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【完結】妹として迎えた婚外子が、私から夫まで奪いました  作者: モーヒアス


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2/20

第二話 優しい妹

「お姉様、お帰りなさい」


屋敷へ戻ると、真っ先に出迎えてくれるのはいつもリリアだった。


「ただいま、リリア」

「商会とのお話し合いはいかがでした?」

「ええ。新しい取引先も決まりそうだわ」

「さすがお姉様です!」


自分のことのように喜ぶその姿を見ていると、自然と笑みがこぼれる。

父の願いを叶えてよかった。

何度そう思ったことだろう。

 

夕食の席でも、リリアはよく気が付いた。


「お義兄様、お肉をお取りしますね」

「ありがとう」

「お姉様は野菜がお好きでしたよね」

「ありがとう、リリア」


自然と二人の世話を焼く姿は、とても愛らしく『家族』という言葉が相応しかった。

使用人たちも口を揃える。


「リリア様は本当にお優しい方です」

「旦那様と奥様をたいへん慕っておられます」


その言葉を聞くたび、私は少し誇らしい気持ちになった。

 



ある日の午後。

私は王都の慈善会へ出席するため、朝から外出していた。

帰宅したのは夕方だった。

玄関で執事が深々と頭を下げる。


「お帰りなさいませ」

「旦那様は?」

「書斎でお仕事をされております」

「そう」


忙しい日が続いている。

今日もきっと遅くまで仕事なのだろう。

そう思いながら二階へ向かう。

途中、リリアの姿が見えた。

彼女は廊下の窓際で、小さな花瓶へ花を生けていた。


「まあ、綺麗ね」

「お姉様!」


ぱっと振り返る笑顔は、昔と何も変わらない。


「お疲れではありませんか?」

「少しだけ。でも大丈夫よ」

「旦那様もずっと書斎にいらっしゃいます。ここ数日、ほとんど休まれていません」

「そんなに……」


胸が締め付けられた。


「あとで温かい紅茶を持っていくわ」

「きっと喜ぶと思います!」


リリアは嬉しそうに微笑んだ。

 



その夜。

私は焼き菓子と紅茶を盆に載せ、書斎へ向かった。

扉を叩こうとした、その時だった。

中から笑い声が聞こえた。


「ははは、それは困ったな」


夫の声。

続いて、小さく笑う女性の声。


……リリア?


仕事の相談でもしているのかしら。

そう思い直し、軽く扉を叩く。

すると。


ガタンッ。


何かを倒したような大きな音がした。


「……失礼します」


扉を開けると、部屋には夫とリリアがいた。

二人とも、どこか慌てたような表情を浮かべている。


「あら、ごめんなさい。仕事中だったのね」

「いや、大丈夫だ」


夫は笑ったが、少しぎこちなかった。

足元を見ると、床に書類が散らばっている。


「ごめんなさい、お義兄様。私がぶつかってしまって……」


リリアが慌てて書類を拾い集める。


「怪我はなかった?」

「はい、大丈夫です」


私は一緒に拾おうとかがみ込んだ。

その瞬間、一枚の紙が目に入る。

そこには見覚えのある筆跡で、


『今夜、いつもの場所で』


とだけ書かれていた。


「あ……」


リリアは慌ててその紙を取り上げる。


「それは使用人への伝言です!」

「そうなの?」

「はい!庭師さんへの伝言を書いていたんです」

「庭師?」

「ええ、夜しか時間が取れない方なので」


少し不思議には思ったが、それ以上気にしなかった。


「ごめんなさい。仕事の邪魔をしてしまったわね」

「気にしないでくれ」


夫はすぐに笑顔を作る。


「ありがとう、エレノア」

「ゆっくり休んでくださいね」


私は紅茶だけ置き、部屋を出た。

扉が閉まる。

廊下を歩きながら、ふと振り返った。

部屋の中からは、もう物音ひとつ聞こえない。

静かすぎる。

そんな気がした。

 



翌朝。

私は執事に何気なく尋ねた。


「昨日、庭師は夜に来ていたのかしら?」


執事は少し首を傾げる。


「庭師、でございますか?」

「ええ」

「昨日は休暇を取っておりましたので、誰も来ておりません」

「……そう」


一瞬だけ胸に小さな棘が刺さる。

でも、すぐに打ち消した。

リリアが私に嘘をつくはずがない。

あの子は、そんな子ではないのだから――。


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