最後の躊躇い
また日が進み披露会当日になった。私は赤と黒のドレスを身に着けて王子と一緒に居た。
「す、すごい緊張の仕方だね」
王子は苦笑いをして私の顔を覗いた。
「も、ももも、問題ありませんわ!!」
私はすごい震えながらその時を待っていた。
エリック王子が若干引いてるわね・・・なんとか落ち着かないと
「こ、これからですのよね」
「落ち着いてニーナさん」
私は一呼吸置いた。アンナは心配そうに私の手を握った。
「ニーナ様きっと大丈夫ですよ!」
「え、ええ、そ、そうね」
私の引き攣った笑顔を見て周りは苦笑いをしていた。
王子は「そろそろだね」と言って私の手を取った。私はそのまま引き寄せられ抱きしめられた。
「君なら問題ないよ。尊さんだったとしても今の君を好きになったんだ。優しくて楽しい君だから好きでいられたんだ」
私は緊張とは違う震えが起きた。
よくよく考えたら中身男同士の婚約なのよね・・・ボーイズラブになるのかしら
要らないことを考えだしたら不思議と緊張は無くなり変な気持ちになった。
移動し始めると案外落ち着いた様子で動けていた。むしろ王子の方が緊張しているのか握る手が強くなっていた。
「緊張しているのは私だけじゃないのですね」
「え、そんなことはないよ」
「ご無理をなさらないでください」
「・・・そうだね。緊張してる、とてもね」
「では、男同士の婚約といきますか!」
この言葉と口調に王子は困惑して次第に笑いに変わっていった。
「そうかそういうことになるんだね」
「やっぱりやめておきますか?」
「いや、今ので気が抜けたよ。しかし、男同士か」
王子のツボに入ったようで笑いが止まらない様子だった。
「エリック王子!落ち着きましょ?」
「ああ、すまない、あまりにも可笑しくて」
王子は咳払いをしていつもの表情に戻り私の手を握った。
「これが最後です。本当によろしかったのですか?私の中身は今男なのですよ。今ならまだ間に合いますよ?」
「今更、逃げたくなったのかい?」
「そういう訳ではありませんが・・・私の中身は尊なのですよ?」
王子は笑顔で前を向き私を引きながら歩き始めた。
「じゃあ、行こうか!ニーナさん!」
「分かりました。どこまでもお傍に置いてくださいね」
【エリック王子】
最後の最後まで気にしてたんだね。僕は今の君しか見えてないよ。尊さんだって言われても僕にはニーナにしか見えないんだ。魔法学校では嵐と呼ばれて、社交界ではフォークで刺されても引かずに冷静で居た。盗賊も倒したんだったね。こんなお転婆さんだけど、僕にとっては一人の大事な"女性"なんだ。
まぁ、本人はまだ男性だと思ってるみたいだけどね。




