↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
6/12

第6話 最適化のミライ


森本と、東海林。


二人の、共犯を、得て。


わたしは。


意気揚々と。


掃除当番、作戦を、決行した。



結果から、言うと。


――失敗した。



不破と、日下部を。


掃除当番で、二人きりに。


する、ところ、までは。


よかった。


でも。


東海林が。


「森本も、同じ当番に、入れて」と、言い出して。


森本を、押し込んだ、結果。


三人に、なって。


しかも。


森本が、いると。


不破が、なぜか。


妙に、つっかかり始めて。


(森本と、不破は。


どうも。


相性が、悪いらしい)


尊い、空気は。


見事に。


霧散した。


そして。


その、ゴタゴタの、最中。


わたしと、東海林が。


物陰で、こそこそ、してるのを。


掃除に、来た、女子に。


見られて。


――ぐにゃり。


リセット。



◇



……ふう。


また。


三学期の、頭。



まあ。


いい。


想定内。


一つ。


わかったのは。


「欲張ると、崩れる」ってこと。


不破×日下部を、狙いつつ。


東海林の、森本まで。


同時に、盛り込もうとすると。


盤面が。


ぐちゃぐちゃに、なる。


……次は。


もっと。


シンプルに。


いこう。



◇



で。


その、日の、放課後。


わたしは。


図書室で。


一人。


ノートを、広げて。


唸って、いた。



どの、班に。


誰を、配置すれば。


一番、確率が、高いか。


森本を、どこに、置くか。


東海林の、要望を。


どこまで、聞くか。


女子の、目を。


どう、避けるか。


……変数が。


多すぎる。


毎回。


少しずつ。


配置を、変えて、試して。


結果を、見て。


また、変えて。


……まるで。


答えの、見えない。


パズルだ。



「――何を、そんなに、悩んでいるんですか?」


……。


顔を、上げると。


五百旗頭(いおきべ)さんが。


立って、いた。


宇宙の、本を、抱えて。



◇



「五百旗頭さん」


「ではでは、こんにちは」五百旗頭さんは、微笑んだ。「さっきから、ずっと。ぶつぶつ、言いながら。ノートに、何か、書いては、消して。……百面相を、していましたよ」


……見られて、いた。


「ちょっとした。……調べもの、よ」


「ふうん?」


五百旗頭さんは。


わたしの、ノートを。


ちらり、と、見た。


そこには。


名前と、矢印と。


ぐちゃぐちゃの、図が。


描かれて、いる。


(もちろん。


「不破×日下部」なんて。


書いて、いないけど)


「……なんだか」五百旗頭さんは、言った。「最適化問題、みたいですね」


……ん?


「さいてき、か?」


「ええ」五百旗頭さんは、目を、輝かせた。「複数の、条件が、あって。その中で、一番、いい、答えを、探す。……あなたのそれ、まさに、それでしょう?」


……。


……この人。


なんで。


わかるの。



◇



しまった、と、思った。


でも。


五百旗頭さんは。


何も。


疑って、いない。


ただ。


純粋に。


「面白そうな、問題」を。


見つけた、という。


顔を、していた。


……そうだ。


この人は。


探偵じゃ、ない。


今は。


ただの。


数学が、好きな。


女の子。


わたしの、企みなんて。


これっぽっちも。


気づいて、いない。



「あのね、五百旗頭さん」わたしは、探りを、入れた。「仮に、よ。すごく、変数が、多くて。どこを、どう、いじれば、正解に、近づくか。……よく、わからない、問題が、あったとして」


「ええ」


「そういうの。……どうやって、解くの?」


五百旗頭さんの。


目が。


きらん、と。


光った。


「――それはね」


……あ。


これ。


スイッチ。


入った、やつだ。



◇



「たとえば」五百旗頭さんは、わたしの、隣に、座って。ノートを、奪った。「ネルダー・ミード法(ほう)、というのが、あります」


「ねるだあ……?」


「滑降シンプレックス法、とも、いいます」五百旗頭さんは、すらすらと、図を、描き始めた。「微分が、できない。……つまり、『どっちに、進めば、いいか』が、わからない、問題でも。答えを、探せる、方法」


