第10話 空回り
何度目かの。
リセットを、経て。
わたしは。
焦って、いた。
もう。
何周。
して、いるんだろう。
データは。
山ほど。
溜まった。
ネルダー・ミード法で。
ダメな、手は。
ほとんど。
潰した。
なのに。
ゴールは。
一向に。
見えない。
……おかしい。
理論上。
とっくに。
最適解に。
たどり着いて、いる、はず、なのに。
◇
だから。
わたしは。
今回。
焦りの、あまり。
……力んで、いた。
全部。
いっぺんに。
やろうと、した。
不破と、日下部を、班に。
日下部の、告白を、かわしつつ。
不破の、東海林への、未練を、逸らして。
東海林の、機嫌も、とって。
女子の、目も、避けて。
……欲張ると、崩れる。
わかって、いたのに。
焦りが。
わたしから。
冷静さを。
奪って、いた。
◇
その日。
わたしは。
強引に。
不破と、日下部を。
空き教室に。
呼び出した。
適当な、口実を、つけて。
二人きりに、して。
わたしは。
廊下から。
覗く。
……計画。
でも。
そこに。
予定外の、人物が。
次々と。
現れた。
まず。
日下部が。
わたしを、見つけて。
「あ、湊さん。……この前の、話の、続き――」
(告白の、続きを、しようとする)
慌てる、わたし。
そこに。
東海林が。
やってきて。
「……森本は?」
(森本を、探して、 うろつく)
さらに。
その、東海林を、見つけた。
不破が。
「……し、四季!? なんで、ここに」
(未練で、動揺する)
……もう。
めちゃくちゃ、だった。
◇
わたしは。
パニックに、なった。
日下部を。
かわしながら。
東海林を。
隠しながら。
不破の、動揺を。
なんとか、しようと。
あたふた。
あたふた。
……その、姿は。
傍から、見たら。
どう、見えたか。
「……ねえ」
その、とき。
冷たい、声が。
した。
クラスの、女子の、一人が。
腕を、組んで。
わたしを。
じっと。
見て、いた。
「湊さん。あなた。……さっきから。何、やってるの?」
……。
「不破くんと、日下部くんを、二人きりに、して。……こそこそ、覗いて。……日下部くんの、告白は、はぐらかして。……なんか、糸を、引くみたいに。……みんなを、動かして」
……やめて。
「あなた」女子は。
眉を、ひそめた。「……人の、恋愛。……おもちゃに、して。……楽しんでる、の?」
――ぐさり。
◇
見抜かれた。
味方でも、ない。
同好の士でも、ない。
ただの、クラスメイトに。
わたしの。
一番、醜い、部分を。
言い当てられた。
――その、瞬間。
世界が。
歪んだ。
いつもの。
リセット。
でも。
今回は。
なぜか。
その、女子の、言葉が。
消える、間際まで。
耳に。
こびりついて、離れなかった。
……人の、恋愛。
おもちゃに、して。
楽しんでるの?
……。
◇
――湊ー。
――おい、寝てんのか?
