二十五話 我が家に帰る。
「なんか、さっきの人変な子だったね」
「……もうやめましょう。アイツを思い出すのは。食事がまずくなります」
レストランで案内されながら、ルルくんはため息交じりに応える。
王都でも有名なレストランの料理はどれも美味しく、うちの領地では味わえない味だった。
しかしあのシャドウって人、『三つ葉』にご執心だったけどなんなんだろう?
まあトーカたちは原作でも男女問わず人気が高くてファンがいたし、謎の自信をもって彼女たちの仲間面する人もいるだろうな。
特に自己顕示欲の強い冒険者は。
「ドロシー様、こちらの木苺のソースが掛かったチーズケーキ、いかがです?」
「え? いいの?」
「先程とても美味しそうに食べられていましたし……甘すぎるものは私には合わないので」
そういってルルくんは私の側にスイーツの乗った皿を向ける。
私は「ありがとね」と言ってケーキを頂く。
……うん。本当に美味しい。
かくして、食事を堪能した私たちは王都を出て転移魔法で領地に戻った。
本当は王都のギルドも見ていきたかったけど、ポワソンが嫌がるし、例の冒険者にまた会うのも、なあ。
私は一度集会所まで戻り、不在の間に起きたことを確認する。
そんな中、新たに冒険者グループが入って来た。
「女将さん、ただいま戻りました」
「トーカさん、おかえりなさい」
入って来たのは『三つ葉』の三人だ。
最近発生したワイルドウルフの討伐をしたようで、外に置いた残骸をスタッフに確認に向かわせた。
そこで、トーカの顔を見て私は思い出す。
「そういえばトーカさん、以前、盗まれたものがあるって言ってましたよね?」
「ええ……父の形見の、刀の鍔です」
私はいやな予感がした。
トーカに対してやけに親し気に語っていたシャドウ。
そんな彼が渡した、飾りのついた円形の金属片。
もしこれが彼女の父の形見だったら、シャドウは昔から付き纏っているストーカーの可能性がある。
事実を明らかにするため、私はポケットに入れたそれを彼女の前に出す。
「これって……違うかな?」
私が提出したものを見た瞬間、クールなトーカの表情が崩れ、金属片を両手で包んだ。
「……これは! 間違いありません! 父上の愛刀の鍔です……! 今まで厳しかった父上が、最期に私を認めて贈ってくれた、大切なもの……」
ハラハラと涙を流し、父の形見に縋る。
ずっと探していた大切なものを見つけたことで、緊張の糸が解けたのだろう。
エリチカはその肩を支え、本人に代わってブリュレが尋ねた。
「女将さんっ。これって、どこで見つけたの?」
「王都で、シャドウって冒険者に渡されたんです。彼はトーカさんたちの事を知ってて、それで『今度会いに行く』って言っていました」
「はあ? なにそれ? そんな名前のヤツ、ブリュレたち知らないし。トーカもそうだよね?」
トーカは涙を拭い長い髪を揺らしながらコクリ、と頷く。
やっぱり。悪質なストーカーか……
今のトーカの目には怒りが籠っている。
原作のドロデスに向けていたものと同じ、冷たい刃のような鋭い目だ。
ギルマスとして、彼に文句言った方がいいな。
盗んだものを返して貰ってはいるけど、王都の冒険者がこちらの冒険者に迷惑行為をしていたのだ。
ポワソン相手だって容赦しないんだから。
「女将さん、どうか、そのシャドウに会わせてください……彼に問いたださないといけないことが、沢山ある」
「勿論です。ただいま――」
「ドロシー様、今、よろしいでしょうか?」
私がトーカたちに言おうとしたところで、事務員の男性が声をかけてきた。
顔色を見ると急用のようだ。
その手には転移魔法で送られた速達便があった。
「どうしたの?」
「王都のギルドから、連絡がありまして」
彼は意を決して言う。
「王都のシャドウという冒険者が、『三つ葉』の方々と面会を希望している……とのことでして」




