第3話 バレた
作戦は。
驚くほど。
うまく、いった。
森本が、不破の、周りを。
田口が、日下部の、周りを。
じわじわと。
別の、班へ。
流していく。
「なあ、お前、俺と組もうぜ」
「いいけど。あ、じゃあ、あいつも誘って――」
「いや、あいつは、もう、別んとこ、決まってて」
……こんな、感じで。
自然に。
誰にも、怪しまれず。
外堀が。
埋まって、いく。
◇
グループワーク、当日。
担任が、教壇で、言った。
「じゃあ、班、決めろよー。四人一組な。決まった班から、席、移動しろー」
……きた。
わたしは。
一番後ろの、席で。
息を、殺して。
盤面を、見つめた。
がたがた、と。
机が、動く。
生徒たちが。
わいわい、言いながら。
班を、作って、いく。
森本の、仕込み通り。
不破の、周りの、男子は。
みんな、別の、班に。
田口の、仕込み通り。
日下部の、周りも。
きれいに。
埋まって、いく。
そして。
……。
気がつくと。
◇
教室の、真ん中で。
二人の、男子が。
きょとん、と。
顔を、見合わせて、いた。
不破楓也。
日下部久遠。
「……あれ?」不破が、周りを、見回した。「俺、組む、やついなくね?」
「奇遇ですね」日下部が、微笑んだ。「僕も、余ってしまいました」
「……マジか」
「不破くん。……よかったら、僕と、組みませんか?」
「あー……まあ、いいけど」
……。
……。
――きたああああああ!!!!
(※心の声)
◇
やった。
やったわ。
完璧。
完璧な、盤面。
王子様系の、不破と。
人たらし系の、日下部が。
二人きりの、班。
……ふふ。
ふふふ。
これから。
この、二人が。
資料を、集めて。
頭を、突き合わせて。
ああでもない、こうでもない、って。
わちゃわちゃ、する。
……尊い。
尊すぎる。
わたしは。
その、一部始終を。
特等席から。
眺める、だけ。
……最高の。
三学期に。
なりそう。
◇
――と。
浮かれて、いた。
わたしは。
油断して、いた。
「……なあ、湊」
いつの間にか。
隣に。
森本が、来ていた。
「ちょっと、いいか」
「……なによ」
わたしは。
慌てて。
お澄まし顔を、作った。
でも。
森本は。
じっと。
わたしを、見ていた。
……嫌な、予感が、した。
◇
「お前さ」森本は、言った。「不破のこと、気になってる、って、言ってたよな」
「え、ええ」
「それで、不破の、周り、固めて。同じ班に、入りたい、って」
「そ、そうよ」
「……でも」
森本は。
首を、かしげた。
「お前、不破の、班。入って、ないよな?」
……。
……あ。
◇
しまった。
……そう、だ。
わたしは。
「不破に、恋してる」から、周りを、固めた、はず。
なのに。
いざ、班が、できたら。
わたし自身は。
不破の、班に。
入って、いない。
……当たり前だ。
わたしの、目的は。
不破と、日下部を。
二人きりに、すること。
そこに、わたしが、入ったら。
邪魔じゃ、ないの。
でも。
それだと。
「不破に、恋する、乙女」の、行動としては。
……完全に。
矛盾、している。
「なんか、変だな、って」森本は、続けた。「お前、不破に、近づくどころか。むしろ。不破と、日下部を。二人きりに、するために。動いてた、みたいに、見えて」
……。
やめて。
「で、さっきから」森本は、言った。「その、二人のこと。すげえ、嬉しそうに。見てる、し」
……やめて。
「湊。お前、まさか」
――やめて。
「不破と、日下部を、くっつけて。それ、見て。……楽しんでる、のか?」
◇
……見られた。
いや。
違う。
見抜かれた。
わたしが。
一番。
知られては、いけない。
この、企みの。
核心を。
――森本に。
悟られた。
その、瞬間。
◇
ぐにゃり、と。
世界が。
歪んだ。
「――あ」
教室が。
生徒たちが。
不破と、日下部の、班が。
森本の、顔が。
全部。
白く。
溶けて。
消えて、いく。
……ああ。
やっぱり。
そう、なるわよね。
知ってた。
知ってた、けど。
……もったいない。
せっかく。
あんなに。
完璧な、盤面だったのに。
◇
――湊ー。
――おい、湊ミライ。寝てんのか?
……この、声。
わたしは。
ゆっくりと。
顔を、上げた。
目の前に。
森本基成が。
呆れた顔で。
立って、いた。
「もう放課後だぞ。いつまで寝てんだよ」
……。
木の、机。
チョークの、匂い。
冬の、澄んだ、空。
……戻って、きた。
三学期の。
頭に。
また。
最初から。
◇
森本は。
何も、覚えて、いない。
当然だ。
こいつの、記憶は。
リセット、された。
さっき。
わたしの、企みを、見抜いた、ことも。
完璧だった、あの、盤面も。
全部。
なかったことに。
なった。
覚えているのは。
……わたし、だけ。
「……なあ、なんか言えよ。気持ち悪いな」森本が、顔を、しかめた。
「……森本」
「あん?」
「あんたって」わたしは、ため息を、ついた。「ほんと、余計なところで、鋭いわよね」
「は? なんの、話だよ」
「……なんでも、ない」
……そう。
覚えて、おきましょう。
森本は。
手駒として、優秀だけど。
……勘が、鋭い。
浮かれて、油断すると。
こいつに。
見抜かれる。
次は。
もっと。
慎重に。
やらないと。
◇
……ふう。
わたしは。
立ち上がって。
伸びを、した。
焦る、ことは、ない。
時間は。
それこそ。
無限に、ある。
何度でも。
やり直せる。
……むしろ。
ちょっと。
燃えてきた。
一回で、うまくいったら。
つまらない、もの。
これは。
攻略、ゲーム。
わたしだけが。
ルールを、知っている。
わたしだけが。
何度も、挑める。
そして。
最後に。
最高の、尊さを。
手に、入れる。
「森本」わたしは、言った。「近々、グループワークが、あるでしょう」
「……は? グループワーク? ああ、あの、めんどいやつ。……あるけど、なんで、お前が、それ」
「ふふ」わたしは、笑った。「なんでも、ないわ」
……さあ。
二周目。
いえ。
何周目か、なんて。
もう。
数えて、いないけど。
――始めましょう。
わたしの。
何度目かの。
尊さを、求める、戦いを。
(第3話 了 / 第1ループ・完)
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【 湊ミライの ループ攻略メモ 】
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一、 これは わたしの願望が見せる世界
二、 心底"満足"すれば抜けられる
(満足=不破×日下部の尊さを見届けること)
三、 思惑を勝手に見抜かれたら即リセット
(記憶を持ち越せるのは わたしだけ)
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▼ 今回の教訓
・森本は 勘が鋭い。浮かれて油断すると見抜かれる。
・カバーストーリーは 綻びに注意(乙女設定は破綻した)。




