癒えない傷
一息入れると私は自分の顔を鏡で見た。そこに映るのは自分の顔と憎悪に満ちた人達の顔だった。
私は冷静を装いながらアンナに聞いた。
「私の顔の周りに人の顔が沢山映ってない?」
「な、なんですか?怪談ですか!?お化けですか!?」
「ユミナにも見えない?」
「はい、私にも映っているのはニーナ様とアンナ様だけです」
「・・・そう」
私は鏡に映った人達を見ようとした。そこに映っていたのは知らない兵士達とテラゴニアの魔法兵士達だった。
どうして知らない顔まで・・・もしかして、死体を見たからかしら。
どんどん青ざめていく顔を見て侍女2人はすぐに私を鏡から引きはがした。
私は息を切らし冷や汗をかいていた。それからユミナは鏡に布を被せ、私に見せないようにした。
それからは2人の侍女は私を腫物のように扱うようになっていった。私の様子に少しでも異変があれば動き、過去に異変が起きたような所や物を見せないようにと動いていた。私は逆に2人の心配をするようになって笑顔が減ってきていた。その様子にエリックは気が付き、私の様子を見に来た。
「ニーナ、最近何かあったかい?」
「え、ええ、まだ戦争の時の事を引き摺っちゃって・・・」
「何かやりたいこととかないかな?」
「どうしたの?急に」
「ニーナには気分転換が必要なのかなって」
エリックはそう言って私の肩を抱くと椅子に移動して座らせた。その様子を見て侍女2人が外へ移動しようとしたが、エリックはそれを止めた。
「少し君達にも話を聞きたいんだ」
アンナは不思議そうに首を傾げ、ユミナは普段通りにしていた。
「ニーナの様子を聞かせてくれないか?」
「エリック?」
「君が嘘をつかない事は知っているけど、どれだけ酷い状態なのかは話してくれないと思ってね」
アンナは私を申し訳なさそうに見ると今までの事を洗い浚い話していった。
「やっぱり無理をしていたんだね。それを聞いていればアルカニアの元にも送らなかったのに」
「無理はしてないわ!少し・・・少し思い出して苦しくなるだけで・・・」
「それを皆、無理をしていると言うんだ」
私のおでこをコツっと叩くと悔しそうに抱き寄せた。
「僕が止められなかったのが悪かったんだ・・・」
私は心が締め付けられるような思いをしていた。そしてアンナはすぐに私に飛びついた。
「ニーナ様心配ありませんよ!私が付いてますから!」
私はアンナの手を握ると笑顔でアンナを撫でて「大丈夫よ」と呟いた。その言葉にアンナは心配そうに離れていった。
「すまない。いつまでもこんなことを言ってしまって」
「エリックもお父様を亡くしたのよ?それなのに国の為に働いてるもの・・・凄いわ」
「僕が慰めに来たのに慰められるとは思わなかった」
エリックは少し引きつった笑顔を見せた。




