第二十七話 同じ四人ではない ―ルビアス―
合同祭から三日後、男子部四年一組の教室には、空いた席が二つあった。
一つはジャスパーの席で、もう一つはディアモンの席だ。
二人とも学院の決定が出るまで、通常の授業へ出ることを認められていない。
ジャスパーの机からは、教科書も筆記具も片づけられている。ディアモンの机には、合同祭の前日に使った役割票の写しが残っていた。机の中へ入れたまま、持ち帰るのを忘れたらしい。
僕の席とペリドの席は、その二つから少し離れている。
「ルビアス」
朝の出席を取り終えた教師が、名簿から顔を上げた。
「はい」
「今日の放課後、男子部の第一応接室へ来なさい。ペリドもだ」
「処分が決まったのですか?」
ペリドが尋ねる。
「その説明がある。ディアモンにも、家を通じて同じ時刻に来るよう伝えてある」
教室の後ろで、誰かが椅子を引く音がする。
合同祭から戻った生徒たちは、僕やペリドへ直接何かを聞くことはなかった。けれどジャスパーが護衛官に取り押さえられたことも、ディアモンをペリドが止めたことも、男子部ではもう知られている。
「ジャスパーは?」
僕が聞くと、教師は名簿を閉じた。
「マーチモンドについては、別に審議を続けている」
そこで話は終わり、朝の授業が始まった。
*
放課後、第一応接室へ入ると、ディアモンはすでに来ていた。
学院の制服を着ているが、鞄は持っていない。家の馬車で来たのだろう。壁際の椅子へ座り、卓上に置かれた三通の封筒を見ている。
「遅かったな」
「授業が終わってすぐ来たよ」
「俺は門で待たされた。教師が迎えに来るまで、校舎へ入るなと言われたんだ」
ディアモンの前にある封筒だけ、紙が二枚入っているらしく厚い。
僕とペリドの封筒には、まだ誰の名前も書かれていなかった。
「ジャスパーは来ないのか?」
ペリドが空いている椅子へ座る。
「別に審議しているそうだ」
「同じことをしたのに、なぜ別なんだ」
ディアモンが卓の端を指で叩く。
「同じじゃないだろ」
「俺たちは、ジャスパーと一緒に殿下をお守りしようとした」
「合同祭で、俺はお前を止めた」
「だからだ。お前が邪魔をしなければ、俺もジャスパーと一緒に事情を説明できた」
「説明を聞くために近づけないと、護衛官から言われたばかりじゃないか」
応接室の扉が開き、男子部の学年主任と法律概論の教師が入ってきた。
後ろから書記が続き、卓の端へ記録簿を置く。
「全員、揃っているな」
学年主任は三通の封筒へ、それぞれ名前を書いた。
「本日伝えるのは、一斉集会後に女子側の移動経路へ立った件と、合同祭当日の行動についての処分だ。マーチモンドについては、王宮とロルカ王国へ提出した報告も含め、学院長と理事会で審議を続けている」
「では、私たち三人だけ先に処分するのですか?」
ディアモンが尋ねる。
「先に、という言い方は適切ではない。それぞれ、確認する事実が違う」
学年主任が、最初の封筒をディアモンの前へ置いた。
「ディアモン。一斉集会では、学院の許可を得ず、ラピス殿下の移動経路へ立った。殿下から付き添いを拒まれた後も、その場に残っている」
「四人とも同じです」
「今、その《《四人の》》話はしていない。《《君の》》話だ」
ディアモンの指が、卓を叩くのをやめた。
「合同祭では、担当教師から荷物を置いて壁際へ寄るよう命じられた。君は一度従ったが、マーチモンドが持ち場を離れると、その後を追おうとした」
「殿下の近くで事故が起きたからです」
「ペリドに止められた後も、腕を振りほどこうとし、ルビアスへペリドを止めるよう求めた。間違いないな」
「……はい」
「教師と警備員がいる場で、命令に背き、別の生徒の制止にも抵抗した。学院は君を、七日間の停学とする。その期間は寄宿舎にも滞在できない。保護者の監督下で過ごしなさい」
ディアモンが封筒を開く。
一枚目には、停学の開始日と、学院へ戻る前に保護者同伴で面談を受けることが書かれていた。
「七日間もですか?」
「君が避難経路まで到達しなかったことは確認している。だが、それは途中でペリドと警備員に止められたからだ」
「自分で戻らなかったから、ということですか?」
「そうだ」
二枚目は、次の上級課程や士官学校などへ提出する行状記録についての通知だった。
今後の態度を確認するまで、学院から推薦を出すかは保留される。
「次に、ルビアス」
僕の前へ封筒が置かれた。
「一斉集会の際、移動経路の図を描き、四人の位置を決める話し合いへ加わったことを認めているな」
「はい」
「女子側へ立ったことも?」
「認めます」
封を開く。
中に入っていたのは一枚だけだった。
「君には、三日間の停学を命じる」
「合同祭では、持ち場を離れていません」
「そのとおりだ。だから合同祭当日の命令違反は、君の処分理由に含まれていない」
教師が、僕の前の紙を指した。
