第5話 まさかの共犯
森本という。
共犯者を、得て。
わたしの、作戦は。
格段に。
やりやすく、なった。
「森本。あそこの、二人、誘導して」
「へいへい」
「もっと、自然に。バレないように」
「わーってるよ」
……いい。
いい、感じ。
嘘を、つかなくていい、って。
こんなに、楽なのね。
◇
その日。
わたしは。
昼休みの、廊下で。
一人。
盤面を、眺めて、いた。
不破は、あっち。
日下部は、こっち。
今日の、放課後。
図書室で、班の、資料集め。
うまく、いけば。
二人が。
隣同士で。
古い、資料を。
めくる。
……ふふ。
その、絵を、想像すると。
もう。
たまらない。
わたしは。
つい。
いつもの、癖で。
口元に。
暗い、笑みを。
浮かべて。
呟いて、いた。
「……ふっ。すべて。わたしの、盤面の、上……」
「――何、やってんだ、お前」
「!」
森本が。
通りかかって、いた。
「今の、独り言。……なんか、悪の、首領みたいな、こと、言ってなかったか」
「……気の、せいよ」
「絶対、言ってた。『すべて、わたしの盤面の上』とか。……お前、そういうの、好きだよな」
「うるさいわね!」わたしは、赤くなった。「あ、あんたに、言われたく、ない! 漆黒の――」
「言うな! わかった! 俺が、悪かった!」
……。
……こほん。
いけない。
つい。
いつもの、演出癖が。
出て、しまった。
(だって。
気持ち、いいんだもの。
盤面を、支配してる、感じ)
◇
その、放課後。
図書室。
わたしは。
書架の、陰に。
身を、潜めて、いた。
完璧な、観測ポイント。
ここからなら。
資料コーナーの、机が。
ばっちり。
見える。
そして。
予定通り。
不破と、日下部が。
やってきた。
「うわ、資料、多いな」
「本当ですね。……手分け、して、探しましょうか」
「おう」
……きた。
きたわ。
二人が。
肩を、並べて。
同じ、棚を。
覗き込む。
……ふふ。
ふふふ。
いい。
実に。
いい。
尊い……!
◇
わたしは。
夢中で。
その、光景を。
眺めて、いた。
完全に。
無防備に。
……いま、思えば。
それが。
油断、だった。
「――何、してるの」
……。
ぞくり、と。
背筋が、凍った。
真後ろ。
すぐ、後ろ、から。
声が。
した。
わたしは。
恐る恐る。
振り返った。
そこに。
東海林四季が。
立って、いた。
表情は。
いつも通り。
ほとんど。
動かない。
……でも。
その、目は。
じっと。
わたしと。
わたしの、視線の、先を。
見て、いた。
……見られた。
わたしが。
二人を。
隠れて、見てる、ところを。
――終わった。
リセット、だ。
◇
わたしは。
目を、ぎゅっと。
つぶった。
……ぐにゃり、と。
世界が、歪む。
あの、感覚が。
来る。
来る……。
……。
……。
……あれ?
来ない。
いつまで、経っても。
世界は。
歪まない。
図書室は。
図書室の、まま。
東海林は。
東海林の、まま。
……なんで?
◇
おそるおそる。
目を、開けた。
東海林は。
まだ。
そこに、いた。
そして。
わたしの、視線の、先。
不破と、日下部を。
じっと。
見て。
それから。
ぽつり、と。
言った。
「……いい、ね」
……え?
「あの、二人」東海林は、言った。「……並ぶと。……いい」
……。
……。
……えっ?
◇
待って。
待って、待って。
いま。
東海林。
なんて、言った?
「……あの」わたしは、恐る恐る、聞いた。「東海林さん。……もしかして、なんだけど」
「……」
「あなたも。……そういう、の。……見る、人?」
東海林は。
こくり、と。
頷いた。
……嘘。
「……昔から」東海林は、ぼそぼそと、言った。「……男の子、同士。……仲いいの。……見るの、好き」
……。
……うそ。
うそでしょう。
この、東海林が。
学校一の、クールビューティーと。
名高い。
あの、東海林、四季が。
……同類!?
