人として座っているのか』


「違うわ」


『あなたが、どうしてエレノア様とあれほど違うのか。少し分かった気がしただけです』


「違う!」


 リリアは鏡台の上の髪飾りを乱暴に掴んだ。


「私は間違ってなんかいない!」


 髪飾りが机に落ちる。


「私は侯爵夫人なのよ!」


 鏡の中の自分を睨む。


「お姉様より幸せなの!」


 声が震える。


「お姉様より綺麗で、お姉様より豪華で、お姉様よりいい暮らしをしている!」


 そう叫んで。


 リリアは唇を噛んだ。


「……なのに」


 どうして。

 どうして。

 誰も自分を認めてくれないの。


「……お姉様」


 その名前を口にした瞬間。

 胸の奥に、黒い感情が湧き上がった。


「お姉様がいなくなったのに」


 自分は侯爵夫人になった。

 それなのに。

 なぜ、皆がまだエレノアの話をするのだろう。


「……そうよ」


 リリアはゆっくり顔を上げた。


「まだ、お姉様と比べられているからよ」


 だったら。

 もっと差をつければいい。

 もっと豪華に。

 もっと派手に。

 もっと多くの人に自分を見せればいい。


「……見返してやるわ」


 鏡の中の自分を見つめる。


「絶対に」


 その瞳には、悔しさだけが燃えていた。


「今度こそ私が侯爵夫人としての力を、皆に分からせてやる」


 リリアは知らなかった。

 その言葉が。

 彼女自身をさらに追い詰めることになるとは。

 そして。

 その翌日。

 アレクシスが、彼女にある「命令」を告げることになるとも――。

感想、レビュー、☆、励みになります(小躍りします)

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― 新着の感想 ―
ヤベーよこいつwww 自分が何で嫌われてるかもわからないってwww そりゃあ、他人を招いたお茶会で自分の話(自慢)しかせず服装もお茶会には相応しくない物を着ていたら誰だって引きつった顔になるし、早々に…
2026/08/11 20:56 活きラット
エレノアに対して迂闊だったとか評価する人はいるだろうけどじゃあリリアの評価をするとなると能力を優先する人からは色仕掛けしかできないとなるし夫婦本人たちに愛情があればとする情を優先する人からは良くしてく…
 アレクシス、どれだけ見る目がないのか…痛感は、まだかな。華やかなだけで在れる世界じゃない。それを解る日はくるのか…。
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