三学期の、頭。
森本の、声。
いつもの。
スタート地点。
……戻って、きた。
また。
最初から。
でも。
今回は。
わたしは。
すぐには。
起き上がれなかった。
机に。
突っ伏した、まま。
ぼんやり、と。
さっきの、言葉を。
思い出して、いた。
◇
「……なあ、湊? どうした。……具合でも、悪いのか?」
森本が。
珍しく。
心配そうに。
声を、かけて、きた。
「……森本」
「おう」
「……わたしって」わたしは、机に、突っ伏した、まま、言った。「……最低な、人間なのかな」
「……は?」
「人の、恋愛を。おもちゃに、して。……楽しんでる。……ひどい、やつ、かな」
……。
森本は。
しばらく。
黙って、いた。
それから。
頭を、掻いて。
言った。
「……なんだ、いきなり。……らしくないな」
◇
「わたし」わたしは、続けた。「ずっと。……みんなを、駒だと、思って、動かして。……尊いだの、なんだの、言って。……本当は。……ただの。……迷惑な、やつなのかも」
……。
言葉に、したら。
なんだか。
本当に。
そんな、気が、してきた。
何度、繰り返しても。
うまく、いかない。
空回り、ばかり。
……もしかしたら。
わたしは。
やっちゃ、いけないことを。
して、いるん、じゃ、ないの。
だから。
いつまで、経っても。
ここから。
出られないん、じゃ。
◇
森本は。
ふう、と。
息を、ついて。
わたしの、隣の、席に。
どっかり、座った。
「……なあ、湊」
「なに」
「お前さ。……俺の、中二病ノート。握ってる、だろ」
「……握ってるわよ」
「あれ。……本当は。……めちゃくちゃ、嫌なんだ。……バラされたら。……俺、死ぬ」
「……知ってる」
「でも」森本は。
言った。「……お前が、あれで、俺を、脅して。……くだらないことに、俺を、付き合わせてる、とき。……なんか。……お前、すげえ、楽しそう、なんだよ」
……。
「不破が、どうとか。日下部が、どうとか。……俺には、さっぱり、わからん。……趣味も、悪いと、思う」森本は。
頭を、掻いた。「でも。……あんなに、目、輝かせて。……なんか、必死で。……バカみたいに、楽しそうな、やつを。……俺は。……最低とは。……思わ、ねえよ」
◇
……。
わたしは。
顔を、上げた。
森本は。
気まずそうに。
そっぽを、向いて、いた。
「……ま、なんつーか」森本は、ぼそぼそ、言った。「人に、迷惑、かけない、範囲で。……好きなこと、やってる、ぶんには。……いいんじゃ、ねえの。知らんけど」
……。
……この、男。
中二病の、くせに。
時々。
……こういう、ことを、言う。
「……森本」
「あん?」
「……ありがと」
「……気持ち悪いな。……らしくない」
……ふふ。
でも。
ちょっとだけ。
心が。
軽く、なった。
◇
その、夜。
わたしは。
一人。
考えた。
……何が。
いけないんだろう。
ネルダー・ミード法。
完璧な、はずの、戦略。
一番、ダメな、手を、捨てて。
いい、手に、寄せる。
なのに。
なぜか。
同じ、ところを。
ぐるぐる。
回って、いる。
……まるで。
浅い、谷の、底で。
足踏み、して、いるみたい。
そこが、一番、低い、と、思って。
でも。
本当の、一番、深い、谷は。
……もっと。
別の。
ぜんぜん、違う、方向に。
あるん、じゃ、ないの。
……ふと。
五百旗頭さんの、言葉を。
思い出した。
――「一番、ダメな、やつを、捨てて。いい、方へ、寄せる」。
……そう。
それは。
「いま、見えている、範囲で」の、話。
もし。
わたしが。
最初から。
見る、方向を。
間違えて、いたら?
どんなに、最適化しても。
本当の、正解には。
たどり着け、ない。
……わたしは。
何か。
根本的なところで。
間違えて、いるのかも、しれない。
◇
でも。
その、「間違い」が。
何なのか。
まだ。
わたしには。
わからなかった。
わかったのは。
ただ、一つ。
――もう。
力ずくで、攻略するのは。
疲れた、ってこと。
……少し。
休もう。
次の、ループは。
何も。
考えず。
ただ。
ぼーっと。
過ごそう。
攻略も。
最適化も。
ぜんぶ。
放り出して。
……どうせ。
抜けられないなら。
せめて。
のんびり。
……そう。
思った。
それが。
まさか。
正解への。
第一歩だとは。
このときは。
まだ。
思いも、しないで。
(第10話 了 / 第4ループ・完)
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【 湊ミライの ループ攻略メモ 】
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一、 これは わたしの願望が見せる世界
二、 心底"満足"すれば抜けられる
(満足=不破×日下部の尊さを見届けること)
三、 思惑を勝手に見抜かれたら即リセット
四、 自分から明かして引き入れた味方はセーフ
五、 見抜かれても 相手が"同好の士"ならセーフ
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▼ 今回 突きつけられたこと
・焦って欲張ると 全部 崩れる(力み=最大の敵)。
・最適化しても ゴールに近づかない。
→ もしかして "見ている方向" が 間違っている?
・力ずくの攻略に 疲れた。
◆ 次の方針
・何も考えず、ただ のんびり過ごす。
(攻略も 最適化も ぜんぶ 放り出す)
……それが 正解への第一歩とは、まだ知らない。
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