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第26話 叫び

 由美の再婚は、もちろん幸せなものではなかった。岡山家の御曹司は再び本性を現し、浮気と暴力が繰り返された。由美からの連絡は徐々に途絶えていった。由佳は妹からの電話が来なくなった理由を、嫌われたからか、連絡手段を奪われたからか、と考えた。おそらく両方だろう。


 ただ、すでに高校生になっていた咲奈(さきな)から、時折助けを求める連絡が届いた。咲奈は児童相談所に連絡したものの、岡山家の弁護士にうまく丸め込まれ、事態は進展しなかった。


 由佳は手をこまねいていた。会社の経営を立て直すことに忙殺され、由美の状況に十分に介入できなかった。


 ある夜、咲奈から震える声の電話がかかってきた。


「母さんが……自殺未遂した」


 由佳は受話器を握りしめたまま、胸を押しつぶされそうになった。息が詰まり、視界が一瞬暗くなった。しかし彼女はすぐに理性で平静を保った。感情に流されてはならない。由美を救うためには、冷静でなければならない。


 由佳はすぐに興信所に相談した。多くの費用をかけて、岡山家の内情を探らせた。虐待の証拠、夫の浮気、家庭内の暴力の記録——それらを集めるのに、丸一年を要した。


 折よく、岡山家の粉飾決算と御曹司の恋愛スキャンダルが発覚した。由佳はこれを機に、由美のための離婚訴訟を起こした。弁護士を立て、証拠を揃え、由美の意思を尊重しながらも、強く後押しした。


 由佳は事務所の窓辺に立ち、夜の街を見下ろしながらゆっくりと息を吐いた。由美を守るために、ここまで来た。しかしその過程で、由佳は自分が失ったものを思い返した。


 そして、自分に正直でなかったことでどれほど大きな代償を払うことになったかを、胸を錐で刺されるような痛みとともに思った。


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