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遅咲き王子のお隣に  作者: 白澤 五月
第二章 溺愛陛下と仮王妃
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16 花に群がる蜜蜂

幼少期から見慣れたきらびやかな会場では、年頃の紳士淑女が色とりどりの美しい衣装をまとい、艶やかな雰囲気を醸し出していた。以前より豪華さを控えた食事や飲み物が美しい食器に並び、それを手に取りおしゃべりに花を咲かせている。


少しばかり平均年齢が低く、自分たちと同じくらいの結婚適齢期の貴族ばかりであるように思えるがそう変わりはないだろう。


これなら余裕で情報を聞き出せるかも。……なんて思っていたのが悪かったのか。それとも心配しているようなことを言っておきながらさっさと私をおいていったアイザックが悪かったのか。


「……ねぇ、そこの貴方。(わたくし)とあちらでお話でもいかが?」


「いいえ、私と!あちらに美味しいお食事がございましてよ?」


(……こ、これはまずい!)


あれからアイザックと別れてからたったの10分後、私の白い手袋の下は汗でびしょびしょになっていた。どっどっと早鐘を打つ心臓は、どこかしらの美形元王子に甘い言葉で迫られた時と同じように今にも爆発しそうになっている。


それもそのはず、なぜか私は先ほどまでテーブルにいたはずの淑女の方々に囲まれているのだ。私の腕をとり、ぴったりと身体をくっつけるその行動は淑女というよりより良い男を狩る獣のように見える。


と、考えている暇もなく今すぐにでもこの状況をどうにかしないといけない。いつ正体がバレてしまうか分からないのだから。シークレットブーツによって彼女たちより高くなった目線を斜め下にむけると、満足げに微笑えまれる。


(や、やっぱり狙われてるよねコレ……!!)


「えー、えっと。お美しい淑女の方々?私めはただの執事でございます。貴女方様のような可憐な女性には不釣り合いでございますし……もったないお誘いありがとうございます」


声をできる限り低くし、無礼に当たらないような言葉を紡ぎだす。それだけではやや棒読みなセリフが嘘らしく聞こえてしまうだろう、とさらりとかつらの白髪が揺れると同時ににこっと微笑んでみる。これはもちろんうちの美形たちをお手本にしてみた。


断られた恥ずかしさからか顔を仄かに赤らめるのを見ると、複雑な気分になるが彼女たちと時間をつぶす余裕はないのだ。


(これでどうにか逃げられる……かな?)


と、彼女たちの間を会釈しながら通り抜けようとするとガバッと半端ない力で押し戻された。え?と振り替えるとぎらりと鈍く光る肉食動物のような瞳に捕らえられる。


「あ、あの……?」


「そんな……そんな麗しいお姿に加えてこんなにお優しいなんて……なんて紳士なのでしょう!」


目が点になるというのはこのときのためにあるのだろう。まさかの展開だった。無礼者、と罵られるのならば分かるけれどこうなるとは。何事かしら、とわらわらと集まってくる貴族の淑女たちを見ると一つ問題点を発見する。


(この容姿だ……!この男装のせいか!!)


女だとバレない変装に加え、あの面食いのジェームスお墨付きの白髪執事は予想以上に彼女たちには大きな獲物に見えたのだろう。家のための肩書きや位を放り出すほどには。


「ここの男貴族は何もできないボンボンばかりで困り果ててしましたの。それにお父様にここで将来のお相手を探してこいと言われましても、私は恋愛結婚がしたのですわ」


「は、はぁ……」


「ですから、私は貴方が執事でもかまいませんわ。好みでも優しくもない男なんかよりずっと幸せになれそうですもの。どうか私と……」

「貴女何を勝手なことを言ってらっしゃるの!この方は私の婿候補よ!」


大乱戦、それにつきる。猫たちがしゃーっとお互いを警戒して争うようなその姿にどうすればいいかと思考がめぐる。


(えーと……そうだ!)


「お嬢様方、そんな庭に美しく咲き誇るようなその可愛らしいお顔をそのように歪めてはいけません。……どうか私めのために争わないで下さい」


にこりと微笑み、彼女たちに歯が浮くようなセリフでそう呼び掛ける。……んん、我ながら臭いセリフ。でもこれは私が考えたわけじゃないし。何を隠そう、これはチャラチャラお化けのレオ直伝のお言葉である。彼を巡って女性が争っていたときでも、これを彼が言って黙らない女性はいなかったのを思い出したのだ。


これならレオには勝てなくとも、完璧な男装をした私には使ってみたらどうにかこの場を納められるのではないかと思ったのだけれど。


(ぜ、全然反応がない……!!どうしよ……滑った?)


ハラハラと焦る内心、誰か助けてくれないかと周りを見渡すも、アイザックの姿はまったく見当たらない。


(この、嘘つきめ!!今度会ったら毒をもってやるんだから!)


と、内々に毒づいているとぎゅっと誰かに袖を捕まれる。女性の力とは思えないほどの力と荒い鼻息で。


「お、ええ!?お、お嬢様方!?」


「ねぇ、やっぱり貴方お名前は?あちらで二人きりで過ごしましょうよ」

「あら、私のほうが美しくと名声高いのよ!あなたたちは黙っていなさい!」


……荒れた。なおさら荒れた。

レオ直伝の甘いセリフは大事に育てられた彼女たち貴族には少し刺激が強かったようだ。


(んあ~……どうしよ)

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