◇
わたしの、頭が。
高速で。
回転した。
そう、か。
だから。
リセットが。
起きなかった。
東海林は。
わたしを。
「気持ち悪い」と。
白ける、方向じゃ、なく。
「いいね」と。
同じ、ものを、見て。
楽しむ、方向で。
受け止めた。
……つまり。
敵じゃ、ない。
味方だ。
わたしが。
自分から、明かすまでも、なく。
東海林は。
最初から。
こっち側の、人間、だった。
――ルールを。
復唱、する。
一つ。願望世界。
二つ。満足すれば、抜けられる。
三つ。勝手に、見抜かれたら、リセット。
四つ。自分から、明かした、味方は、セーフ。
そして。
いま。
わかった。
五つ目。
……見抜かれても。
相手が。
「同好の士」なら。
リセットは、起きない。
なぜなら。
それは。
「見られた」んじゃ、ない。
「分かち合えた」んだ、から。
◇
「東海林さん」わたしは。
感極まって。
その、手を、握った。
「わたし、湊ミライ。……あなたと、友達に、なりたい」
「……」
東海林は。
きょとん、と、して。
それから。
ほんの、少しだけ。
……本当に、少しだけ。
口角を。
上げた。
「……うん」
……!
尊い!
(※これは、これで、尊い)
◇
こうして。
わたしは。
二人目の、味方を。
得た。
しかも。
今度は。
「事情を、知ってる」どころ、じゃ、ない。
「同じ、性癖の」。
「分かり合える」。
最高の。
相棒。
森本は。
呆れながら、手伝ってくれる、けど。
尊さは。
共有、できない。
(「思わねえよ」って、言うし)
でも。
東海林、なら。
一緒に。
「尊い……」って。
言い合える。
……ふふ。
心強い。
心強すぎる。
◇
――ただし。
一つだけ。
誤算が。
あった。
その、数日後。
わたしと、東海林は。
こっそり。
作戦会議を、して、いた。
「東海林さん。次は、不破と、日下部を。掃除当番で、二人きりに――」
「……待って」東海林が、遮った。
「なに?」
「……不破と、日下部も、いい。でも」
東海林は。
ふと。
遠くを、見た。
その、視線の、先に。
……森本が、いた。
「……森本も」東海林は、言った。「……森本が。他の、男子と、いるの。……見たい」
……ん?
「え、森本?」わたしは、首を、かしげた。「森本と、誰?」
「……誰でも、いい」東海林は、真剣な顔で、言った。「……森本が。困ってるの。……いい」
……。
……ああ。
なるほど。
そういう。
こと。
東海林の。
「推し」は。
――森本、なのね。
◇
面白く。
なって、きた。
わたしの、本命は。
不破×日下部。
東海林の、本命は。
森本×誰か。
同じ、穴の、狢だけど。
見たい、ものが。
微妙に。
違う。
……これは。
ときどき。
揉めそう。
でも。
まあ。
味方が、いる、っていうのは。
いい、ものだ。
一人で。
こそこそ。
やってた、頃より。
ずっと。
……楽しい。
◇
ちなみに。
当の、森本は。
何も。
気づいて、いない。
「なあ、湊。最近、東海林と、仲いいな」
「ええ、まあ」
「珍しいこともあるもんだ。……あいつ、無口だし。何、話してんの?」
「……女子の、話よ」
「ふーん」
森本は。
それ以上。
詮索、しなかった。
……ふふ。
男子って。
鈍いわね。
まさか。
自分が。
幼馴染の、「観賞対象」に。
なってる、なんて。
夢にも。
思って、いない。
……知らぬが、仏、ね。
(第5話 了 / 第2ループ・山場)
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【 湊ミライの ループ攻略メモ 】
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一、 これは わたしの願望が見せる世界
二、 心底"満足"すれば抜けられる
(満足=不破×日下部の尊さを見届けること)
三、 思惑を勝手に見抜かれたら即リセット
四、 自分から明かして引き入れた味方はセーフ
五、 見抜かれても 相手が"同好の士"ならセーフ ←New!
(見られたのではなく 分かち合えたから)
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◆ 味方リスト
・森本 … 実務担当。中二病を握って協力させる。
・東海林 … 同好の士! 尊さを共有できる相棒。
(ただし推しは"森本×誰か"。わたしと違う)
※ 森本と東海林は 互いが味方だと気づいていない。
情報を握るのは わたし ひとり。




