第二十五話「友人たちに相談しました」
翌週、ヴェルナー侯爵夫人のお茶会に呼ばれた。
いつもの六人の令嬢に加えて、マイヤー男爵令嬢も来ていた。最近のお茶会にマイヤー令嬢が顔を出すようになったのは、ヴェルナー侯爵夫人が誘うようになったからだ。エリーゼがお茶会の常連になってから半年、もう緊張はしない。
「エリーゼ様、お顔の色がよくありませんよ」とヴェルナー侯爵夫人が言った。
エリーゼは少し迷った。話すべきか、話さないべきか。三秒考えた。半年前なら絶対に話さなかった。観察者として記録に留めただろう。しかし今、目の前に座っている人たちは観察対象ではなく、相談相手になっていた。いつの間にか。
「……殿下から、婚約の打診をいただきました」
お茶会が一瞬、静まった。
次の瞬間、令嬢たちが沸いた。
「やっぱり!」とマイヤー令嬢が叫んだ。
「これで決まりましたわね」とヴェルナー侯爵夫人が満足そうに言った。
「決まった、というほど話は進んでいません」とエリーゼは言った。「私が答えを出していないので」
「迷われているの?」とシュタインフェルト令嬢が身を乗り出した。栗色の髪が揺れた。半年前、お茶会で一番遠慮なく話しかけてきた令嬢だ。今もそれは変わっていない。
「迷っています」
「なぜ? あんなに殿下と仲良しなのに」
「……観察者として、自分のことがうまく見えないので」
テーブルが少し静かになった。
シュタインフェルト令嬢が紅茶のカップを置いた。
「エリーゼ様って、いつも他の人のことばっかり見ていますものね」と令嬢は言った。少し怒ったような口調だった。「お茶会でも、私たちのことすごく見ているくせに、自分のことになると急に見えなくなるの、本当にもったいないですわ」
「もったいない、ですか」
「だってエリーゼ様、すごく優しいんですもの。私たちみんな、エリーゼ様がそういう人だってわかっているのに、ご本人だけがわかっていないんです」
エリーゼはしばらくシュタインフェルト令嬢を見た。三年間、誰にもそんなことを言われたことがなかった。
ヴェルナー侯爵夫人が、紅茶のカップを置いた。
「エリーゼ様」
「はい」
「あなたはずっと、誰かを観察していました。三年間、壁際で人のことを見ていらしたのでしょう」
「はい」
「それは素晴らしいことです。でも今は、観察するときではありません」と夫人は言った。「あなたが選びなさい」
「選ぶ……」
「観察者は記録するだけ。選ぶ人間は、記録ではなく、決断するのです」
エリーゼはしばらく夫人を見た。
「……三年前、夫人が令嬢方に高圧的だった理由が、少しわかった気がします」
「あら、何かしら」
「決断する人は、強い言葉を使うのですね」
夫人が笑った。テーブルの令嬢たちも笑った。
「エリーゼ様も、強い言葉が使えますわよ」と夫人は言った。「使うべきときに」
エリーゼは紅茶を一口飲んだ。
使うべきときに、強い言葉を使う。観察者の語彙にはなかった言葉だった。これから覚えていく必要がある。覚えるための時間は、たぶんもう、それほど残されていない。