「書かれているのは、一斉集会の際に行った無許可の配置と、学院からの聞き取りを受けるまで、それを問題だと考えていなかったことだ」
「前のことだけで、今になって停学になるのですか?」
「最初の聞き取りを行った日に、正式な処分は記録を確認してから決定すると伝えている。保護者へ送った文書にも書いてある」
「……はい」
覚えている。
僕は署名した文書を父上にも見せた。
父上は、次に学院から報告が来たら、士官学校にも官吏を養成する上級課程にも、家から推薦を頼まないと言った。
「合同祭で命令に従ったことは、記録へ加えてある」
学年主任が続ける。
「そのため、ディアモンと同じ処分にはしていない」
「命令どおり動かなかっただけです」
「それでよい。学院が生徒へ求めたのは、自分で新しい役目を作ることではなく、命じられた場所に残ることだ」
壁際の椅子で、ディアモンが封筒を強く折った。
「では、俺も箱の横へ残っていれば、三日で済んだのですか?」
「少なくとも、合同祭当日の違反は加わらなかった」
「ジャスパーを放っておいても?」
「教師と警備員が対応していた。君が加わる必要はなかった」
ディアモンは教師から顔を背けた。
最後の封筒が、ペリドの前へ置かれる。
「ペリド・アスパー。一斉集会の件については、二人と同じく学院の指示なく女子側の移動経路へ立った。殿下から拒絶された後まで、その場に残っている」
「はい」
「一方、その後はマーチモンドがアザフォード嬢の進路を塞いだ際に、間へ入り、教師を呼ぶまで引き離した。合同祭ではディアモンを止め、教師の命令に従って警備員を待っている」
「はい」
「最初の行動に対する正式な訓戒と、行状記録への記載を行う。停学にはしない」
ペリドは封筒を開き、内容を上から順に読んだ。
「今後、同じことがあれば?」
「今回の改善が一時的なものだったと判断する。次は停学を含む処分になる」
「分かりました」
ペリドは紙を封筒へ戻し、ディアモンが椅子から身を乗り出す。
「なぜ、ペリドだけ停学にならないんです?」
「説明したとおりだ」
「最初は、こいつも一緒に女子側へ行きました」
「その行動については、訓戒を受けている」
「合同祭では、俺たちの邪魔をしただけです」
「教師の命令に従い、君が持ち場を離れるのを止めた」
学年主任の手が、卓上の三通へ順に向けられる。
「学院は、友人同士だから同じ処分をするのではない。誰が、いつ、何をしたかで決める」
ディアモンの封筒には、七日間の停学と推薦の保留。
僕の封筒には、三日間の停学。
ペリドの封筒には、訓戒と行状記録への記載。
同じ日に女子側へ立ったことは、三人とも記録されている。
そのあと、僕たちは同じ行動を取らなかった。
「処分の内容は、本日中にそれぞれの保護者へ送付する。ルビアスとディアモンは、明日から定められた期間、登校してはならない。ペリドは通常どおり授業へ出なさい」
学年主任が立ち上がる。
「異議がある場合は、保護者を通じて申し立てること。今日はこれで終わりだ」
*
応接室を出ると、廊下の窓から正門前の馬車が見えた。
ディアモンを迎えに来た家の馬車と、僕の家から来た小型の馬車が、少し離れて停まっている。
「ペリド」
階段へ向かいかけたペリドを、ディアモンが呼び止めた。
「何だ?」
「お前、最初から自分だけ処分を軽くするつもりだったのか?」
「合同祭の前には、処分がどうなるかなんて知らなかった」
「ジャスパーを止めるつもりなら、なぜもっと早く言わなかった。俺たちと一緒に動いておいて、最後だけ教師の側へついたのか?」
ペリドの靴が階段の手前で止まる。
「停学が明けたら、話そう」
「逃げるのか?」
「ここで話せば、また教師が来る。話はその時にする」
ペリドは階段を下りていった。
ディアモンが僕を見る。
「お前も、あいつが正しいと思うのか?」
「僕は、明日から三日間来られない」
「そんなことを聞いていない」
「家へ帰るよ」
正門へ出ると、家の従者が一通の手紙を持って待っていた。
馬車へ乗る前に封を開く。
学院から先に、処分の決定が届いたらしい。
父上の字で、短く書かれている。
――以前に伝えたとおり、士官学校と官吏課程のいずれについても、家から推薦を求めることはしない。停学中に、別の進路を考えなさい。
合同祭では、僕は壁際から動かなかったので、七日間の停学は避けることはできた。
だが、最初に描いた配置図まで、なくなったわけではない。
手紙を折り、処分通知と一緒に鞄へ入れる。
馬車が学院を離れるとき、正門脇の階段を、ペリドが一人で男子寄宿舎へ上っていくところだった。
※いつもありがとうございます。
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「離縁された公女の婦人雑誌相談室 ~結婚してから帰るのは、荷造りが大変です~」
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