ヤボヒの思考
「さて、君はなぜ逃げたのか教えてくれないか?」
「ヒヒヒ、兵がいきなり大声をあげて走ってくるのです。怖くて逃げるのはよくある話ではありませんかな?」
「しかし、敵意は無かったと思うが?」
「分かりませんぞ?いきなり、剣を抜かれれば此方は為す術なく切られることになりますからな」
「そうか・・・こちらにも不手際があったようだね」
「分かってもらえてなによりです」
ヤボヒは不気味に笑い、王子はその様子に警戒を強めた。そこで私は術式について聞くことにした。
「ヤボヒ、あなたの部屋からこれを見つけたの・・・これ、呪いよね?」
「ヒヒヒ、すぐに理解なされるのは流石と言えますな。ニーナ様」
「誰に使うつもりだったの?」
「それはこれから考えるつもりでしたな」
「・・・使わない選択肢はありますか?」
「折角作ったのですから使いたいですな・・・隣国の王様など相手に」
「やめなさい。国の対立を煽ってどうするの!」
「向こうの王が倒れれば襲われることはありませんぞ?それに痕跡は余程の事がない限り残りませんしな」
私は少しずつヤボヒを睨み始めた。
「呪いというのはすぐ気づかれるでしょう・・・この国の者がやったと気づかれれば外交問題です」
「バレればの話ですな。どこからの呪いか分からぬのにバレる要素はありませんぞ?」
「気づかれない自信は凄いですが・・・こんなものを使えば取り返しのつかない事になるのですよ?」
「平和のために私が使うのです。問題は・・・」
王子は怒声を上げた。
「大ありだ!!」
「なんですかな?」
「事を大きくせず話し合いで決めようという時にこんな事をされては疑われるのは必至だ」
「話し合い?出来るとお思いですかな?」
「やって見せるさ」
「やめた方がよろしいかと思いますが?」
「なぜだ?」
「もし、王子が行けば良くてその場で拘束されて人質にされるだけですな。悪くて処刑になるかと」
「・・・そうなるかもしれない。だけど、戦争はしたくないんだ!」
「殿下失礼ですが、綺麗事だけでは国は動きませんぞ?」
「それを何とかするのが僕の役目だ!」
「失礼を承知で言いますが・・・甘すぎますな」
それは私も思う。凄く甘く感じるわ。
「もし、捕虜になれば属国になるでしょうな・・・ツラバスの」
「捕まると決まったわけでは・・・」
「処刑されれば此方の陛下が黙ってはおりませんぞ?」
「父上なら・・・そうなるね」
「では、そんな状況で相手国を信じて交渉に行く意味を教えていただけますかな?できれば信用できる根拠もお教え願えると嬉しいのですが・・・」
私はその言葉を聞いてヤボヒを止めた。
「そのくらいにしなさい」
「おっと、これは失礼を致しましたぞ。ヒヒヒ」
「私も思う所はありますが・・・この術式は使わないでください」
「勿体ないですな・・・折角作ったというのに」
「この術式には媒体が必要なはずです・・・その媒体は何ですか?」
さっきまで不気味な笑みを浮かべていたヤボヒから笑みが消えた。
「呪いたい相手の何か・・・もしくは、恨みなどの沢山持った人間の血ですな」
私は怒りを露わにしながらヤボヒを睨みつけ、殴り掛かりそうになっていた。




