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遅咲き王子のお隣に  作者: 白澤 五月
第二章 溺愛陛下と仮王妃
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15 変装

だ、だって……ね?ちらりと妬ましいほどの美形を持つ彼の方に視線を動かすとぎゃっと小さく恐怖の声が漏れる。


『綺麗な人ほど怒ると怖い』ということが本当だということ、それだけは私にも分かった。思わず出た悲鳴にアイザックが1つため息をつくと、その整った顔に刻まれている眉間がさらに寄る。30歳手前にそのしわが刻み込まれてしまうのではないかと私は密かに心配しているけれど。……そんなことを言ったら誰のせいだ、とかまた怒られそう。


「もういい、怒っても同じだしな。お前が1回の説明で理解してると思っていた俺が馬鹿だった」


ぐさっと刺さるお言葉を食らうと、やっぱりさっき彼を少しでも可愛いと思ったのは間違いだったとしか思えない。この仮面野郎め。……とはもちろん言わない。宰相としての飛び抜けた才能の持ち主の彼には、私1人の心の声なんて簡単に見透かされてしまいそうだ。


「もう1度馬鹿にでも分かるように噛み砕いて説明してやるから、しっかり聞けよ?」


アイザックが腕を組み直すと、悲しいことに比較的に学力が乏しい私にも分かるように簡単な言葉で丁寧に話し出した。


「今回の作戦はこうだ。まず俺たち2人で地方の貴族たちのパーティー、まぁ裏情報交換所として有名なパーティーに忍び込む。そしてそこで誰がルイスの偽の噂を流しているか、俺たちが変装して"証拠"を掴むんだ」


そうだった。大まかに覚えている作戦ではルイスが不正な行いをするだろうという嘘の情報を流したホラ吹きさんを特定することだった。どう考えたってこんな悪意ある情報流した人だからホラ吹きさん、だなんて可愛いものではないけれど。


「それでこの衣装ですか……。私が執事で、アイザック様が騎士様」


白い手袋に黒い制服……これは国の正式の執事の仕事着だ。目の前の彼は重そうな鎧を着ている。……どちらかというとキラキラピカピカしているイメージのアイザックがそんな男臭い雰囲気をもつ鎧を着ていると違和感しかない。しかし、この変装は、兜を被れば、彼の目立つ長い髪が見えないし、アイザックと知られないためにはぴったりと言うべきだろう。まったくあの嘘笑顔が美しいアイザック様だとは思えない。


「……お前、今俺のこと悪く思ったろ」


「いえ、別に」


うふふ、とわざとらしく笑うと、アイザックは諦めたようにそっぽを向いた。本当に心がよめるのか……と尊敬してしまったのは秘密だ。


「それにしても、私は性別の垣根を越えて執事ですか……。これ、バレないないですかね?」


確かに長年メイドをやってきたこちらとしては、仕事が分かっていて失敗しなさそうだしいい役割なのだけど。しかし、胸元はきつく包帯で巻いて平らに、そして私の金髪を隠すためにつけられた襟足長めの白いカツラを被っているけれど、バレないかとハラハラする。


「いや、大丈夫だろう。なんたって、これはジェームスの見立て通りの衣装だからな。今回の内容を伝えたらあいつ、これはクレアな似合うからって嫌な笑い方しながら渡してきたからな」


……なんか想像できてしまう。ジェームスさんは好みの男の子には目がないから、きっとこの衣装も彼……いや、彼女の好みドンピシャなのだろう。それに、以外とこの姿をした私を見たルイス様とレオさんも似合ってるって驚いていたし。


「……俺も以外とクレアだと分からない、いい変装だと思うぞ。中身こんなでも、言い寄ってくる令嬢の1人や2人いるんじゃないか?」


「はは……。それは、嬉しくないです」


さすがにイケメンもどきになっても心は女の子なのでそれは複雑です、と言うとそうか?とお金稼ぎにでも使おうと思ったのにとでも言いたげにアイザックが肩をすくませた。本当に抜け目がないな、この!


「それで、とりあえずお前は執事としての仕事をしながら、いろんなやつに話を聞くんだ。簡単だろ?」


「簡単だろ?と言われましても、そんな噂流した人なんてすぐに見つかりますかね?……もし私がそんなこと言ったらすぐに王族不敬罪に問われますし、騎士さんたちも紋章の呪いに操られていただけでしたし……誰だかさっぱり検討もつきませんけど……」


いまいち、紋章の呪いについても分かっていないこちらとしては疑問も少しばかり残っている。呪いというどこかファンタジーなモノに変装して証拠集めという地道で現実的なことが混ざるとさらに分からなくなってしまう。すると、アイザックはどこか余裕げに、にやりと笑った。


「……まぁ、そうなるだろうな。普通に考えれば、な」


「……何ですかその含みのある話し方は」


含みがあるからな、とやはり憎たらしげにそう告げると馬車がゆっくりと止まる。もう、パーティー会場に着いたようだ。と言っても正式に招待されたわけではないので人の通らない裏道だけど。アイザックが重たい兜を被ると、こちらも執事らしく身の回りを整える。


「それじゃあ、作戦通り頼んだぞ」


「はい!私も頑張りますからね!!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


……って張り切ったのが今となれば最悪な事態が巻き起こる原因だったのだけど。

投稿が遅くなり、すみません!!

いろいろと忙しく更新が遅れてしまいました。

もちろん、これからもクレアの奮闘は続きますのでよろしくお願いいたします!!

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