第11話 もう、いいや
新しい、ループ。
三学期の、頭。
わたしは。
決めて、いた。
――今回は。
何も、しない。
攻略も。
最適化も。
班分けの、工作も。
ぜんぶ。
お休み。
どうせ。
何を、やっても。
うまく、いかないんだ。
だったら。
力を、抜いて。
のんびり。
過ごそう。
……そう。
決めた。
◇
……でも。
一つだけ。
引っかかって、いる、ことが、あった。
この前の、女子の、言葉。
「人の、恋愛。おもちゃに、して。楽しんでるの?」
……。
あれから。
ずっと。
胸に。
小さな、棘みたいに。
刺さって、いる。
……わたしは。
本当に。
ひどい、やつ、なんだろうか。
◇
昼休み。
わたしは。
屋上へ、続く、階段の。
踊り場で。
一人。
ぼんやり。
座って、いた。
……らしくない。
こんなに。
うじうじ、するの。
わたしらしく、ない。
……よし。
ちゃんと。
考えよう。
わたしは。
本当に。
悪いこと、を。
して、いるのか。
◇
えっと。
まず。
わたしは。
不破と、日下部を。
くっつけようと。
して、いる。
……これは。
まあ。
余計な、お世話、かも、しれない。
でも。
無理やり。
二人を、傷つけて。
くっつけよう、と。
して、いる?
……いいえ。
してない。
わたしは、ただ。
二人が、仲良く、なる。
「きっかけ」を。
作ろうと。
して、いるだけ。
くっつくか、どうかは。
二人の、勝手。
わたしは。
強制、してない。
じゃあ。
「見て、楽しんでる」のは?
……うん。
これは。
その通り。
わたしは。
二人が、仲良く、してるのを。
こっそり、見て。
「尊い」って。
悦に、入って、いる。
……でも。
それって。
誰かを。
傷つけて、いる?
……。
……いない。
わたしは。
ただ。
遠くから。
見てる、だけ。
何も、盗ってない。
誰も、泣かせて、ない。
……こっそり、見て。
一人で、幸せに、なってる、だけ。
◇
……あれ?
……なんだ。
わたし。
別に。
悪いこと。
して、なくない?
そりゃあ。
班分けを、いじったり。
森本を、脅したり。
ちょっとした、工作は。
してる、けど。
(森本には。
あとで。
ジュースくらい。
おごろう)
根っこは。
ただ。
「尊いものが、見たい」。
それだけ。
人の、幸せを。
願って。
その、おこぼれを。
こっそり。
眺めて。
にやにや、する。
……うん。
無害。
完全に。
無害な、オタク。
――よし。
わたしは。
立ち上がった。
ぱん、と。
頬を、叩いた。
うじうじ。
終わり。
反省。
終了。
だって。
尊いものは。
尊いんだから。
しょうがない、じゃ、ない。
◇
……身も。
心も。
軽く、なった。
そう、よ。
わたしは。
わたし。
陰キャの、腐女子で。
二次元しか、勝たん、女で。
こっそり、尊さを、貪る。
それの。
何が。
悪いの。
胸を、張れ、とは。
言わない。
(だって、人には、言えない、趣味だし)
でも。
恥じる、必要も。
ない。
……ふふ。
なんだか。
久しぶりに。
気分が、いい。
◇
その、日から。
わたしは。
肩の、力を。
すっかり。
抜いた。
班分けの、工作も。
しない。
日下部を、不破に、向ける、作戦も。
やめた。
ネルダー・ミード法の、ノートも。
引き出しに、しまった。
ただ。
のんびり。
普段通り。
学校生活を。
送る。
森本と、くだらない、話を、して。
東海林と、こっそり、萌え話を、して。
(推しが、違うから、よく、揉めるけど)
気が、向いたら。
遠くから。
不破と、日下部を。
眺めて。
「あ、今の、いいな」って。
一人で、にやにや、して。
……それだけ。
それだけの。
毎日。
◇
「……なあ、湊」
ある日。
森本が。
不思議そうに。
言った。
「お前、最近。……なんか、丸くなった、っつーか。……ギラギラ、してないな」
「あら、そう?」
「前は、なんか。……四六時中。……悪巧み、してる、顔、してたのに」
「ふふ」わたしは、笑った。「ちょっとね。……悟りを、開いたの」
「さとり」
「そう。……欲しがるのを、やめたら。……楽に、なったわ」
森本は。
よく、わからない、という顔で。
頭を、掻いた。
