三十四話 新しい日常を前に。
結婚式の日取りを決めた。
それは、ルルくんの誕生日。
といってもヴィルヘルムとして産まれた日じゃない。
公爵家では母の死後祝う事もなかったし、本人にとってはつらい事を思い出すから忘れたいんだって。
「あの日の私は母と共に死にました。だから、今の私の産まれた日はあなたと出会った日。そのままでいい」
そういった彼の想いを大事にして、これまで通り彼が家に来た日を誕生日として、彼の結婚をその日に決定した。
これまで通りルルくんは私の屋敷に住んでいる。
婚前という事で同じ部屋にはいないが、いずれ来るときの為に両親の部屋を私たちに合わせてリフォームしたりした。
といっても、ルルくんが私好みの家具をジャストな配置でしてくれて、私の仕事は何もなかったけど。
使用人たちもルルくんをやっと婿として扱えることに喜びを抱いてるようで、いつも以上の精を出して働いている。
別邸に戻った両親も、ニコニコとしている。
職場での環境も、少し変わって来た。
皆私を祝福してくれているようで、いつもより笑顔が増えている。
だが、妙な人も増えた。
ルルくんの力を独占するために私に媚びを売るような人だ。
まあそういう人は『三つ葉』を含む親切な人が追い払ってくれるから安心なんだけど。
月日は流れ、結婚式当日。
私は明日着るウェディングドレスを前に感慨にふけっていた。
「結婚か……」
前世でも考えたことなかったので想像もつかない。
まあ、やることはやるだろうが、きっとこの生活は変わらないのだろう。
この愛おしい、私の、ドロシー・テレーシアとしての生活が。
救いようのない悪役になって。
必死に周りに尽くして。
そうして自分を想ってくれる人に出会えた。
そして私も、彼を好きになれた。
本当だったら不幸と孤独の中で最期を迎えるはずだった男性を。
彼を救えたことが、本当に誇らしい。
(明日、一生あなたを守るって誓わせてね。ルルくん)




