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Chapter 3 : E-Gun (1)

「次は、少々見覚えのあるものかもしれませんね」


フォーがそう言うと、私は手を振ってあしらった。


「構わないわよ。どうせ異世界由来のものなら、大抵は見覚えがあるはずだし」


剣、盾、弓、杖、槍。


主要な武器なんて、そんなものかしら? 私もあまり詳しくないし。普段は剣しか使わないから。


ふむ……。でも他のものが出てきたとしても、結局は「あぁ、これのこと?」ってなるだけよね。


「ねぇフォー。あんたは興味ないかもしれないけど、私は安全に元の世界へ帰れる方法を探してるのよ?」


「それほど物覚えは悪くありません」


「中立だって言ってたけどさ……。もしそっち系の役に立ちそうなもの案内してくれたら、めちゃくちゃ感謝するわよ」


「中立であるがゆえに、そのような便宜を図ることはできかねます……」


フォーがそう言ったので、私は足を止めた。


フォーが振り返って私を見る。


「何か?」


「それって、暗にそういうものが実在するって言ってるわけ?」


「……あるかもしれませんし、ないかもしれません。ここはあらゆる次元からあらゆるものを集めた場所ですから。私の記憶を辿れば、該当しそうなものも見つかるかとは思います……」


フォーは言葉を区切った。


「ですが先ほど申し上げた通り、私はあくまで貴女をこの博物館の最期まで案内する中立の立場に過ぎません」


「私は安全に帰れるものが知りたいんだから。その観点から言えば、あんたの役目は私をそこに案内することじゃないの?」


少なくとも、私の理解しているフォーの役目はそういうものだ。


フォーは慇懃に頭を下げた。


「貴女のおっしゃることも、あながち間違いではございません。ですが、現在の貴女の状況に鑑みますと……。そのように振る舞うことは、かえって中立性を損なうことになります」


「理屈っぽい人ね」


「職務を全うしているだけでございます」


それを聞いて、私はまた手を振った。


「はいはい。じゃあフォーの選ぶものに任せるわよ」


なんだか、だんだん流されるままになってきたわね。この場所の空気に慣れてきたのかしら?


それともフォーの淡々とした声が、妙に心を落ち着かせるのか。今までは声のデカい脳筋男ばっかり見てきたしね。まぁ、あいつらは冒険者なんだから仕方ないけど。


でも待てよ、もっと真面目になるべきかしら? 私が元の世界に戻って廃人になるかどうかがかかってるんだし。


ええと……。でも今更真面目になったところで、フォーについていく以外に何ができるって言うのよ。


博物館の収蔵品は数えきれないほどある。


勝手に歩き回ったところで、その物語なんて分かりっこないし。


かといって、勝手にガラスケースを開けて適当に持ち出そうとすれば、どうせフォーに止められるに決まってる。


ふむ、最初に決めた通りにしましょう。この二時間、フォーの案内に従って、役立ちそうなものを探す。


二時間以内に見つかればいいけど……。あれ? 別にそんなに急いで帰らなくてもいいのかしら???


「こちらでございます、勇者リン様」


「どれどれ……。……」


「見覚えがあるのではないですか?」


見覚えがあるかないかって言われたら、そりゃあるけど。 でも。


「これ、鉄砲ピストルじゃないのよ!?」


正真正銘の銃。


G-U-N。


映画に出てくるようなやつ!?


「銃」以外に形容する言葉が見当たらない。


ファンタジーの欠片もない。魔法の気配すらない。


信じられないほど現実味を帯びた、鈍く光る黒い銃。


私は叫んだ。


「これ、アクション映画に出てくる、冷たい鉄の塊で火を噴いてバンバン鳴るやつじゃない! 剣とか盾がある異世界の博物館に、なんでこんなのが紛れ込んでるのよ!?」


「その反応から察するに、よくご存知のようですね」


「最初の想定とは、全く違う意味で見覚えがあるって言ってんのよ!!!」


正直、魔法少女のステッキでも置かれていた方が、まだ驚きは少なかったわよ。


そして、ふと疑問が湧いてきた。私は小さくため息をついて問いかけた。


「ねぇ。さっきからあんたの話を聞いて、それが何なのか知った気になってるけど」


「私は学芸員ですから」


「私が言いたいのは、このガラスケースの中にあるものが、本当にあんたの言う通りの能力を持ってるなんて、どうやって確信すればいいのよ?」


フォーは無表情のまま見つめてきたが、少し考え込んでいるようだった。


私はその隙を逃さず、疑念をぶつけた。


「ここに置いてあるのは全部偽物かもしれないじゃない……。最悪の場合、ここにあるものには何の物語もなくて、あんたがデタラメを並べるのが上手いだけって可能性もあるわよ!」


私はフォーの目の前で、空気を切るような音を立てて指を突きつけた。


フォーは顎に手を当て、喉の奥で唸った。


「ふむ……。今まで、そのようなことをおっしゃるお客様はいらっしゃいませんでしたね」


「ふん。マジで考え込んじゃって」


フォーは頷いた。


「以前のお客様方は、概ねそのまま物語を受け入れてくださいましたが……。どうやらリン様は、より具体的な『証拠』を求めていらっしゃるようですね?」


ガチャッーー。


ガラスケースのロックが外れる小さな音が響いた。


フォーは死を内包したその黒い金属の塊を、静かに取り出した。それを手の中で弄ぶ。


そして、銃口を真っ直ぐに私の額へと向けた。


「ちょっと!?」


「御自身で体感されるのが……最も明確な答えかと存じます」




バンッ!

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