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十五話 ルルくんの過去。

帰った私は食事する気にもならず、まずはルルくんの部屋に向かった。


「――ルルくんっ」


私は目を見開いた。

ルルくんが、起きていた。

ベッドから上半身をあげて、頭が痛むのか額に手を当てていた。

私の声に気づいたのか、ゆっくりと首をこちらに向ける。

赤い双眸が私を見つめていた。


「ドロシー、様」

「ルルくん、起きたんだね。大丈夫、痛くない?」

「……少し体を動かしたら、目が眩んだだけです。もう、平気です」


そう言って微笑む彼の顔は、普段のルルくんだった。

私はほっと胸を撫で下ろす。

が、次の瞬間に疑問が湧いてきた。

私はゆっくりと彼に近づく、そして近くにあった椅子に腰かけ、ルルくんに向かい合う。


「ねえ、ルルくん。お話、していい?」

「……はい」

「ルルくんの事、聞いていいかな?」


出会った頃はトラウマを刺激しないように聞けなかった。

でも、今、聞かなくてはならない。

……どうして私の為にあんなことをしたのか。

私は彼に、受付嬢から聞いたことを話した。

ルルくんが秘かに私の両親に会って、公爵家の証である血華を見せたこと。

そして、私の婚約者だと名乗ったこと。

私の声を聞くと、ルルくんは意を決したように真剣な眼差しを向けた。

ルルくんはぺこりと頭を下げた。


「まずは、謝らせてください。勝手にあなたの婚約者だと名乗ったことを」

「どうして……そんなことを?」


ルルくんは私の問いに、ベッドから足を出し、腰かける体制になって答えた。


「ドロシー様を、他の男に渡したくなかったからです」


至極真剣なその言葉は、まるで縋る様だった。

その視線だけで彼の想いが真剣なものだとわかる。


「だから……大奥様と大旦那様にあのようなことをしたのです。己の正体を明かして、お二人にドロシー様には相手がいると思わせたくて……あなたに直接言う機会を逃してしまったことも、謝ります。成人した時に、私の口から求婚したくて」


そして彼は、話してくれた。

自分の過去を。

彼は公爵家の血を引いて生まれた。

だが、跡目争いで負け、閉じ込められて当主である人間に虐げられていた。

命からがら抜け出し、荷馬車に乗ってテレーシア領まで逃げ延びた。


「何も考えずに逃げて逃げて、行き倒れ……そんな私を救ってくれたのが……ドロシー様。あなたです」


その後の彼は、私の知っての通りだ。

ルルくんは私が思っている以上に、つらい思いをして生きて来たのだろう。


「その家の人たちは、どうなったの? ルルくんの正体がバレたら追いかけてきたりしない?」

「……魔術を極めていたのは、その者たちに復讐するためでした。ですが、私が出奔してすぐに彼らは破滅し、遠い存在となりました」

「そう……自業自得だね」

「ええ。最初は私も、驚きましたよ」


彼はふ、と皮肉っぽく笑った。


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