「……へえ」


「まず。適当に。いくつか、点を、置くの。あなたの、場合なら。『こういう、配置』『ああいう、配置』って。何パターンか、試す、でしょう?」


「……ええ、まあ」


「その、結果を、見て」五百旗頭さんは、楽しそうに、続けた。「一番、ダメだった、パターンを。捨てる。そして。残った、いい、パターンの、方へ。……ちょっと、動かす。これを。繰り返すの」


……。


「一番、悪い、やつを、捨てて。いい、方へ、寄せる。捨てて、寄せる。……そうやって。少しずつ。少しずつ。一番、いい、答えに。にじり寄って、いく」


……なるほど。


わたしが。


毎回。


やって、いること。


……まさに。


それだ。



◇



わたしは。


雷に、打たれたように。


なった。



そう、か。


わたしの、ループは。


まさに、これだ。


毎回。


少しずつ。


配置を、変えて。


一番、ダメだった、やり方を、捨てて。


うまく、いった、方へ。


寄せて、いく。


……これには。


名前が。


あったんだ。


ネルダー・ミード法。


わたしの。


ループ攻略は。


数学だった。



「五百旗頭さん!」わたしは。


思わず。


その、手を、握った。


「あなた、天才ね!」


「え、ええ?」五百旗頭さんは、きょとん、と、した。「そんな。……ふつうの、数値解析ですけど」


「いいえ、天才。……ありがとう。すごく、参考に、なったわ」


「……お役に、立てたなら」五百旗頭さんは、照れたように、笑った。「ではでは。……頑張って、くださいね。何の、問題か、知りませんけど」


……ふふ。


何の、問題か。


知らないまま。


あなたは。


わたしに。


最強の、武器を。


くれた。


……ありがとう。


探偵さん。



◇



翌日。


わたしは。


森本と、東海林を、集めて。


高らかに、宣言した。



「聞きなさい。……わたしは、進化した」


「……なんだよ、いきなり」森本が、げんなり、した。


「これまでの、わたしは。行き当たりばったり、だった。でも。もう、違う。……これからは。数学で。攻める」


「すうがく」


「ネルダー・ミード法」わたしは、ノートを、掲げた。「一番、ダメな、配置を、捨てて。いい、配置に、寄せる。それを、繰り返して。最適解に。にじり寄る。……完璧な、戦略よ」


森本は。


わたしの、顔と。


ノートを。


交互に、見て。


それから。


ぼそっと、言った。


「……お前さ。BLのために。そこまで、するの、なんなの」


「情熱よ」


「情熱の、方向が、おかしい」



◇



一方。


東海林は。


目を。


きらきら、させて、いた。


「……すごい」東海林が、ぼそっと、言った。「……ミライ。……頭、いい」


「でしょう?」


「……その、数学で」東海林は、身を、乗り出した。「……森本も。……最適化、できる?」


「……あんたは、ぶれないわね」


……。


東海林の、頭の中は。


いつだって。


森本で。


いっぱい、らしい。


(当の、森本は。


今日も。


それに。


まったく。


気づいて、いない)



◇



さあ。


新しい、武器を、手に。


わたしの。


ループ攻略は。


次の、ステージへ。


ネルダー・ミード法。


一番、ダメな、やり方から。


順番に。


潰して、いく。


理論上。


いつか、必ず。


最適解に。


たどり着く。


……はず。


……そう。


この、ときの、わたしは。


まだ。


信じて、いた。


数学さえ、あれば。


この、ループは。


攻略できる、と。



(第6話 了)



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

  【 湊ミライの ループ攻略メモ 】

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

一、 これは わたしの願望が見せる世界

二、 心底"満足"すれば抜けられる

   (満足=不破×日下部の尊さを見届けること)

三、 思惑を勝手に見抜かれたら即リセット

四、 自分から明かして引き入れた味方はセーフ

五、 見抜かれても 相手が"同好の士"ならセーフ

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

◆ 味方リスト

・森本 … 実務担当。情熱の方向がおかしいと言う。

・東海林 … 同好の士。頭は常に"森本"でいっぱい。

◆ 新装備

・ネルダー・ミード法 … 一番ダメな配置を捨て、

 良い配置へ寄せる。最適解へにじり寄る戦略。

 (授けたのは五百旗頭さん。何の問題かは知らない)

▼ 今回の教訓

・欲張ると崩れる。狙いは一度に一つ。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。