狂った人格
「私に辛い役をさせるとはね・・・」
父はそう言って振り下ろした剣を持ち上げた。アンナは兄の制止を振り切り走り出した。
「・・・アンナ濡れるわよ」
「馬鹿な事やってないで!!逃げましょ!!」
「アンナ、逃げてもすぐ追手が来るわ」
「追っ手なんて私がやっつけますよ!!」
「子供達も居るの・・・お金の事もあるわ」
母は子供達をシャノンに任せると私の元へとやってきた。私はそっと顔を上げると明らかに泣いた顔をして私を叩いた。
「貴方だけの体じゃないのよ!」
「そうよ!それが何?私が死ななきゃ、あの子達が危険な目に合うのよ!」
「あ、あなたは・・・?」
「もし、私が生きて戻れば、王の面子は丸潰れ。反逆者を生かしたとして後ろ指を指されていくことになるのよ?」
「に・・・ニーナ?」
母は呆気に取られていたが、私の体は大声を上げながら私を探していた。
「何やってんのよ!!早く戻りなさいよ!!」
私は気が付くと何もない所に居た。
ここは?何もない?
周りを見渡しても何もなく声も聞こえなかった。
うっすらと見えてきたのは、私に母が泣きついている光景だった。私はどこか怒りを露わにして何かを探していた。
・・・あれは、ニーナさん?もしかして、戻れたの?
父は剣を落とし膝をついて驚いた顔をして動かなかった。周りも同じように動けなくなっているのが見えた。
ニーナは大声をあげているように見えた。
これで・・・これでよかったのよね・・・私、最後にニーナさんに変われたわ・・・
そう思った瞬間に私は誰かに胸倉を掴まれた。
「今更逃げられると思うなよ!」
ドスの聞いたニーナの声だった。そして一瞬で引き戻されてしまった。
「え?なんで・・・」
母はすぐに気が付いた。
「尊さん?」
「せっかく変われたのに!」
取り乱し汚れるのを気にせず私はその場で地面を叩き、頭を抱えた。
「ああああああ」
狂ったように声を上げ空を見上げるとアンナは飛びついた。
「ニーナ様、私は初めから分かっていましたよ」
父はこちらを向くと剣を捨ててゆっくりと歩いてきた。
「ニーナ様が必死に生きてくれていた事、戻ろうともがいてくれていた事も、でもあれは本当のニーナ様じゃないんです。本物はあなたなんです!!」
「じゃあ、なんだったのよ・・・」
私は空を見上げながらか細く呟いた。
「ニーナ様はやっぱり天才です。人格を作っちゃうんだから」
私は意味が分からなくなって力が抜けていった。
「ニーナ様・・・今だけは尊さんとお呼びしますね。尊さんは本物のニーナ様なんですよ」
「違うわ!!私の中に居たもの!!」
私は慌てて否定してアンナを振りほどいた。
「尊さん、冷静になってください。昔言ってた通りニーナ様は浄化されたんです。居る訳ないんです」
「じゃあ・・・今まで・・・私は・・・何を?」
私は余計に混乱してどうすればいいのか分からなくなっていた。そうしているとエリック達の痺れが解けた。そしてエリックは剣を拾うと何も言わずに剣を向けた。
「・・・陛下、今私がお話をしているんです。お邪魔しないで頂きたいです」
アンナは見せたことのない形相でエリックを睨みつけ立ち上がった。




