第19話 結婚式
由美の結婚式は、都内のホテルで執り行われた。相手は神崎建設不動産の取引先企業の御曹司だった。花嫁の由美は純白のドレスをまとい、控えめながらも清楚な笑みを浮かべて参列者たちに挨拶をしていた。父親の康介は満足げな表情で、取引先や関係者と次々と握手を交わしている。
由佳は妹の隣に立ち、静かにその様子を見守っていた。会場は豪華な装飾で彩られ、シャンデリアの光が柔らかく客席を照らしていた。結婚式は滞りなく進行し、誓いの言葉が交わされ、指輪の交換が行われた。参列者たちの間からは、温かい拍手が自然に湧き起こった。
披露宴も華やかだった。由美の明るい笑顔が、会場を優しく包み込んでいるように見えた。御曹司の青年は礼儀正しく、由美の隣で丁寧に振る舞っていた。父親の康介は、酒を片手に取引先の関係者たちと談笑し、時折満足げに由美のほうを眺めていた。
由佳はテーブルに着き、シャンパングラスを手にしながら、会場の様子を眺めていた。表面的には、申し分のない結婚式だった。誰もが祝福の言葉を口にし、由美の幸せを祈るような空気が満ちていた。
しかし由佳は、妹の笑顔を見つめながら、胸の奥で小さな違和感を覚えていた。由美が本当に、この父親の意向が強く働いている結婚を望んでいるのか——そんな疑問が、華やかな照明の下でも、由佳の頭から離れなかった。
披露宴が終わり、由美が新郎とともに会場を後にする頃、由佳は妹の背中を静かに見送った。白いドレスの裾が優雅に揺れ、由美の笑顔が最後に一瞬、由佳の方を向いた。
由佳は無言で妹を見送った。
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