十二話 ルルくんの好きな人。
そろそろ終業時間が近いので、締め作業に入る。
ルルくんに好きな人がいる。
それを聞いて、私は手を動かしながら考える。
(ルルくんだったら引く手あまただろうけど……誰なんだろう)
一緒にクエストにいった女性冒険者さんのうちの誰かかな?
強く逞しいイケイケな戦士タイプなのかな、柔和で包容力に溢れた聖女様みたいな人かな。
もしかして受付嬢の子? それともうちのメイドかな?
いや……女の人じゃない可能性もあるよな。
(もし、私だったらどうしよう)
そう考えたら、手が止まってしまった。
あくまで可能性の一つだけど。
ルルくんが誰を好きでも、応援するつもりだ。
だって彼は私にとって大事な家族なんだから。
でももし、彼が私に執着してしまったら……私はどうしていいのかわからない。
(生まれたてのひよこが、初めて見たものをお母さんと思ってついていくのと一緒だ。困った時に救われたからって、その恩を、恋心と勘違いしてるのかも)
よくライトノベルで不幸な身の上の人物を救ったヒーローに、可哀そうなヒロインが恋をするというのがある。
もし本当にルルくんが私を好きだとしたら、どうすればいいんだろう。
どう上手く断れば、元の家族のままの関係を保てるんだろう。
(まあ、あくまで仮なんだけどね)
そうして、答えの分からない問いをぶん投げる。
前世でも恋愛経験なかったからね。あはは。
その後はただ仕事を済ませていく。
終業時間が迫る中、一人の女性が扉を開けた。
トーカだった。
普段冷静で表情を崩さないトーカは、息を荒げ、汗を流していた。
彼女の様子を見てただ事ではないと思った私はトーカに駆け寄った。
「トーカさん、どうしたんですか!?」
「女将さん! 大変なことがあった!」
トーカは私の両肩をがっと掴んだ。
確か彼女たち『三つ葉』はゴーマンとルルくんのパーティーと合同でクエストを受けていたはずだ。
『三つ葉』をいやらしい目で見ているゴーマンがいるが、ルルくんがいるので安心して送った。
そのはずだったのに。
そしてトーカは、とんでもない事を言うのだ。
「ルルが……ゴーマンに殴られたんだ!」