「……ふーん。まあ。……今の、お前の、ほうが。……ちょっとは、マシ、だけどな」
「あら、失礼ね」
……でも。
ちょっと。
嬉しい。
◇
東海林も。
わたしの、変化に。
気づいた、らしい。
「……ミライ」
「なに?」
「……最近。……楽しそう」
「そう?」
「……うん」東海林は。
こくり、と、頷いた。「……前は。……なんか。……鬼気迫ってた。……今は。……ただ。……好きなだけ、って、感じ」
……。
……ああ。
そう、かも。
前の、わたしは。
「攻略、しなきゃ」「抜け出さ、なきゃ」って。
いつも。
焦って、いた。
尊さを。
「手段」に、して、いた。
でも。
今は。
違う。
ただ。
尊いから。
見る。
それだけ。
……ふふ。
原点回帰、ね。
◇
……そして。
わたしは。
気づいて、いなかった。
肩の、力を、抜いた。
攻略を、やめた。
「抜け出そう」と。
しなく、なった。
……その、瞬間から。
少しずつ。
何かが。
変わり始めて、いたことに。
焦って、いた、頃。
わたしが。
必死に、動かそうとして。
びくとも、しなかった、盤面が。
力を、抜いた、途端。
……ゆっくりと。
自然に。
流れ始めて、いた。
まるで。
握りしめて、いた、砂が。
手を、開いた、瞬間。
さらさらと。
あるべき、形に。
こぼれて、いく、みたいに。
◇
……その、兆しは。
ほんの、些細な。
ことだった。
ある日の、放課後。
わたしが。
何を、するでも、なく。
図書室で。
ぼーっと。
本を、読んで、いたら。
……たまたま。
不破と、日下部が。
隣の、席に。
やってきた。
わたしが。
呼んだ、わけでも。
仕組んだ、わけでも。
ない。
……ただ。
偶然。
「よ、日下部。ここ、いいか?」
「ええ、どうぞ」
二人は。
何やら。
楽しそうに。
話し始めた。
……わたしは。
本の、陰から。
そっと。
それを。
見て、いた。
何の。
工作も、なく。
何の。
力みも、なく。
……ただ。
そこに、ある。
自然な。
二人の。
空気を。
◇
……ああ。
いい、な。
と。
思った。
作った、ものじゃ、ない。
仕組んだ、ものじゃ、ない。
ただ。
そこに、ある。
本物の。
何気ない。
やりとり。
……こういうのが。
本当は。
一番。
尊いのかも。
しれない。
わたしは。
ずっと。
「作ろう」と。
して、いた。
でも。
一番、尊いものは。
……作れない。
ただ。
待って。
見つける、ものなのかも。
……なんて。
ちょっとだけ。
わかった、ような。
気が、した。
◇
……でも。
まだ。
このときは。
それが。
「ゴールへの、道」だ、なんて。
思って、いなかった。
わたしは。
ただ。
肩の、力を、抜いて。
のんびりと。
好きなものを。
好きなように。
眺めて。
……少しずつ。
少しずつ。
本当の。
「満足」に。
近づいて、いた。
それに、気づかない、まま。
(第11話 了)
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【 湊ミライの ループ攻略メモ 】
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一、 これは わたしの願望が見せる世界
二、 心底"満足"すれば抜けられる
(満足=不破×日下部の尊さを見届けること)
三、 思惑を勝手に見抜かれたら即リセット
四、 自分から明かして引き入れた味方はセーフ
五、 見抜かれても 相手が"同好の士"ならセーフ
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◆ 心境の変化
・「人の恋愛をおもちゃに?」問題 → 自己弁護 完了。
= 誰も傷つけず、こっそり見てるだけ。無害なオタク。
= 恥じる必要はない。尊いものは尊い。開き直り。
・攻略も最適化も 放棄。ただ のんびり過ごす。
▼ 気づいていないこと
・力を抜いた途端、盤面が 自然に流れ始めた。
・作った尊さより、偶然の尊さのほうが 尊い……かも。
・それが "満足"=脱出への道だと、まだ知らない。
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